シノーポリによるオペラ作品の録音である。個人的にイタリア・オペラを多く指揮している印象があったが、ワーグナー・オペラも録音を行っているとは驚かされたと同時にどこか嬉しい感覚があった。これまで「サロメ」はカラヤン、クレメンス・クラウス、スウィトナーらの演奏を聴いてきたが、ここにシノーポリの「サロメ」が加わることとなる。
・リヒャルト・シュトラウス:楽劇「サロメ」
録音:1990年12月
他のオペラ作品と比べると演奏時間は短く、比較的に聴きやすい印象を受ける「サロメ」。それもあって私としては積極的に聴いているところがある。そういう意味合いでは、シノーポリ&ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団による「サロメ」はすぐに聴くことができたのもそうだが、ドイツのオーケストラによるその色を余すことなく体感することができた演奏だったと言えるだろう。
・サロメ:シェリル・ステューダー(ソプラノ)
・ヘロディアス:レオニー・リザネック(ソプラノ)
・ヘロデ:ホルスト・ヒースターマン(テノール)
・ヨカナーン:ブリン・ターフェル(バリトン)
・ナラボート:クレメンス・ビーバー(テノール)
他
今回の演奏は、躍動感やテンポの緩急が目立つ演奏というわけではなく、非常に分厚く伸びやかに奏でられながら歌い上げられた濃厚な演奏となっている。そのため、有名な「7つのヴェールの踊り」は若干ゴチャゴチャとしているサウンドに寄っている印象を受けなくもないが、非常に重厚感からなるたっぷりとしたスケールを聴くことができるようになっているので、鳥肌が立つポイントはいくつもあった。ダイナミック・レンジの幅広さが何より素晴らしく、弦楽器によるしっかりとした土台からなる圧倒的な演奏は他に類を見ない凄みがあると感じた。
シノーポリによるオペラ録音はまだまだ聴いたことがない分、今回取り上げた「サロメ」は新鮮味を持って聴くことができたのは言うまでもないが、これまでに聴いた何種類かの録音と比べても独特なアプローチからなる演奏だったようにも感じられた。確かシノーポリは他にもリヒャルト・シュトラウス作品をいくつか録音していたので他の演奏も聴きたいと思う。