エソテリックからはポリーニの名盤が非常に多くSACDハイブリッド盤として復刻されている。当盤含めてアバド&ベルリン・フィルとのベートーヴェンピアノ協奏曲全集、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第28番、第29番「ハンマークラヴィーア」、第30番、第31番、ショパンの「ポロネーズ集」、シューベルトのピアノ・ソナタ第20番、第21番、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」からの3楽章、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番という形で7種類がSACDハイブリッド盤となっている。いずれも廃盤となっているため現在では手に入れづらい上に値段も発売当初からすると大きく跳ね上がっているため購入する際は躊躇される方もいるかもしれない。しかし、実際にその演奏を高音質盤となった状態で聴くと感傷的な気持ちにさせてくれることは間違いない。
・ショパン:12の練習曲作品10,25
録音:1972年1月20〜22日、5月15〜19日
1曲あたりの演奏時間は短いため、流れるように演奏は進んでいく。軽やかであり明確に、ハッキリとしたタッチで演奏は進んでいき曲によってもテンポの緩急を味わうことができるようになっているが、ダイナミック・レンジの幅広さが増したこともあってポリーニのピアノ演奏はより聴きやすい感覚を味わえるようになっているとも言える。有名な「革命」や「別れの曲」、「木枯らし」などまさに多彩なポリーニによるショパンの世界観を味わうには充分であると言える素晴らしさが当盤にて改めて再認識することができたと言っても過言ではないだろう。
ポリーニによる名盤は今後もきっと愛されていくことに違いない。個人的にはリフトのピアノ・ソナタロ短調もよく聴く名盤の一つである。また、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集も改めて聴きたいと思えた。多くのクラシックファンの心を掴んだポリーニの演奏、後世に伝えていきたい名盤である。