先日井上道義さんとN響によるショスタコーヴィチの交響曲第13番「バビ・ヤール」がNHKEテレにて放送されていたが、井上さんがおっしゃるように今この情勢だからこそ聴くことに意味があると私も強く共感した。私と同世代の若者がこの曲を歌詞やその背景を知りながら聴いた時の衝撃はどのようなものとなるのか?それを体感させてくれる演奏がこのストゥールゴールズ&BBCフィルによる演奏で体感することができる。そして、現在決定盤とまで言われているコンドラシン&バイエルン放送響による同曲録音を凌ぐ名盤となるのではないか?と私自身当盤を聴いていて感じるものがあった。
・ペルト:深き淵より
録音:2023年3月19〜20日
「バビ・ヤール」を聴く前にペルトの合唱曲である「深き淵より」が収録されている。当盤はこの曲があるからこそこれまでに聴いてきたどの名盤よりも「バビ・ヤール」を引き立てている演奏であるようにも思える。現代的な世界観は共通しており、その深き闇を見せられているような感覚はどこか恐ろしさすら感じる。ダイナミック・レンジの幅広さが増しているということによって、不気味さはより拡張される。お経にすら聴こえる歌声は、聴いている間聴き手の周りを包み込むかのように覆いつくされるようであり、「深淵」を除いた瞬間を目の当たりにすることができるだろう。
・ショスタコーヴィチ:交響曲第13番「バビ・ヤール」
録音:2023年3月19〜20日
今回の演奏は、恐ろしく高音質であることによってこの曲を第1楽章から第5楽章までたっぷりと味わえたようにも思える。というのはここ最近Apple Musicを聴く際の方法をiPhone経由ではなく、ほとんどGalaxyなどのAndroidにApple Musicや Apple Music Classicalを入れて聴いている。また、その際イヤホンで聴くのだが、聴くジャンルによって変えているためクラシック音楽に特化したfinalのZE8000MK2を使用している。iPhoneで聴く場合やはりコーデック的な問題があるのだが、Androidで聴くことによってそれがさらに格別の高音質で聴くことができるようになったということである。その分電池の減りやデータ通信量に大分エネルギーが持っていかれてしまうのがデメリットだった。
話を戻そう、最初に述べたように今回Dolby Atmos/ハイレゾロスレスの高音質で聴いている。これがなんと言っても素晴らしい空間的な音響となっており、バスドラムのロールや男声合唱の歌声などを臨場感たっぷりに味わうことが可能となっている。コンドラシン&バイエルン放送響との録音もタワーレコードからSACDハイブリッド盤が発売されているので、高音質であることはいずれにしても変わらないのだが果たしてここまで分厚いスケールと重厚的な低音の伸びやかなサウンドを味わうことができるだろうか?ストゥールゴールズによるショスタコーヴィチの交響曲録音に関しては現在までに何種類も発売されており、レコード芸術特選盤や優秀録音にも輝いている録音が多数存在している。それを知った上であえて言いたい。当盤はコンドラシン&バイエルン放送響による決定盤に匹敵する名盤であると。
以前交響曲第12番と第15番を聴いた時には到底ここまでの感覚には至らなかったが、今回はどうだろう?先日の「クラシック音楽館」を見たことも影響あるかもしれないが、これはCDが欲しい。この類のCDは発売されてから早い段階で取り寄せ状態で手に入れづらくなる傾向にあるので、忘れないうちにタワーレコードにいってストゥールゴールズの「バビ・ヤール」を購入しようと思う。ぜひみなさんも一度ご視聴していただきたい名盤である。