第1830回「ネシリングによるレスピーギ管弦楽作品集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。



 みなさんこんにちは😃本日4月18日はオットリーノ・レスピーギの命日です。今年で没後88年となります。そんな本日ご紹介していくのは、レスピーギの管弦楽作品集を取り上げていきます。ジョン・ネシリング&サンパウロ交響楽団、リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団が録音したレスピーギ管弦楽作品収録は有名な「ローマ三部作」に始まり、普段あまり聴くことのない曲も多数収録されているので、レスピーギ作品の再認識に繋がると言えるでしょう。



「ジョン・ネシリング指揮/サンパウロ交響楽団」

[Disc 1]
レスピーギ作曲:
交響詩「ローマの噴水」

交響詩「ローマの松」

交響詩「ローマの祭」


[Disc 2]
「ジョン・ネシリング指揮/リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団」

ブラジルの印象

風変わりな店


[Disc 3]
第12旋法によるメタモルフォーゼン

地と精のバラード

バレエ組曲「シバの女王ベルキス」


[Disc 4]
劇的交響曲

歌劇「ベルフェゴール」序曲


[Disc 5]
ボッティチェリの三絵画

黄昏

交響的印象「教会のステンド・グラス」


[Disc 6]
バッハ作曲:
前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532(レスピーギ編)

パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582(レスピーギ編)

3つのコラール(レスピーギ編)

ラフマニノフ作曲:
5つの絵画的練習曲「音の絵」(レスピーギ編)


[Disc 7]
レスピーギ作曲:
組曲「鳥」

リュートのための古風な舞曲とアリア第1組曲

リュートのための古風な舞曲とアリア第2組曲

リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲



 未だかつてここまでの「レスピーギ管弦楽作品集」があっただろうか?かつてジェフリー・サイモン&フィルハーモニア管弦楽団が「レスピーギ管弦楽作品集」を録音したが、それもCD2枚組みだった。今回はレスピーギによるバッハとラフマニノフの編曲作品も収録して7枚組みのSACDハイブリッド盤となっている。「ローマ三部作」はサンパウロ交響楽団、それ以外はリエージュ・フィルハーモニー管弦楽団との録音。


[Disc 1]

・レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」

録音:2008年2月

 「緩→急」へと変化する際のテンポの緩急に関しても大きな変化をみせている今回の演奏、ずっしりとした重みある演奏を聴くことができるということもあって、普段聴く美しさからなる演奏だけでなく濃厚さも多少加えられたように感じられる。伸びやかでたっぷりと演奏される弦楽器によって奏でられる演奏は思わずうっとりしてしまうかのような感覚を覚えるものであり、ダイナミック・レンジの幅広さがあることによるスケールを余すことなく味わえるのは間違いない。


・交響詩「ローマの松」

録音:2008年2月

 「噴水」の後に聞いていることもあってか明瞭な音色からなる奥深いサウンドが非常に素晴らしく、伸びやかで美しい音をオーケストラ全体から聴くことができるようになっている。全体的にみればテンポ設定に関しても速すぎることもなければ遅すぎることはない。しかし、「アッピア街道の松」に関してはやや速いくらいのスピードとなっており、低音による一歩一歩踏み締めていく感覚に関しては徐々に迫ってくるかのようなダイナミクス変化もあって聴きごたえがある演奏となっている。最終的にはオーケストラ全体としてのテンションも高い状態で終わるので、この後に収録されている「ローマの祭」を聴く形が見事に仕上げられている。


・交響詩「ローマの祭」

録音:2008年2月

 若干だが個性的にも聴こえなくはない「ローマの祭」となっている今回の演奏。他の同曲録音ではあまり聴くことのない溜めやテンポの加速などがいくつかの場面で見受けられるようになっているため、「緩→急」や「急→緩」で交互に変化する際は少々驚かされるだろう。混沌さよりも優雅さが感じられる演奏も各曲によってはあるため、この曲の爆演や爆音に慣れてしまっている場合は物足りないかもしれないが狂気的な「祭」というよりも個性的で愉快に近い「祭」を聴きたいというのであればこの演奏はぴたりと当てはまるかもしれない。聴き進めれば聴き進めるほどに面白いアプローチだなと思える箇所が幾度もあるので、さながらジェットコースターに乗っている感覚である。


[Disc 2]

・ブラジルの印象

録音:2013年4月

 「熱帯の夜」、「ブタンタン」、「歌と踊り」の3曲からなる組曲で「ブタンタン」では「怒りの日」が引用されている。非常に情景的であり、優雅な雰囲気を全体的に味わうことができるキャッチーな演奏となっている。それはダイナミック・レンジの幅広さがあることも良い効果が出ているのだろう。弦楽器と木管楽器を筆頭に愛らしくも美しさ溢れる細部にわたって、こだわり抜かれた演奏を余すことなく堪能することができるようになっている。


・風変わりな店

録音:2013年4月

 ディアギレフ率いるバレエ・リュスにて初演が行われたこの曲は、ロッシーニが晩年に書き溜めたピアノ曲、歌曲、室内楽曲などの中から素材を集めて作曲された一幕のバレエである。全8曲からなる演奏で、「ローマの噴水」と同時期に作曲された作品ということもあって非常に濃密で美しさあふれる優美さと濃厚さがたっぷりと味わえる演奏と言える。先ほどの「ブラジルの印象」同様に目を閉じるだけで美しい世界観が広がり、多彩な管楽器と弦楽器による演奏は最初から最後まで聴き入ってしまうだろう。


[Disc 3]

・第12旋法によるメタモルフォーゼン
録音:2014年6月
 荘厳的で厳格も同時に味わうことのできる世界観となっており、「ローマ三部作」とは違う深みをたっぷりと味わえる演奏であると言える。まとまりある濃密な弦楽器による土台が明確に出来上がっていることもあって分厚いスケールが展開されており、金管楽器や木管楽器のサウンドもやや太めに奏でられているように聴こえなくもない。やや重心が低い状態からなる遅めのテンポによって演奏が進んでいくこともあって、聴きごたえとしても十二分に楽しめる神秘的な演奏と言えるだろう。

・地と精のバラード
録音:2014年6月
 1本の映画を見ているかのような展開された世界観となっており、スコアに掲載されたクラウセッティの詩によって音楽が進行していく。全4部からなる作品となっており、長大さもありつつ、卓越されたアンサンブルや濃密な弦楽器と金管楽器による演奏が功を奏する形となっている。テンポの緩急も明確にあり、ダイナミクス変化もわかりやすく作り込まれているので最初から最後まで聴き入ってしまう演奏である。

・バレエ組曲「シバの女王ベルキス」
録音:2014年6月
 普段聴き慣れた組曲「シバの女王ベルキス」と違う演奏である。というのも「ソロモンの夢」からそうだが旋律の一部分の音が違う。意図的に変更しているのか間違えているのかは不明なところである。演奏としてはややテンポ遅めの重心が低い演奏となっており躍動感は感じられないが、曲によっては悠然とした荘厳感を味わえるようになっているのは言うまでもない。慈愛に包まれた優しさを多少感じ取ることのできる音色と響きによって演奏が展開されているため、まろやかな印象も受けるかもしれないが深みを確かに感じ取ることができるのは間違いない。

[Disc 4]
・劇的交響曲
録音:2015年4月
 随分前に聴いてから今回久しぶりに聴くレスピーギの交響曲である。レスピーギ作品の中でも大分マイナーな作品のため、滅多に演奏される機会がない曲だが個人的には大分好みである世界観となっている。3楽章からなる交響曲で、近年における交響曲と同じような重厚感と幅広く分厚いスケールとダイナミック・レンジの幅広さが功を奏する感覚を持っており、濃厚であり美しい音色と響きを持ち合わせている長大な交響曲である。さながらマーラーやブルックナーを聞いているような感覚になるため、個人的にひかれるところが多いのだろう。名曲である。

・歌劇「ベルフェゴール」序曲
録音:2015年4月
 他のレスピーギ作品ではみられないような映画音楽を聴いているかのような爽快感や疾走感が非常に素晴らしい「ベルフェゴール」序曲。テンポの緩急に関しても明確に分けられた状態で演奏されており、細部にわたり細かくダイナミクス変化が統一される形となっている。また、木管楽器や金管楽器、弦楽器など各楽器ごとに奏でる演奏が非常に煌びやかで輝いて聴こえるような音色となっているため、聴きやすい序曲である。

[Disc 5]
・「ボッティチェリの三連画」
録音:2016年3月&4月
 「春(プリマヴェーラ)」、「東方三博士の礼拝」、「ヴィーナスの誕生」といういずれも有名な絵画の世界観が音楽となったレスピーギの作品。いずれも非常に美しさあふれる伸びやかな演奏を聴くことができるようになっており、弦楽器と木管楽器による濃厚で密度もある音色から軽快な旋律を楽しむことができるようになっている。これは中々に聴きごたえのある作品で、その世界観を見事に表現しているレスピーギも素晴らしいがオーケストラ全体の音色やバランスもぴたりと当てはまる仕上がりになっているのは間違いない。

・「黄昏」
録音:2016年3月&4月
 ソプラノ歌手にアンナ・カテリーナ・アントナッチを迎えて演奏している「黄昏」。レスピーギが作曲した歌曲である。神秘的であり、美しい歌声と同時にオペラのワンシーンかのようにも思える演奏となっており、ソプラノとオーケストラとの対話からなる音色や響きなどが抜群に良い効果をもたらしているとも言えるだろう。濃厚な音色は他の録音同様に味わえるようになっているため、たっぷりと味わえる演奏となっているのは間違いない。

・交響的印象「教会のステンド・グラス」
録音:2016年3月&4月
 レスピーギ作品の中でも「ローマ三部作」や「りゅートのための古風な舞曲とアリア」についで人気な曲である。「エジプトへの逃避」、「大天使ミカエル」、「聖クララの朝の祈り」、「偉大なる聖グレゴリウス」の4楽章からなる管弦楽曲となっている。第4楽章ではオルガンが演奏されたりと、荘厳的で神秘的な音色と響きを味わうことができる。弦楽器による伸びやかで濃厚なスケールをたっぷりと聴くことができるようになっており、金管楽器の音色に関してもこの曲を演奏するのにベストなサウンドとなっているのは間違いない。

[Disc 6]
・バッハ:「前奏曲とフーガ」(レスピーギ編)
録音:2017年9月
 重厚的で分厚いオーケストレーションによって演奏されるため、近年盛んに演奏されるようなバッハ演奏的解釈とは正反対と言っても良いくらいの壮大感である。分厚いスケールからなる弦楽器群による演奏は凄まじい音圧を生み出していると同時に、「前奏曲とフーガ」それぞれの新しい世界観を余すことなく味わえる充実した演奏と言える仕上がりになっていて、初見で聴いた感覚としては非常に聴きごたえのある演奏であると感じ取ることができた。

・バッハ:パッサカリアとフーガ(レスピーギ編)
録音:2017年9月
 非常に重厚的で陰鬱とした暗い音色からなる分厚いスケールは、ただ重厚的なだけでなく濃厚であり伸びやかな弦楽器の音色を細部まで細かくたっぷりと味わうことができるようになっている。金管楽器が奏でるその音色に関しても荘厳的であり、混沌とした邪悪さも垣間見ることもができるがこれほどの凄みを味わえるのは他にないのではないか?と思ってしまうほどの深みからなるエネルギーをたっぷりと味わうことができる。

・バッハ:3つのコラール(レスピーギ編)
録音:2017年9月
 短い曲ではあるが一曲一曲の存在感は凄まじいもので、低弦の重厚的なサウンドから始まり濃厚でまろやかな音色が全体を包み込んでいる。それに合わせて金管楽器や木管楽器が演奏を行っているため、荘厳的でしつこさのない新感覚のレスピーギによるバッハの世界観を堪能することができるようになっているので、初めて聴いた際の衝撃は非常に大きく、マーラーを聴いているかのような感覚だった。ある意味「劇的交響曲」に近いものを感じる。

・ラフマニノフ:5つの絵画的練習曲「音の絵」(レスピーギ編)
録音:2017年9月
 ラフマニノフのピアノ曲をレスピーギがオーケストレーションした結果分厚く濃厚な世界観となってそれが完成した。各曲の個性的な面も失うことなく表現されており、聴いているだけで非常に面白い演奏を聴くことができるようになっているのは間違いない。安定感のあるやや重心低めの遅いテンポが功を奏する形となっているため、聴きごたえも十二分に楽しめる演奏であると言える。一歩一歩確かに踏み締めていく感覚はレスピーギ編曲だからこそ味わえるものがあると言えるだろう。

[Disc 7]
・組曲「鳥」
録音:2021年7月
 透き通るように美しい音色を奏でる木管楽器と弦楽器が奏でる音色がぴたりと当てはまる演奏となっており、自然的な美しさを各曲ごとに充実した感覚で味わうことができるのが至福の時であると言える。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることもあって細部にわたって細かく聴き込むことができるようになっており、卓越されたアンサンブルもそうだがより一層濃密なる世界観を味わえるようになっている。音の広がる瞬間は特に美しく感じることは間違いない。

・リュートのための古風な舞曲とアリア第1組曲、第2組曲、第3組曲
録音:2021年7月
 レスピーギ作品の中でも「ローマ三部作」に次ぐ形で有名な作品である「リュートの古風な舞曲とアリア」。レスピーギによる編曲のバッハ作品を聴き終えた後にこの曲を聴くと、また違う世界観を見ることができるような感覚になる。聴いているだけで心に安らぎを与えてくれるような穏やかで美しさ溢れる演奏と言える。伸びやかで濃厚なスケールを余すことなく味わえる空間となっており、第1組曲から第3組曲をセットで聴くからこそ楽しめる要素があることに間違いはない。

 今回のレスピーギ管弦楽作品集では、これまでに聴いたことがある曲よりも初めて聴く曲が多数収録されていたのは間違いない。特に「劇的交響曲」とレスピーギ編曲によるバッハ作品を聴くことができたのは非常に大きい。定期的に聴きたい演奏も見つけることができた現代におけるレスピーギの管弦楽作品集における演奏を余すことなく楽しめる名盤と言えるだろう。


https://classical.music.apple.com/jp/album/1727110691?l=ja-JP