第1859回「東京藝大ウィンドによる吹奏楽番外編、オールA.リードプログラム」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

こちらはクラシック音楽のCDの名盤をレビューするブログです!
年間500枚以上クラシック音楽のCDを購入します。
好きな作曲家はマーラー、ストラヴィンスキー、ブルックナー、三善晃、ショスタコーヴィチなど
吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。



 みなさんこんにちは😃昨日で東京藝大ウィンドオーケストラの最新アルバムにあたる「P.グレイアム&P.スパーク」は取り上げ終えていますが、本日は番外編としてA.リード生誕100年を記念して行われた東京藝大WO第91回定期演奏会ライヴアルバムを取り上げていきます。1枚目のアルバムに当たる「A.リード&C.T.スミス」に収録されていない名曲がこのライヴCDでは楽しむことができるようになっています!



「大井剛史指揮/東京藝大ウィンドオーケストラ」


リード作曲:

音楽祭のプレリュード


吹奏楽のための第6組曲


魔法の島


パンチネルロ


北国の伝説


アルメニアン・ダンス(全曲)


ヴィヴァ・ムジカ!




 吹奏楽を演奏すると、必ずリードの作品は演奏することになると言っても過言ではない。私自身これまでに何種類リードの作品を演奏したか覚えていない。それはきっと今後も吹奏楽を演奏していくことによって増えていくことになるのだろう。そんな今回は藝大WO初となるライヴCD。ライヴでも昨日までに取り上げたセッション録音に負けないくらいの良質な音質と高い完成度を誇る演奏となっているので、聴きごたえがあるのは間違いない。


・リード:音楽祭のプレリュード

録音:2021年7月7日(ライヴ)

 オクラホマ州イーニドのフィリップス大学で開催されるトライ=ステート音楽祭の25周年記念として1957年に作曲された。同年5月にリード自身の指揮によってフィリップス大学吹奏楽団の演奏で初演され、同団に献呈されている。その後日本では1970年の全日本吹奏楽コンクールで中学の部以外の部門の課題曲として選ばれており、これがきっかけで日本での知名度は上がった。短い曲ながらに構成が大分作り込まれている印象が強い作品となっており、1つの主題と2つのファンファーレの音型が組み合わされている。当盤の始まりとしてふさわしい演奏あることには変わりなく、奥深い豊かな音色と響きが功を奏する形となっている。


・吹奏楽のための第6組曲

録音:2021年7月7日(ライヴ)

 日本で行われた第10回「音の輪コンサート」のために作曲された。第1楽章「マーチ・ミニチュア」、第2楽章「サマーストール」、第3楽章「ハロウィーンのお化け」、第4楽章「阿波踊り」の全4楽章からなる。各楽章ごとに個性的で愉快な表現からなる演奏を聴くことができる。クラシック音楽というよりもポップな印象を受けやすく、親しみやすさもあるので聴きやすい。卓越されたアンサンブルや個々の楽器におけるキャッチーなフレーズによって演奏されているので、聴きごたえとしても充分に楽しめる演奏となっているのは間違いない。


・魔法の島

録音:2021年7月7日(ライヴ)

 シェイクスピアの「テンペスト」から引用された「魔法の島」。プラスペローがイタリアから追放され、娘とともに流浪の生活を送ってきた島国が舞台となっている。その幻想的で美しい世界観をたっぷりと味わうことができるようになっており、豊かなサウンドによって奏でられる濃厚な響きを味わうことができる。金管楽器の音色が特に奥深く豊かな音色となっているので、吹奏楽の枠を超えた名演を聴くことができるだろう。


・パンチネルロ

録音:2021年7月7日(ライヴ)

 「ロマンティック・コメディのための序曲」という副題が付いていることもあって、「急→緩→急」のシンプルな3部形式がより明確かつエネルギーを確かに感じ取ることのできる演奏が展開されている。パンチネルロは16世紀から17世紀にイタリア・ナポリで流行した操り人形の主人公を示している。テンポの緩急がわかりやすく作り込まれている「ザ・吹奏楽」というようなサウンドになっているため、メリハリを強く感じ取ることのできる豪快さなどを楽しめるのはこの曲の醍醐味とも言えるのかもしれない。


・北国の伝説

録音:2021年7月7日(ライヴ)

 ミネソタ州立ベミジ大学の第24回サマーミュージッククリニックのために作曲され、リード自身の指揮とビーバーバンドによって初演された。チッペワ・インディアンの音楽から取られたテーマに基づいて展開される3つの部分からなるラプソディーとなっている。まさに古き良き時代の吹奏楽というような世界観となっており、各楽器の音色がキラキラと輝いて聴こえる。また、ダイナミクス変化も明確にあり、「緩→急」へと変化した際特に3:40あたりからのサウンドはショスタコーヴィチを連想させるようで個人的にはかっこよく聴こえた。


・アルメニアン・ダンス(全曲)

録音:2021年7月7日(ライヴ)

 リードにとっても代表的な作品であり、現在でも盛んに演奏される吹奏楽曲である。5つのアルメニア民謡が演奏されるパート1、3楽章からなるアルメニア民謡をパート2とており、全4楽章の作品としている。それぞれ別々に初演が行われた。演奏頻度としては圧倒的にパート1が多く、演奏時間に関してもパート2は長く、難易度も高い。今回の演奏では両方通して演奏されており、その世界観に関しても完成し尽くされている。昨日取り上げたアプローチとは違う豊かなで幅広さを感じることのできる濃厚な音色と響きからなる演奏を聴くことができ、各楽器におけるソロもまとまりのある存在感を楽しむことができる。


・ヴィヴァ・ムジカ!

録音:2021年7月7日(ライヴ)

 シカゴのヴァンダ・クック・音楽大学からの委嘱を受けて作曲。1983年12月16日にリードの指揮によって同大学のシンフォニック・コンサート・バンドによって初演された。この曲を「音楽教育の多くの分野で最高を目指すすべての人々に捧げられます。」とリードは残している。演奏会のファンファーレにふさわしい輝かしさからなる明るいサウンドが功を奏する形となっており、より活発的でエネルギッシュな演奏を聴くことができる。ダイナミクス変化が意外にも細かく作り込まれていることもあって、シンプルで聴きやすい演奏とも言えるだろう。


 今回は番外編として藝大WOの「オール・アルフレッド・リード・プログラム」を取り上げた。思えば当盤が発売されたのももう3年前のことになるのだが、もう少し早く聴いておいてもよかったのでは?と聴き終えた今自分自身に問いかけている。とはいえ、藝大WOの6枚にわたるアルバムを聴き終えた今聴くからこそ面白いものもあるはずなのでタイミングとしては今でもよかったはず。またリード作品の演奏を行う際は当盤を聴きたいと思う。


https://tower.jp/item/5254887/オール-アルフレッド・リード-プログラム~東京藝大ウィンドオーケストラ第91回定期演奏会ライヴ~