ケルテス&ウィーン・フィルによるドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」はケルテスによる代表的な録音であると同時に、「DECCA」を代表とする名盤の一つである。ケルテスはすでにロンドン交響楽団とドヴォルザーク交響曲全集を完成させているが、それよりもはるかに人気を誇る「新世界より」であることは誰もが認めるであろう。それが今回2023年のケルテス没後50年という年であることもあって多くのファンが待ち望んだ代物であることは間違いない。
・ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
録音:1961年3月22〜24日
・・・エソテリック盤となってSACDハイブリッド盤やLPレコードとしても発売されたケルテスの「新世界より」、その人気は凄まじく今でもなお多くのクラシックファンに愛されている。今回ついにタワーレコードからSACDハイブリッド盤が復刻されることを知った時は非常に嬉しかった。エソテリック盤はすでに手元にあるが、2023年最新マスタリングが施されてどこまで音質が良くなったのか。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることによって細部まで各楽器の音色を聴き分けることができるようになっており、テンポの緩急からなるダイナミクス変化や音のまとまりなど抜群に良くなっているのが大変多く確認することができる。
・スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲
録音:1962年3月25日〜4月30日
・・・一貫性のある鋭く速いテンポからなる演奏は弦楽器群の統一されたサウンドからなるスケールもそうだが、オーケストラ全体として一つの方向性へと向かっていることがよくわかるため勢いの良さや推進力からなるエネルギーをたっぷりと味わうことができるようになっているのは間違いない。それが今回の2023年最新マスタリングによってダイナミック・レンジの幅広さが増したことによって情報量が増し、爆発的かつ活発な演奏を余すことなく味わえるようになっている。
・スメタナ:交響詩「モルダウ」
録音:1962年3月25日〜4月30日
・・・今年はスメタナの生誕200年という年だが、このタイミングでケルテスによる「モルダウ」を聴くことができて個人的には大分満足している。ダイナミック・レンジの幅広さが増したことによる音の広がりなど申し分なく、弦楽器と木管楽器による美しさ溢れる情景をたっぷりと味わうことができるように仕上がっている。当盤のメインは「新世界より」であることは間違いないだろうが、今回の「モルダウ」に関しても引けを取らない素晴らしさがあると言えるだろう。
・ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集より第1番、第3番、第8番、第10番、第9番
録音:1962年3月25日〜4月30日
・・・全曲ではないにしても各曲ごとにテンポの緩急が明確化された勢いの良さと柔軟性のある演奏を楽しむことができるようになっており、生き生きとしたウィーン・フィルとは違うイスラエル・フィルとだからこそ奏でることのできるスリリングなサウンドと一貫性のある快活的な音色を味わえると言える。何より金管楽器、木管楽器、弦楽器それぞれの楽器における音色が余すことなく生かされているというのも素晴らしいと言える。