モンゴメリーが今回使用しているナチュラルホルンは、プラハのフランツ・シュトールのレプリカモデルとなっている。加えてモンゴメリーはナチュラルホルンで数多くの名演を残したアントニー・ハルステッドの高弟であるため解釈も近いと言える。OAE首席ホルン奏者とそのオーケストラによる素晴らしいモーツァルトのホルン協奏曲全集がここに誕生した。
・モーツァルト:ホルン協奏曲第2番
録音:2012年10月25日(ライヴ)
ナチュラルホルンと古楽器による演奏ではあるが、ゴリゴリの筋肉質や強固なサウンドからなる演奏ではない。豊かで美しい音色と響きによって奏でられる演奏となっていることもあって、バランスの取れた引き締まった演奏を楽しむことができるようになっている。また、モンゴメリーの演奏スタイルも自然で鮮明なアプローチからなる演奏を行っているようにも聴こえるため、普段聴く古楽器演奏とは違うスタイルの良い音をたっぷりと味わえるようになっているのは大きい。
・ホルン協奏曲第4番
録音:2012年10月25日(ライヴ)
第3楽章が特に有名であると言っても過言ではない第4番。その力強さと各楽章におけるテンポの緩急に合わせた変化は魅了されるものがある。OAEとの相性も良く、息ぴったりのアプローチとなっているため非常にバランスが取れたダイナミクス変化となっていて聴きやすい。第3楽章のエネルギッシュな若々しさすら感じるエネルギーは聴いていて勇気などを分け与えられているようにも感じられなくはないだろう。
・ホルン協奏曲第3番
録音:2012年10月25日(ライヴ)
第4番を聴いた後にこの第3番が収録されているため、共通点は多く見られたこともあってそれなりに楽しめた演奏である。細部にわたって細かく演奏され尽くされているコンパクトな演奏ではあるが、テンポの緩急によってそれが固すぎる演奏になっていないので、それによる聴きやすさもあるのだろう。
・ホルン協奏曲第1番
録音:2012年10月25日(ライヴ)
今回収録されているホルン協奏曲の中で一番有名なのは間違いなくこのホルン協奏曲第1番だろう。そして、今回その演奏をモンゴメリーによるナチュラルホルンで聴いた時、これまでにはないくらいに引き寄せられるものがあった。芯のある軸がブレることのない濃密な演奏はこれまでに聴いたことがないような明確な演奏であり、透明度の高い美しさに溢れた濃密なホルン協奏曲を楽しむことができるようになっている。今回の全集で一番最後に演奏されている協奏曲は第1番だが、ある意味正解だったとも言えるだろう。
・・断章、ホルン協奏曲変ホ長調、コンサートロンド変ホ長調
録音:2012年10月25日(ライヴ)
ホルン協奏曲全集にはあまり収録されない未完の3曲が収録されているのも良いポイントで、それがライヴで演奏されているため臨場感を確かに感じながらモーツァルトのホルン協奏曲を楽しむことができるようになっている。それぞれの個性を余すことなく演奏で発揮しており、コンパクトでシンプルながら濃厚で幅広く取られた素晴らしい演奏を楽しむことができる。