第1731回「マルティノン/フランス国立管、INAベートーヴェン・ライヴ大集成」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

こちらはクラシック音楽のCDの名盤をレビューするブログです!
年間500枚以上クラシック音楽のCDを購入します。
好きな作曲家はマーラー、ストラヴィンスキー、ブルックナー、三善晃、ショスタコーヴィチなど
吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。



 みなさんこんにちは😃本日1月10日はフランスの指揮者ジャン・マルティノンの誕生日です。今年で生誕114年となります。そんな本日ご紹介していくのは、マルティノンとフランス国立管弦楽団が演奏したベートーヴェン演奏の数々を「INA」(フランス国立視聴覚研究所)の音源からCD化された貴重なライヴです。「Altus」創立20周年記念として発売された企画盤となっています。交響曲、劇音楽、協奏曲が収録された名演の数々をみていきます。


〜マルティノン/フランス国立管弦楽団 INAベートーヴェン・ライヴ大集成〜


[Disc 1]
「ジャン・マルティノン指揮/フランス国立管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
「レオノーレ」序曲第3番 作品72b

交響曲第3番 変ホ長調作品55「英雄」

[Disc 2]
交響曲第5番 ハ短調作品67

交響曲第7番 イ長調作品92

[Disc 3]
劇音楽「エグモント」作品84

[Disc 4]
交響曲第9番 ニ短調作品125

[Disc 5]
「ジャン・マルティノン指揮/フランス国立管弦楽団」

大フーガ 変ロ長調作品133(ワインガルトナー編曲)


「エリック・ハイドシェック(ピアノ)、クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)、ポール・トルトゥリエ(チェロ)、ジャン・マルティノン指揮/フランス国立管弦楽団」

ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲 ハ長調作品56

ロマンス第1番 ト長調作品40

ロマンス第2番 ヘ長調作品50



 貴重なマルティノンによるベートーヴェン演奏のみを収録した今回のライヴ大集成。全てステレオ録音でのライヴ音源ということもあって非常に楽しめる代物となっている。マルティノンによるベートーヴェンの交響曲は以前一度同じ「INA」からの音源で聴いたことがあるが、今回のライヴ大集成は普段聴くベートーヴェン像とは違うスケール感をたっぷりと味わえる名演が多数収録されている。


[Disc 1]

・ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第3番

録音:1969年3月12日(ライヴ)

・・・フランス国立管によるサウンドとは思えないような鋭さと統一感のある演奏となっており、抜群の機動力を演奏から聴くことができるようになっている。各楽器における演奏も明確な芯を聴くことができるようになっているため、ハッキリとした旋律を聴くことができるというのも良い点である。弦楽器群によるまとまりが特に強く、圧倒的な音圧と共に奏でられるサウンドには大きな魅力を感じると言えるだろう。


・交響曲第3番「英雄」

録音:1970年1月28日(ライヴ)

・・・活発で明確な演奏を聴くことができるようになっているが、透明度の高い明瞭さが演奏から聴くことができるようになっているため、普段聴く「英雄」よりも全体的に明るさが極まっているようにも思える。テンポの緩急に関しても各楽章ごとに細かく演奏が行われており、「緩→急」へと変化した際のエネルギッシュさや盛り上がりはライヴならではの臨場感も重なって非常に素晴らしい仕上がりとなっているのは間違いない。


[Disc 2]
・交響曲第5番
録音:1970年3月11日(ライヴ)
・・・往年の時代によく聴き慣れた交響曲第5番の姿がこの録音にはあり、壮大かつたっぷりときかせた演奏を行なっているフランス国立管のベートーヴェンを堪能することができるようになっている。コンパクトに演奏されているわけではなく、一つ一つを明確なダイナミクス変化で豪快さと爆発的なエネルギーを持って演奏をしている分一貫性が生まれている。まとまりのある弦楽器群の存在感にも注目したい演奏だ。

・交響曲第7番
録音:1970年2月11日(ライヴ)
・・・テンポの緩急と細かいダイナミクス変化や明瞭さのある明るいサウンドが非常に功を奏する形となっている今回の演奏。どの楽章も印象的な部分は多く、推進力もあるので聴いていて活発さを感じ取りやすい演奏であることは間違いないだろう。各楽器によって奏でられる美しい旋律は軽やかでいて重さもないが、インパクトを体感するには充分であり、聴きやすい。最初から最後まで一貫性のある交響曲第7番となっているのも間違いないので、交響曲第5番とセットで楽しめるライヴである。

[Disc 3]
・劇音楽「エグモント」
録音:1970年2月25日(ライヴ)
・・・普段「エグモント」を聴く際は、序曲のみ聴くことが多いため、劇音楽としての「エグモント」は毎回聴くたびに新鮮味を感じることができるので非常に面白い。今回の演奏に関しては、ライヴでもあるので空間が広くなっており、臨場感と奥行きを明確に楽しむことができる。実際にその場にいるような感覚となるため非常に楽しめる演奏であることは間違いない。歌手のセリフに関しても聴きやすく、ハッキリとしている面が強いため演奏にも集中しやすい。研ぎ澄まされ、透き通るような弦楽器が功を奏する形となっているのは何回聴いても飽きない。

[Disc 4]
・交響曲第9番「合唱付き」
録音:1970年2月25日(ライヴ)
・・・非常に安定感のある「第九」となっており、明確なテンポの緩急はあるもののスリリングなところまで大きな差を付けて演奏しているわけではない。オーケストラのみで演奏されている際の細かいダイナミクス変化はどの楽章でも衝撃的なものとなっていて、歌手や合唱が加わってからの壮大なるスケール感やライヴならでの臨場感があるため非常に美しい造形が完成している。音の抜けも良いため普段聴き慣れたどっしりとした「第九」ではなく、透き通るような透明度の高さが重視された演奏ということもあって、どこか珍しさすら感じる仕上がりであった。

[Disc 5]
・大フーガ(ワインガルトナー編)
録音:1970年3月11日(ライヴ)
・・・弦楽による美しい世界観を体感できる今回の演奏。ワインガルトナー編も随分前に聴いたのみで、大分久しぶりに今回聴いた。オーケストラ全体における一体感の良さと重厚的で分厚い、濃厚なスケールをたっぷりと味わえるのは非常に素晴らしいと言えるだろう。テンポの緩急も明確になっており、細部まで細かく聴き込むことができるため、ダイナミクス変化もわかりやすく作り込まれている。

・ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲
録音:1970年3月11日(ライヴ)
・・・ステレオでのライヴということもあって音質は明瞭かつ非常に美しい高音質さとなっている。そのため、ヴァイオリンとチェロ、ピアノによる技巧やアンサンブルをたっぷりと味わうことができるようになっている。テンポの緩急に加えて細かいダイナミクス変化が演奏からは感じ取ることができるようになっているため、それぞれの独奏やオーケストラとのサウンドバランスなど非常に素晴らしい仕上がりとなっている。個人的にはハイドシェックによる透明度の高いピアノの音色が非常に好みであることがよくわかった。

・ロマンス第1番、第2番
録音:1970年3月11日(ライヴ)
・・・クリスチャン・フェラスによる演奏を聴くのは、以前取り上げたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲以来のことだが、聴いているだけで生まれるこの安心感と言おうか。濃厚かつ分厚いスケールを聴いていて楽しむことができるようになっている。第1番、第2番それぞれをセットで聴くからこそ非常に素晴らしい効果を体感できるというもの。演奏からはどこか余裕すら感じることのできる演奏があり、安定感もあるため新しい感覚を味わえるようになっているため、聴いていて非常に楽しい演奏であった。

 マルティノンによる録音のほとんどはフランス音楽を中心にこれまで聴いていたが、今回のベートーヴェンのステレオ・ライヴはどの曲も比較的に楽しめる演奏ばかりだった。「Altus」創立20周年記念として完全限定生産されたライヴ大集成のため、在庫限りとなるかもしれないが、ぜひ一度ご視聴いただきたい名演ばかりであることは間違いない。