第1864回「ルガンスキーによるピアノで聴くワーグナー名場面集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日5月22日はリヒャルト・ワーグナーの誕生日です。今年で生誕211年となります。ここでいつも通りオーケストラによる管弦楽作品集やワーグナー・オペラを聴いても良いのですが、たまには普段と違うワーグナーの演奏を取り上げていきます。その演奏とは?ニコライ・ルガンスキーによるピアノによるワーグナーの名場面集です。「ラインの黄金」、「ワルキューレ」、「神々のたそがれ」、「パルジファル」、「トリスタンとイゾルデ」の名場面がピアノ演奏によって楽しむことができるようになっています。まさに全ワグネリアン必見のCDと言えるでしょう。


「ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)」

ワーグナー作曲:
楽劇「ラインの黄金」よりヴァルハラへの神々の入場(ブラッサン&ルガンスキー編)

楽劇「ワルキューレ」より魔の炎の音楽(ブラッサン編)

楽劇「神々の黄昏」より
ブリュンヒルデとジークフリートの愛の二重唱(ルガンスキー編)

ジークフリートのラインの旅(ルガンスキー編)

ジークフリートの葬送行進曲(ルガンスキー編)

ブリュンヒルデの告別の歌(ルガンスキー編)

舞台神聖祝典劇「パルジファル」より場面転換の音楽と終幕(モットル、ルガンスキー、コチシュ編)

楽劇「トリスタンとイゾルデ」よりイゾルデの愛の死(リスト編)



 ルガンスキーは生粋のワグネリアンであり、「ローエングリン」以降のワーグナー・オペラは特に好んでいるらしく、中でも「神々のたそがれ」構想は20年以上かけて今回望んでいる。ワーグナー作品はもちろんピアノ編曲は存在しているが、元々オーケストラ編成も多いため全ての再現とまではいかない部分がある。今回ルガンスキーは編曲を拡大させ、自らの版を手がけてこの名場面集を作り上げている。


・ワーグナー:楽劇「ラインの黄金」よりヴァルハラへの神々の入場

録音:2023年9月

 大いなるスケール感をたっぷりと味わうことのできる世界の幕開けにふさわしい演奏である。Apple Music ClassicalのDolby Atoms/ハイレゾロスレスで聴いているため、ピアノ演奏としては良いのかは不明だが空間オーディオで聴くことができている。終始音に包まれるような空間でピアノによる「ラインの黄金」が演奏された。テンポの緩急もそうだが、繊細なピアノタッチはまさにオーケストラを想定して演奏されているようにも思える。「ワルキューレ」や「神々のたそがれ」で見られるような激しい音楽ではないが、幻想的で息を呑むような美しさを冒頭から聴くことができるのは個人的にもプラスである。


・楽劇「ワルキューレ」より魔の炎の音楽

録音:2023年9月

 「ワルキューレの騎行」ではなく、「魔の炎の音楽」が演奏される。ピアノの音色が煌びやかで輝きに満ち溢れており、普段聴き慣れたパワー型の「ワルキューレ」ではなく細部までこだわり抜かれたダイナミクス変化に基づく、ワグネリアンであるルガンスキーの強いこだわりのあるピアノで楽しむことができる。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることによって、細かいタッチやダイナミクス変化が明確かつ明瞭化されている演奏だ。


・楽劇「神々のたそがれ」よりブリュンヒルデとジークフリートの愛の二重唱

録音:2023年9月

 名シーンがルガンスキーのピアノによって美しい調和的な神秘的かつ幻想的な空間となって演奏が展開されている。テンポの緩急がある状態での演奏となっていることもあってオーケストラにおける金管楽器群の存在感がピアノ演奏だったとしても目を閉じた瞬間に広がるようなものがあり、臨場感をたっぷりとスケールから味わうことができるようになっているのは申し分ない迫力であると言えるだろう。


・楽劇「神々のたそがれ」よりジークフリートのラインの旅

録音:2023年9月

 「ブリュンヒルデとジークフリートの愛の二重唱」からそのまま演奏される生き生きとしたエネルギーに満ち満ちた世界観からなる演奏である。変幻自在かつ繊細なピアノタッチによって演奏されることもあってその分厚いスケールや豪快にも感じるダイナミクスは、「ニーベルングの指環」の最後である「神々のたそがれ」の世界観をそのままピアノに押し込めたようなエネルギー量であるとも言えるだろうか。


・楽劇「神々のたそがれ」よりジークフリートの葬送行進曲

録音:2023年9月

 ワーグナー・オペラの中でも特に個人的にも好きな場面の音楽である。普段聴き慣れた圧倒的な金管楽器による音圧とは違う悲観的にも感じられるアプローチからなる音色が展開されている。それはダイナミクス変化にも多少影響は出ており、やや控えめにも聴こえなくはないインパクトとなっているが、ここで強すぎると全体的なバランスが崩れてしまうようにも思えるので個人的にはこのアプローチが正解であるとも言える。どちらにしても心を掴むような演奏だった新しいパターンの「ジークフリートの葬送行進曲」だったことに変わりはないだろう。


・楽劇「神々のたそがれ」よりブリュンヒルデの告別の歌

録音:2023年9月

 全体をたっぷりと豪快に使い分ける凄まじいピアノによるエネルギーを楽しむことができるようになっている。空間オーディオが良くも悪くも味方となっているため、ピアノ演奏だがその場でオペラ本編を聴いているかのようなダイナミック・レンジの幅広さがある。これには思わず唖然としてしまうかもしれないが、ルガンスキーが20年以上かけて構想した一つの区切りを体感するには充分な演奏であることは間違いない。


・舞台神聖祝典劇「パルジファル」より場面転換の音楽と終幕

録音:2023年9月

 ここまで「ニーベルングの指環」からなる作品の名場面が演奏されたが、ここで「パルジファル」の神秘的かつ神聖なる美しい世界観が展開される。ピアノ曲だと言われても違和感を感じることのないくらいの音色と響きによって作り上げられる極めつくされた美しさであったり、濃厚な演奏は癒しを与えてくれるかのようにどんどん音が広がっていく。一つの幕切れのようにも感じられるかもしれないが、この後に収録されている「トリスタンとイゾルデ」とセットで考えると濃厚な美しさをたっぷりと味わえるようになっているのは間違いないだろう。


・楽劇「トリスタンとイゾルデ」よりイゾルデの愛の死

録音:2023年9月

 「パルジファル」を聴いた後に収録されていることもあって、その美しさは極みがかるものがある。一音一音を駆使して作り上げられた「トリスタンとイゾルデ」より愛の死は、オーケストラで聴く演奏とは違ったとしても演奏しているルガンスキーによる強いこだわりとこの曲を好きであるということが音によって伝えられてくるように感じられる。ピアノ曲のように演奏されているが、ピアノ曲ではないということを思わず忘れてしまうくらいの圧倒的な臨場感が今回の演奏にはあったと確かに体感できた。


 オーケストラ作品をピアノによる演奏で聴いてみると、これまでに見えてこなかった別の世界線を見ているかのようにも感じられる。それで言えば手元に確かベートーヴェン、ブルックナーの交響曲全集2台ピアノ版が確か手元にあったがまだ聴いていない。当盤は、ピアノ演奏には宝の宝庫であるということを再認識させてくれる素晴らしいディスクと言える。


https://classical.music.apple.com/jp/album/1719604944?l=ja-JP