ストラヴィンスキーによる「火の鳥」と「ペトルーシュカ」が収録されている当盤。「春の祭典」がないのが少々残念なところではあるがそれを忘れさせるくらいの衝撃と興奮をもたらしてくれる名盤となっていることは間違いない。以前取り上げたリヒャルト・シュトラウスの「交響詩集」もそうだったように今回のストラヴィンスキー作品は非常に素晴らしい演奏である。
・ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1945年版)
録音:2023年5月18,21日
1945年版は聴き手によって好みが分かれる版であり、オーケストレーションもバレエ音楽全曲からすると変更点が多い。それを見事に独特なアプローチと細部にわたって細かいダイナミクス変化やテンポの緩急からなる揺らぎなどが繊細に描いている。一つ一つ丁寧に作り込んだ世界観は抜粋からなる組曲版であったとしてもより理解しやすい演奏となっていることに間違いはないだろう。ハイレゾロスレスで聴いていることもあってダイナミック・レンジの幅広さが増しているのも功を奏する形となっており、度肝を抜かされる場面が幾度となく演奏から聴くことができるのはまさに至福の時であると言える。
・ストラヴィンスキー:バレエ組曲「ペトルーシュカ」(1947年版)
録音:2023年5月18,21日
「火の鳥」でも多少その片鱗は確認することができたが、テンポは全体的に遅めとなっており重量感は十二分に味わうことができる。それもあってこれまでに聴いたことがないような「ペトルーシュカ」を聴くことができるようになっている。テンポの緩急に関しても明確に変化するというわけでもなく、ゆっくりとゆったりと分厚いスケールをたっぷり味わうことができる。チェリダッケによる「ペトルーシュカ」も以前聴いているがそれとはまた違う感覚を味わえる演奏となっているのは間違いなく、ロウヴァリが今回のようなアプローチによって「ペトルーシュカ」の世界観を作り上げたのはどこか意外だったかもしれない。
ロウヴァリ&フィルハーモニア管による録音は現時点でも数はまだそこまで多くないが、その一つ一つの演奏におけるインパクトは聴き手に対して大きな印象を与えてくれるものとなっていることは間違いない。今後の演奏に期待すると同時にまだ聴いていないマーラーの交響曲第2番「復活」を忘れないうちに聴きたいと思う。