第1853回「東京藝大ウィンドによる吹奏楽第2弾、P.スパーク&J.ヴァンデルロースト」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日は昨日取り上げた藝大WO(東京藝大ウィンドオーケストラ)による吹奏楽の1枚目のアルバムとなった「A.リード&C.T.スミス」の続編に当たる2枚目のアルバム「P.スパーク&J.ヴァンデルロースト」を取り上げていきます。スパークは4月に発売された6枚目のアルバム「グレイアム&P.スパーク」にも収録されている作曲家となっていますが、2枚目の時点で取り上げられていました。指揮は1枚目と同じく、山本正治さんによる演奏となっています。




「山本正治指揮/東京藝大ウィンドオーケストラ」


フィリップ・スパーク作曲:

祝典のための音楽


宇宙の音楽



ヤン・ヴァンデルロースト作曲:

モンタニャールの詩


カンタベリー・コラール


いにしえの時から




 現代の吹奏楽において盛んに演奏されるヤン=ヴァンデルローストとフィリップ・スパークの作品が今回収録されている。いずれも大曲ばかりで、演奏会のメインや吹奏楽コンクールの自由曲に選曲されるような作品を多数聴くことができる。なんと言っても「宇宙の音楽」が収録されているのもそうだが、「モンタニャールの詩」は多くの人々に愛される名曲でもある。2枚目のアルバムでは壮大なる世界観をたっぷりと味わえる曲が多く収録されているので十二分に楽しめることは間違いない。


・スパーク:祝典のための音楽

録音:2016年4月1〜3日

 「急→緩→急」からなるシンプルな3部構成となっているこの曲。スパーク作品の中でも有名で盛んに演奏される曲の部類に組み込まれている。元々は金管バンドのために書かれた曲で、1985年10月6日にロンドンで行われた「全英ブラスバンド選手権」のユース部門決勝の課題曲として作曲された。その後吹奏楽版は1989年5月に初演されている。スパークはなんと言ってもそのリズムが特徴的であるが、この曲に関しては「宇宙の音楽」や「ダンス・ムーブメント」などと比べても難易度は意外と優しい印象を受けなくはない。シンプルな構成ということもあって、クラシックよりはポップスやジャズ寄りの作品として楽しむことも出来なくはないだろう。今回の演奏では遊び心のあるキャラクターが明確にわかるようになっており、透き通るようなくもりのないサウンドが功を奏している。快速的に演奏される軽快なテンポの緩急が素晴らしく、聴いているだけでテンションが上がるかのようなバランスの良い演奏となっている。


・スパーク:宇宙の音楽

録音:2016年4月1〜3日

 今ではスパークを代表するトップ人気の名曲となっているこの曲。元々はブラスバンドのための作品で、イングランドのヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンドの委嘱によって作曲され、2004年にスコットランドで開催された「ヨーロッパ・ブラスバンド選手権大会」にて同バンドとデヴィッド・キングの指揮によって初演されている。吹奏楽版は2005年6月3日に山下一史&大阪市音楽団による演奏で初演された。この時のCDは非常に素晴らしい名演である。古代ギリシャの数学者かつ哲学者のピタゴラスとその一派が唱えた「天球の音楽」から着想を得て作曲を行なっている。「t=0」、「ビックバン」、「孤独な惑星」、「小惑星帯と流星群」、「天球の音楽」、「ハルモニア」、「未知なるもの」が各場面に記載がある。変拍子かつ高度な技術を要求する作品となっているが、学生から一般団体などこの曲も現在盛んに演奏されている。今回の演奏では、コンパクトにまとめているように聴こえなくもないが、昨日取り上げたCDと比べると対照的に残響が多少感じられるようなアプローチとなっている。それによって幻想的であり壮大なる宇宙的なスケールや響きを体感できると言っても過言ではない。多少バラつきがみられなくはないが、個々の楽器における個性的な特徴を余すことなく楽しめる演奏である。


・ヴァンデルロースト:モンタニャールの詩

録音:2016年4月1〜3日

 イタリアのヴァッレ・ダオスタ州アオスタにあるヴァル・ダオスト吹奏楽団の委嘱によって1996年に作曲され、指揮者のリノ・ブランショーに献呈された。初演は1997年1月26日に同団の演奏会にてヴァンデルロースト自身の指揮によって演奏されている。アオスタの豊かな自然、文化、多民族の侵略を受けた歴史を題材として、中世にこの地域を治めたカリーヌ・ド・シャランへのオマージュを込めて作曲している。ウィンドマシーンをはじめとして数多くの打楽器が登場する他、中間ではリコーダー四重奏による演奏などが展開されている。ヴァンデルロースト作品の中でも特に人気を博している作品で、多くの人々が演奏を行なっている名曲である。演奏では、曲の情景や細部にわたって細かく作り込まれた独特な音色と響きが豊かなサウンドとなって幅広く取られたその世界観によって聴きやすく展開されているのがよくわかる。調和的で美しい和音や時より見え隠れする不協和な響きもポイントとなっていて聴き飽きることはまずないだろう。


・ヴァンデルロースト:カンタベリー・コラール

録音:2016年4月1〜3日

 イングランド南東部ケント州にあるイングランド国教会の総本山カンタベリー大聖堂を訪れた際のインスピレーションを基として、ベルギーのブラスバンドであるブラス・バンド・ミデン・ブラバントの委嘱によって作曲された。後に吹奏楽版が作曲されている。個人的にはいつもこの曲とワーグナーの歌劇「ローエングリン」より「エルザの大聖堂への行進」がどうしても被ってしまうところがある。演奏では徐々に楽器が増えていきながら、音の厚みよりも一音一音における和音の響きが重視して作られているかのようにも思えるアプローチとなっており、金管楽器の音色も優しさに包まれているかのように美しさの溢れる演奏を聴くことができる。


・ヴァンデルロースト:いにしえの時から

録音:2016年4月1〜3日

 「ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2009」のチャンピオンシップ部門指定課題曲として作曲され、2010年にタッド・ウインドシンフォニー第17回定期演奏会で初演されている。15世紀から16世紀のルネサンス期にかけてポリフォニーを駆使した「フランドル楽派」と呼ばれるベルギーの作曲家たちから触発された作品となっている。現代的な仕上がりにしつつ、美しい旋律や響きを堪能することもできる演奏となっており、テンポの緩急が明確に演奏され分けられているのも特徴の一つと言えるだろうか。


 「P.スパーク&J.ヴァンデルロースト」の作品の一部を収録した藝大WOのCD。スパークは6枚目のアルバムに収録されているが、ヴァンデルローストに関してはまだ収録されていない曲の中でも素晴らしい名曲がいくつかあるのでいずれまたCD化してほしいと個人的に思っている。さて、明日はスメタナの命日になるので藝大WOの3枚目のアルバムとなった「J.バーンズ&F.チェザリーニ」はまた後日取り上げることとする。



https://tower.jp/item/4263514/P-スパーク-&-J-ヴァンデルロースト