第1789回「リコリス・ウインドアンサンブルvol.3、3月23日の宣伝と曲目」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃来る3月23日に江戸川総合文化センター大ホールにて行われる「リコリスウィンドアンサンブルvol.3」。今回はこちらの告知と宣伝になります。昨年3月5日に行われた「vol.2」にも私はトランペットで参加していますが、今回の「vol.3」にも参加しています。今回はその中で演奏される曲について触れていきたいと思います。



〜リコリスウィンドアンサンブルvol.3〜

第1部
樽屋雅徳作曲:
Crossfire - November22

マードックからの最後の手紙(特別編)

長生淳作曲:
「四季連祷」より楓葉の舞


第2部
ワーグナー作曲、L.カイエ編曲:
歌劇「ローエングリン」よりエルザの大聖堂への行列

レスピーギ作曲、木村吉宏編曲:
交響詩「ローマの祭」



 昨年の「vol.2」に続いて江戸川総合文化センター大ホールにて演奏される「vol.3」。これまで吹奏楽曲中心の曲目だったが、ついにオーケストラ作品からなる吹奏楽編曲作品としてレスピーギの交響詩「ローマの祭」がメインを飾ることとなる。毎年難曲の数々を演奏するが今年はどのような曲が演奏されるのか1曲ずつみていきたいと思う。



第1部

1.樽屋雅徳:Crossfire - November22



 突如一発の銃声が鳴り響く。曲冒頭より殺伐とした雰囲気に飲み込まれるかのような世界観は、近年盛んに演奏されるアッペルモントやマッキーのような勢いの良さとなっている。これを樽屋雅徳さんが作曲した曲であるということを知った上で聴くとどこか意外に思えるかもしれない。1963年11月22日に起きた「ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件」が題材にされた曲で、昨年2023年はケネディの没後60年という年だった。吹奏楽で同じくこの事件が扱われた曲は、清水大輔さんが作曲した「マイ・フェロー・アメリカン〜ラスト・エピソード」の第3楽章があげられる。さて、「クロスファイヤー・ノヴェンバー22」は高難易度を要求する複雑なリズムや旋律が繰り返し多用されており、聴くもの全てを圧倒させる。曲冒頭より「謎」と「陰謀」、「ケネディ大統領就任」が表現され、19世紀後半のアメリカで作曲された賛美歌「God Be with You Till We Meet Again(神共にいまして)」が引用されている。その後再び「謎」へと展開しテンポは加速する。Adagioに入るとケネディの「無念」を奏で、「記憶」の中をアメリカ国歌である「The Star - Spangled Banner(星条旗)」を引用して軍楽隊が奏でる。再びテンポが加速すると「謎」を残したまま曲は幕を閉じる。近年多くの吹奏楽部や一般団体が吹奏楽コンクールにて自由曲としている傾向にある曲である。CDは全日本吹奏楽コンクールを除くと土気シビックウインドオーケストラによる演奏のみとなっているが、そのテンポの緩急からなるダイナミクス変化と細かいリズムのキレ味は他の吹奏楽曲では味わうことのできない凄みを聴くことができると言えるだろう。







2.樽屋雅徳:マードックからの最後の手紙(特別編)



 先ほどの「クロスファイヤー・ノヴェンバー22」と同じく樽屋さんが作曲した吹奏楽の人気曲である。「マードックからの最後の手紙」は1912年4月15日に沈没したタイタニック号に乗船していた一等航海士ウィリアム・マクマスター・マードックと沈没したタイタニック号がモチーフとされた曲である。このタイタニック号は映画にもなっている。航海中に手紙を書くのが日課であったマードックにとって、最後の航海となったタイタニック号での航海が綴られたであろう世界観が音楽として表現されており、それを楽しむことができるのがこの曲の醍醐味である。2009年に土気シビックウインドオーケストラの委嘱で原典版が作曲され、翌年2010年に花咲徳栄高等学校吹奏楽部の委嘱によって改訂された特別版が今回演奏しているヴァージョンだ。その後も2015年には小編成版、2021年に玉川女子高等学校吹奏楽部の委嘱によって改訂された2021年版などが作られている。吹奏楽では毎年盛んに演奏される人気曲ではあるがCDは意外と少ない。特別版の演奏は海上自衛隊音楽隊によって演奏が行われている。シンプルなアプローチではあるが、サウンドにしつこさがないというのが特徴的だ。それゆえに私自身この曲ではそこまで力を入れ過ぎることなく演奏をしている。




3.長生淳:「四季連祷」より楓葉の舞



 長生淳さんがヤマハ吹奏楽団のために委嘱した吹奏楽曲。2000年の「波の穂」、2001年の「蒼天の滴」、2002年の「翠風の光」に続いて2003年に作曲されたのが今回演奏する「楓葉の舞」である。これら四部作をまとめて「四季連祷」と称している。全4曲を続けて演奏すると吹奏楽としては珍しく演奏時間は約80分近くなっている。後に上記4曲を再構成して作曲されたのが交響曲第3番「四季連祷」で、こちらもヤマハ吹奏楽団に委嘱、初演されている。「楓葉の舞」は「秋」が曲の核であるが、全て秋というわけではない。作曲中にヤマハ吹奏楽団の団員1人が団を辞めることを長生さんは聞き、自身もこの曲を最後に団に別れを告げなければならないという感傷がこの曲に込められている。曲は作り込まれた構成となっており、現代的な表現がされているものの現代音楽ではない。とはいえ大編成らしい壮大なスケールや分厚いサウンドを聴くことができるのは間違いなく、ブルックナーの交響曲に通じるものがあるような気もしなくはない。この曲も2005年に「ブレーン」から発売されたCDに収録されているが、その後再販されることなく現在でも廃盤状態となっており、手に入れるのは少々難しい稀少盤となっている。よく行くディスクユニオンでも未だに見たことはない。





第2部

4.ワーグナー/カイエ編曲:歌劇「ローエングリン」よりエルザの大聖堂への行列



 「ローエングリン」はワーグナー・オペラを代表する作品の一つで、1850年8月28日に作曲家としても有名なフランツ・リストの指揮によってヴァイマル宮廷劇場にて初演が行われた。演奏時間は約3時間30分となっている。オペラの中でよく知られている曲として第1幕への前奏曲、「エルザの大聖堂への行列」、第3幕への前奏曲、「婚礼の合唱」があげられる。この曲に関連する出来事として、ワグネリアン(ワーグナーの音楽に心酔した人々)の1人だったアドルフ・ヒトラーが、本作の第3幕におけるハインリヒ王による「ドイツ国土のためにドイツの剣をとれ!」の演説をドイツとゲルマン民族の国威発揚のために利用している。ワーグナーの作品には政治的な意図はないもののドイツ賛美が内容から見え隠れしていることもあり、そこからヒトラーやナチスを連想されるため今でもなおイスラエルではワーグナー作品の演奏は禁止とされている。


 舞台は10世紀前半のアントウェルペンスヘルデ河のほとり。ハインリヒ王がハンガリーとの戦いに備えて兵を募っている。そこにフリードリヒが現れ国の世継ぎであるゴットフリートが行方不明になっていることを伝え、ゴットフリートの姉であるエルザにゴットフリート殺害の疑いをかける。国王はこれに対して一騎打ちの決闘で決着を付けるように言い、エルザは自身の代わりとして戦う騎士に夢の中で出てきた「白馬の騎士」を指名する。するとその場に現れたのは夢の中に現れた「白馬の騎士」であるローエングリンだった。


 というのがオペラ本編の冒頭である。今回演奏される「エルザの大聖堂への行列」は、第2幕第4場で婚礼の式のために礼拝堂へと向かうエルザの場面で演奏される音楽である。冒頭のフルートによって奏でられる美しい旋律によって全体のダイナミクスが徐々に大きくなっていき、最終的にはトロンボーンを筆頭とする金管楽器群による豊かな音色からなる咆哮によって頂点を迎える。これらの曲は単品で聴くのも良いがこう言うオペラ作品からなるオペラ本編を聴くことにこそ背景もわかると思うので、ぜひ一度オペラ本編を聴いていただきたいところ。個人的にはルドルフ・ケンペ&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏は非常に素晴らしい名盤と感じている。




5.レスピーギ/木村吉宏編曲:交響詩「ローマの祭」








 レスピーギ作品の中でも代表作である「ローマ三部作」。交響詩「ローマの松」、「ローマの噴水」、「ローマの祭」「ローマの祭」の初演はアルトゥーロ・トスカニーニ&ニューヨーク・フィルハーモニックが行っており、日本初演は朝比奈隆&関西交響楽団(現:大阪フィルハーモニー交響楽団)が行っている。オーケストラによる作品だが日本では吹奏楽編曲版も盛んに演奏されている傾向にあり、毎年吹奏楽コンクールや演奏会で必ずと言ってもいいくらいに演奏されている。その分編曲版も複数あり今回演奏する木村吉宏編の他に森田一浩編、佐藤正人編などがある。今回演奏する木村吉宏編はかつてフレデリック・フェネル&東京佼成ウインドオーケストラも演奏で使用した編曲版となっている。


 各曲ごとに実際にローマで行われた祭りが描かれている。第1曲「チルチェンセス」は古代ローマ時代に行われた円型闘技場での見世物で、重罪人やキリスト教徒らが猛獣の餌食になる闘いが描かれる。第2曲「五十年祭」はロマネスク時代に行われた50年ごとに行われるカトリックの祭りで、巡礼者たちによってモンテ・マリオ丘を登り頂上に達した際「永遠の都・ローマ」を讃えて賛歌が歌われる。第3曲「十年祭」はルネサンス時代に行われたローマ郊外のカステッリ・ロマーニで行われた秋の葡萄の収穫を祝って行われた祭り。第4曲「主顕祭」はナヴォーナ広場で行われる主顕祭前夜の祭りがモチーフで、カトリック信者にとってもクリスマス以上に重要な行事とされている。踊り狂う人々や手回しオルガン、売り子の声、酔っ払った人などが強烈なサルタレロと共に絶え間なく演奏されるため混沌としている。


 これまで「ローマの祭」に関してはバティス&ロイヤル・フィル、バッティストーニ&東フィルといった爆演が個人的に決定盤として位置付けていたが、つい先日取り上げた若き日のバーンスタイン&NYP(ニューヨーク・フィルハーモニック)による演奏を聴き、「これこそ追い求めていた演奏だ!」と感じた。というのも第4曲「主顕祭」におけるトロンボーンソロは酩酊並みの酔っ払いなのに加えて、終結部手前のトランペットソロが最後の伸ばしで楽譜にはないフォルテピアノをした後にクレッシェンドをするという類を見ない演奏をしている。これまで何種類の「ローマの祭」を聴いたか正直わからないが、このソロこそ理想であると私は考える。Apple Music Ciassicalで聴くこともできるのでぜひオススメしたい。



・バッティストーニ&東フィル




・バティス&ロイヤル・フィル





 今回演奏する曲に関しては1曲あたりの情報量が大分多いためいつもよりも長文になったかもしれませんが、3回目の演奏会となるリコリス・ウィンドの演奏は3月23日に江戸川総合文化センター大ホールにて行われます。13時開場、14時開演となっています。ここまで人気曲から難曲まで演奏し尽くす演奏会は他にありません。ぜひ足を運んでいただければと思います。