アバドとルツェルン祝祭管はマーラーの交響曲を複数演奏している。そのうちCD化されたのは当盤くらいで、その他は映像として残されている。それらはYouTube等でも見ることができるようになっているのだが、今日におけるマーラー演奏において重要な名演であることは多くのクラシックファンはご存じのことと思う。
・ドビュッシー:交響詩「海」
録音:2003年8月(ライヴ)
・・・非常に濃厚かつ幻想的な「海」として聴くことができる今回の演奏。金管楽器の音色はまろやかであり、切れ味はそれほどないかもしれないが、その分弦楽器と木管楽器の存在感は非常に美しい感覚を味わえるようになっている演奏と言える。ライヴだからこそ味わえる臨場感を味方としたダイナミック・レンジの幅広さが功を奏する形となっており、ルツェルン祝祭管が奏でる演奏もバランスの取れていて伸びやかな音を奏でている。それとは別に、第3楽章終結部においてゴリゴリと演奏をする弦楽器や曲の終わりへと向かっていくオーケストラの一体感ある圧倒な演奏を聴くだけで多くのファンがしびれてしまうこと間違いない。
・マーラー:交響曲第2番「復活」
録音:2003年8月(ライヴ)
・・・アバドにとって、マーラーの交響曲第2番「復活」は非常に重要な作品である。ウィーン・フィルをはじめとして複数のオーケストラと録音を残したこともあって、その演奏は名演または名盤が多く存在している。もちろんマーラーの交響曲全集を完成させていることもあり、他の交響曲の録音も少なからず存在しているのだが、その中でも別格の人気を誇るアバドのマーラーこそ「復活」であると言える。今回の演奏は、円熟したアバドの伸びやかでたっぷりとした美しさ溢れる演奏を聴くことができるようになっており、テンポの緩急も確かに感じ取ることのできる素晴らしい演奏となっている。録音された時期として、晩年の演奏として数えられるがそこまでテンポも遅くなっておらず、ダイナミック・レンジの幅広さが功を奏しており、細部まで細かく聴き込むことができる。歌手や合唱の歌声も臨場感たっぷりに歌い上げられており、空間芸術を体現した演奏であるというように感じ取ることのできる「復活」となっている。