レスピーギによる作品でいえば、「ローマ三部作」は間違いなく有名であることは間違いない。「シバの女王ベルキス」は現在までに吹奏楽では盛んに演奏されている傾向にある。管弦楽演奏ではそこまで新譜が出てこない。今回は「ベルキス」、「地と精の踊り」、「ローマの松」の計3曲が収録されている。
・レスピーギ:バレエ組曲「シバの女王ベルキス」
録音:2001年5月28,29日
全楽章共通してたっぷりと、やや重心が低いようにも思えるくらいに重厚感を感じることのできる演奏となっている。ソロの際は甘さたっぷりに演奏し、時には溜めることなくそのまま突き進んでいくアプローチもある。金管楽器の音色も豊かなサウンドを奏でており、木管楽器と弦楽器に関しては非常に軽快で透き通るような音色と響きをしている。打楽器の歯切れ良さや深みのある打撃は特に第3楽章「戦いの踊り」で効果的に発揮されている。テンポの緩急における変化が自由自在であるとも言えるだろうか。それもあって壮大なるスケールを感じ取ることのできる場面は随所にあるので当盤としては1曲目に収録されている作品だが、最初から圧倒されることは間違いない。
・地と精の踊り(バラード)
録音:2001年5月28,29日
多少厳格さが加わり、より物語としての風格ともいうべきか、テンポの緩急からなるダイナミクス変化の臨場感をたっぷりと味わうことができるようになっている。これには思わず度肝を抜かされた。バスドラムのロールからなるクレッシェンドや細部まで細かく聴き込むことのできる管楽器群の煌びやかなサウンドなどレスピーギの良さを余すことなく楽しむことができるようになっている。以前取り上げたネシリングによるレスピーギ管弦楽作品集にも収録されていたが、今回の演奏の方が大分インパクトは大きいと考えて良いだろう。
・交響詩「ローマの松」
録音:2001年5月28,29日
全体的にたっぷりとしたやや重めのテンポによって演奏が進められている。特に第2楽章、第3楽章のスケール感は重めのテンポによって形作られている面が多いとも言えるだろう。そのため、オーケストラ全体の透き通るような美しい音色と響きを余すことなくたっぷりと味わうことができ、「ベルキス」と「地と精の踊り(バラード)」を聴いた後だからこそ味わえる2曲の良さを含めた圧巻の終わりを最後に「アッピア街道の松」でオーケストラ全体が一貫性のある演奏となって向かっていくのを確かに聴くことができた。
大植さんのCDはこれまでにあまり聴いてこなかったこともあって、当盤は非常に良い演奏だった。「ベルキス」でいうと飯森さんによる演奏が個人的に長年決定盤として君臨してきた。当盤の演奏に関してはそれに次ぐ名盤だったと言える。聴き終わった今でもまた聴きなくなってしまっているので、また近いうちに聴き直したいところだ。
![](https://ssl-stat.amebame.com/pub/content/9477400408/amebapick/item/picktag_autoAd_301.png)