第1740回「ムラヴィンスキー没後36年、歴史的名盤であるチャイコフスキー後期三大交響曲」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日1月20日はエフゲニー・ムラヴィンスキーの命日です。今年で没後36年となります。そんな本日は、昨年2023年9月13日にタワーレコード企画の「ヴィンテージSACDコレクション」から復刻されたチャイコフスキーの後期三大交響曲とゲンナジー・ロジェストヴェンスキーによるチャイコフスキーの幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」、ハチャトゥリアンのバレエ組曲「ガイーヌ」を取り上げていきます。当盤はムラヴィンスキーの生誕120年記念企画として発売されたものとなっています。オーケストラはもちろんレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団による演奏です。


「エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団」

チャイコフスキー作曲:
交響曲第4番 ヘ短調作品36

交響曲第5番 ホ短調作品64

交響曲第6番 ロ短調作品74「悲愴」


「ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮/レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団」

チャイコフスキー作曲:
幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32

ハチャトゥリアン作曲:
バレエ組曲「ガイーヌ」より



 ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルによるチャイコフスキーの後期三大交響曲といえば、「エソテリック」からも復刻されているほどの名盤であり、それもSACDハイブリッド盤となっているが、何年も前に発売され現在では廃盤となっていることもあって3万円近くにまで値段が跳ね上がっている。それに一石を投じるかのように登場したタワーレコード企画の「ヴィンテージSACDコレクション」からなるSACDハイブリッド盤。今回はチャイコフスキーの後期三大交響曲だけでなく、ロジェストヴェンスキーによるチャイコフスキーの「フランチェスカ・ダ・リミニ」、ハチャトゥリアンの「ガイーヌ」が収録されている。


 今回の演奏は、ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルが1960年9月から11月にかけて行われた7カ国の演奏旅行中にロンドンとウィーンで「ドイツ・グラモフォン」によって録音されたものである。この時ロジェストヴェンスキーとチェロ奏者ロストロポーヴィチが同行している。


・チャイコフスキー:交響曲第4番

録音:1960年9月14〜15日

・・・エソテリック盤とは違う2023年最新マスタリングによるSACDハイブリッド盤となったタワレコ盤。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることにより、レニングラード・フィルが奏でる音色には厚みと多少の暖かさが加えられた印象で、これまで聴くことのできた尖ったダイレクトに聴き手へと流れ込んでくる音楽の姿ではない新しい姿を見ることができるようになっている。つまりは聴きやすいということなのだが、ただ聴きやすくなったわけではなく、ムラヴィンスキーのもとレニングラード・フィルによって演奏される圧倒的な統一感からなる強靭なアンサンブルと、一つの塊となって演奏される分厚い弦楽器群による音の波、特徴的な金管楽器の音色などが色褪せることなく生かされ、さらに強化されているというのが大きなポイントと言える。それによってテンポの緩急による各楽章ごとの変化であったり、細かいダイナミクス変化もわかりやすくなったと言えるだろう。いきなり度肝を抜かされる結果となったのは間違いない。


・チャイコフスキー:交響曲第5番

録音:1960年11月9〜10日

・・・各楽章ごとにおけるテンポの緩急もそうだが、勢いの良さは最初か最後まで衰えることなく演奏されている。爆発的なエネルギー量を体感できるような演奏となっており、2023年最新マスタリングによる効果のもとダイナミック・レンジの幅広さが増していることもあって演奏上の情報量は多い。特に第4楽章は終始いろいろな楽器の音が絶え間なく聴き手に浴びせられるため、音に埋もれてしまうような感覚を確かに感じ取ることができた。レニングラード・フィルによる強靭的な弦楽器による音色やオーケストラ全体の卓越されたアンサンブル、特徴的な金管楽器の音色など全てにおいて楽しめる要点が多い演奏であったと言える。


・チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

録音:1960年11月7〜11日

・・・聴き始めた瞬間に、どこかでこういう「悲愴」を待っていた自分自身がいることを思い出した。荒々しいとまではいかないものの、ぐんぐん進んでいくテンポの速さに怯むことなく演奏を行っている弦楽器を筆頭としたオーケストラ全体の壮大なるスケールからなる強靭的なアンサンブル。2023年最新マスタリングの効果もあって、ダイナミック・レンジの幅広さが増したことによる演奏は、深みのある重厚的なサウンドと重みを持った演奏となる。特に弦楽器の音色に関しては変幻自在と言うべきものとなっており、楽章ごとに柔軟性の高さが目を引くため想像している以上のインパクトを生み出すものとなっている。特徴的な金管楽器の音色すら心地良い気持ちにさせてくれる感覚を味わえるのは間違いない。


・チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」

録音:1960年9月16〜17日

・・・演奏時間は長く、たっぷりとしている分その世界観をじっくりと味わえるようになっているのは間違いない。レニングラード・フィルによる金管楽器のキレ味あるサウンドもそうだが、弦楽器の存在感は非常に素晴らしいものとなっており、ムラヴィンスキーとの後期三大交響曲に引けを取らないインパクトがある統一感からなるスケールと、強靭的なアンサンブルが存在している。ダイナミック・レンジの幅広さが増したことによってその明確なダイナミクス変化はよりわかりやすくなっているので、演奏時間が多少長かったとしても聴き飽きることはないだろう。


・ハチャトゥリアン:バレエ組曲「ガイーヌ」より

録音:1960年9月16〜17日

・・・ハチャトゥリアンの代表作である「ガイーヌ」。今回は抜粋となっている。抜粋されたのは、「剣の舞」、「子守歌」、「ヌネのヴァリエーション」、「山岳民族の踊り」、「ガイーヌのアダージョ」。冒頭から「剣の舞」で始まる勢いの良さもそうだが、各曲ごとにおけるテンポの緩急が明確となっており非常に素晴らしい演奏を聴くことができるようになっている。活発で爆発的なエネルギーを体感できるような演奏は「ガイーヌ」だからこそ味わえるような面があり、レニングラード・フィルが奏でるサウンドも普段聴くようなチャイコフスキーやショスタコーヴィチ作品の演奏とはまた違う聴こえ方をしていると言える。


 昨年末にかけて、タワーレコードからはムラヴィンスキーのライヴ録音が多数SACDハイブリッド盤となって発売された。今後少しずつそれらについても取り上げていきたいと考えているので、今回の名盤が良いタイミングで復刻されたと個人的には考えている。