第1811回「ブルックナーアニバーサリー企画第3弾、8人の指揮者&ベルリンフィルの交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃今年生誕200年を迎えるアントン・ブルックナー、それを記念として毎月1種類ブルックナーの交響曲全集を取り上げています。第3弾となる3月は8人の指揮者とベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による交響曲全集です。この全集は以前通常CD盤が発売した2019年に数回に分けて取り上げましたが、SACDハイブリッド盤として2021年に発売されました。指揮者としては小澤征爾、パーヴォ・ヤルヴィ、ヘルベルト・ブロムシュテット、ベルナルド・ハイティンク、マリス・ヤンソンス、クリスティアン・ティーレマン、ズービン・メータ、サイモン・ラトルという豪華な面々が揃っています。


「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

小澤征爾指揮

ブルックナー作曲:
交響曲第1番 ハ短調(1865/66リンツ稿)


パーヴォ・ヤルヴィ指揮

交響曲第2番 ハ短調(第2稿1877年版)


ヘルベルト・ブロムシュテット指揮

交響曲第3番 ニ短調「ワーグナー」(1873年版初稿)


ベルナルド・ハイティンク指揮

交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」(1878/80年)

交響曲第5番 変ロ長調


マリス・ヤンソンス指揮

交響曲第6番 イ長調


クリスティアン・ティーレマン指揮

交響曲第7番 ホ長調(1885年版)


ズービン・メータ指揮

交響曲第8番 ハ短調(1890年版)


サイモン・ラトル指揮

交響曲第9番 ニ短調(サマーレ、フィリップス、コールス、マッズーカによる4楽章完成版/1985〜2008年、2010年改訂版)



 ベルリン・フィルによるブルックナー交響曲全集はカラヤンとバレンボイムがすでにそれぞれ完成させているが、今回は2009年から2019年にかけてベルリン・フィルで演奏された8人の指揮者たちによるそれぞれの交響曲録音をまとめて交響曲全集としている。2019年に元々通常CD盤が発売され、その後2021年に今回取り上げるSACDハイブリッド盤が発売された。

・ブルックナー:交響曲第1番
録音:2009年1月29〜31日(ライヴ)
 小澤さんによるブルックナーの交響曲第1番を聴くことができる。ベルリン・フィルは今回の演奏までに四半世紀この曲を演奏していなかった。年代的にカラヤンがベルリン・フィルと交響曲全集を完成させた時期のことになる。しかし、バレンボイムはベルリン・フィルとブルックナーの交響曲第1番を演奏しており、録音は1996年に行なっている。これはカウントしないのだろうか?SACDハイブリッド盤となったことによって、ダイナミック・レンジの幅広さが増したことによるオーケストラ全体の幅広さをたっぷりと味わえる第1番となった。その中でも各楽器群の音色はスマートでバランス良く演奏されているのと、やや固いサウンドからなる筋肉質な音作りがされていることもあって全体として音が引き締まって聴こえる。普段あまり聴かない交響曲だからこそ味わえる凄みを秘めた名演である。

・交響曲第2番
録音:2019年5月23〜25日(ライヴ)
 小澤さんが指揮した交響曲第1番の延長線上にあると言っても良い今回の交響曲第2番。スマートかつ俊敏な演奏となっていることもあり聴きやすい。透き通るような美しさ溢れる音色に対して金管楽器と弦楽器の組み合わせによるやや引き締められたサウンドからなる筋肉質寄りの音を演奏が進んでいくほどに聴くことができるようになっているというのも聴き手にとっては衝撃を与えてくれる表現であることは間違いない。ダイナミクス変化も明確で細部まで細かく変化していくためオーケストラ全体としても見晴らしの良い演奏と言える。

・交響曲第3番「ワーグナー」
録音:2017年12月8〜10日(ライヴ)
 ブロムシュテットによる第3番「ワーグナー」。第3楽章から第4楽章へと進んだ際の展開が非常にストイックな印象を受けるアプローチとなっており、ダイナミック・レンジの幅広さが増していることもあるのだろうが明確かつオーケストラ全体の一体感を確かに感じ取ることのできるサウンドとして統一されている。テンポの緩急も第1楽章から聴くことができるようになっており響きよりもまとまりのある群としての音色が功を奏しているのが演奏からよくわかる。

・交響曲第4番「ロマンティック」
録音:2014年3月13〜15日(ライヴ)
 ウィーン・フィル、コンセルトヘボウ管、ロンドン響などのオーケストラとハイティンクはこの交響曲第4番「ロマンティック」を演奏してきたが、ここまでの全集の流れで言えばスタンダードかつオーソドックスな安定感のある分厚いスケールと重厚的なサウンドを聴くことができる演奏となっている。ややテンポは重めではあるものの、決して遅すぎるというわけではないため演奏時間も体感として長く感じるわけではない。ホルンをはじめとした金管楽器の濃厚な音色と充実した弦楽器の響きによってベルリン・フィルの演奏が展開されているため、最初から最後まで心地良い時間を楽しむことができたと言える。

・交響曲第5番
録音:2011年3月10〜12日(ライヴ)
 幅広くとられたスケールと分厚いサウンドが功を奏する形となっている今回の演奏。ダイナミック・レンジがあることもこの曲における魅力を大きく引き出すことができているということに繋がる。細かい対位法が駆使されていることもあって複雑な世界観ではあるが、SACDハイブリッド盤となったことによりより細かく細部まで聴き込むことができるようになっている。第4番よりもテンポの緩急がハッキリとしており重さがなく、ダイナミクス変化もそれに合わせて演奏が行われている。それによって長大なる交響曲としての姿を十二分に楽しめるようになっているのは非常に素晴らしい。

・交響曲第6番
録音:2018年1月25〜27日(ライヴ)
 素朴ながら安定感のある演奏からなる透き通るような美しい音色によって演奏されていることもあって充実した響きが各楽章共通して聴くことができるようになっている。テンポ設定に関しても軽やかでそこまで遅くなることはなく、「緩→急」と「急→緩」には大きく差が出ないように作り込まれているとも言える。何より弦楽器と木管楽器による音色の一貫性が行われているため、これによりベルリン・フィル全体のサウンドも自ずと明るく明瞭なものとなっている。

・交響曲第7番
録音:2016年12月15〜17日(ライヴ)
 ウィーン・フィルと交響曲全集を完成させたティーレマンによるベルリン・フィルとの交響曲第7番。今改めて聴いてみるとスタンダードなアプローチとなっている部分も少なからず存在しているが、ややテンポを遅くして重みを足している楽章もあるため重厚的な分厚いスケールをたっぷりと味わいやすくなっている演奏とも言えるだろう。特に第2楽章のテンポは絶妙なものとなっており、緩やかさもそうだが金管楽器、弦楽器、木管楽器のバランス配分がよくダイナミクス変化も濃厚で明確な演奏を楽しむことができる。

・交響曲第8番
録音:2012年3月15〜17日(ライヴ)
 メータによるブルックナーの交響曲第8番である。メータによるブルックナーは批判されがちではあるが、今回の演奏は個人的に大分良かったようにも思える。というのもテンポは全楽章共通して重めのアプローチとなっており、それによるベルリン・フィルとの相性が抜群に良い。重厚的なサウンドからなる弦楽器のスケールによって往年の時代におけるどっしりとした土台が形成され、金管楽器を筆頭に濃厚で分厚いサウンドをたっぷりと味わえるようになっている。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることもあってこれは中々に素晴らしいブルックナーであると言えるだろう。

・交響曲第9番
録音:2018年5月26日(ライヴ)
 ラトルにとって2度目となるブルックナーの交響曲第9番補筆版の演奏だ。第1楽章〜第3楽章までの完成された空間的な美しさは息を呑むほどのものとなっており、ここに第4楽章が加わることによって普遍的なものへと変化する。これはまだ私自身第9番の補筆版に対して慣れていないということもあるのだろうが、第4楽章は特に衝撃的な演奏でありベルリン・フィルが演奏するということによってそのインパクトはより一層増しているようにも思える。弦楽器群による分厚い重厚的なスケールとやや攻撃的にも聴こえる金管楽器のサウンドは第4楽章以降になると特にそういった傾向に聴こえてくる。

 今回は短い期間に詰め込んで聴いたが以前通常CD盤を聴いた際はインフルエンザにかかったこともあり、個人的には一貫性を感じることがなかったかもしれない。しかし、今回改めて聴いて8人の指揮者それぞれのアプローチによるこだわりを感じながら一曲一曲の交響曲演奏をたっぷりと余すことなく味わえた。パーヴォ・ヤルヴィとティーレマンに関してはそれぞれ別のオーケストラとも交響曲全集を録音しているので、今後のアニバーサリー企画で取り上げたいところだ。