昨日取り上げたジョナサン・ノット&東響によるチャイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」には大変驚かされた。普段聴き慣れたチャイコフスキーの交響曲演奏とは違うアプローチであり、演奏スタイルだったこともある。全く新しい視点で考えるチャイコフスキーの世界観からなる演奏の2種類目を今回交響曲第4番で聴くことができる。
・チャイコフスキー:交響曲第4番
録音:2023年7月22日(ライヴ)
演奏が始まる前にどのような演奏スタイルでくるかある程度予想をした状態で聴き始めた今回の交響曲第4番。第1楽章冒頭のファンファーレを聴いた瞬間に、前回取り上げた交響曲第3番「ポーランド」と同じようなスタイルからなる演奏であるということをすぐに理解したが、聴き進めていくと同じ部分もあればそうではない部分もあるという演奏となっているため、若干困惑した感覚を覚えた。いずれにしても金管楽器はややキレ味の良い固めなサウンドからなる演奏を行い、弦楽器や木管楽器に関しては優雅な舞踏会を聴いているかのような気品ある音色と伸びやかな旋律を合わせて聴くことができた。テンポに関してもそこまで揺らぐことなく重さや遅さは全くと言っていいくらいに感じられなかった。
第2楽章ではより一層優美さかつ伸びやかな音色と響きを余すことなく味わえるようになった。特に弦楽器群における演奏が功を奏する形となっており、ダイナミック・レンジの幅広さが増しているからこそたっぷりと味わえるような演奏が貫かれていることによって、濃厚ではあるが後味にしつこさを感じないような素晴らしいスケールを体感できるようになっている。テンポに関しても揺らぎがあり、一定のテンポで演奏されていないという点に関してもこの第2楽章における魅力を引き出していると言えるだろう。
第3楽章でようやくテンポが速くなり、快速的ながら軽快な演奏を聴くことができるようになる。弦楽器によるピツィカートもバランスの良さからなるダイナミクス変化が充実しており、木管楽器の旋律も新鮮味も加わってさらに聴きやすくなっている。短い楽章ながらこの後の第4楽章がより楽しめるような繋ぎの役割を担っている。
第4楽章では第3楽章からの流れを引き継いだ状態で案内感のある演奏が展開されている。可もなく不可もなくという印象になるかもしれないが、ダイナミック・レンジの幅広さが生かされた演奏となっているため、各楽器ごとに細部まで細かく演奏を聴き分けることができるようになっている。それによって幅広さのある音響が明確になったとも言えるだろうか。溜めがないというのも特徴の一つで、基本止まることなくどんどん進められていく。
チャイコフスキーの交響曲自体久しぶりに聴いた気もしなくはないが、それもあって普段より衝撃は多少大きかったかもしれない。ないと思うがこのまま両者による他の交響曲演奏も聴いてみたいと思ってしまった。ノットと東響の演奏は毎回革新的な演奏が多々みられるため、今回のチャイコフスキーに関しても同様のことが言えると思う。マニアックな演奏という枠にくくってしまうかもしれないが、今後も描き続けたい名演である。