「カール・ベーム指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」
モーツァルト作曲:
交響曲第39番 変ホ長調 K.543
交響曲第40番 ト短調 K.550
交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」
「ベーム/デッカ&フィリップス録音全集」では、「ニーベルングの指環」やブルックナーの交響曲第3番、第4番などの名盤に加えて、それよりも前に録音された貴重な演奏の数々が収録されている。今回のコンセルトヘボウ管とのモーツァルト後期三大交響曲もそのうちの一つである。現在では1枚のCDで再販されること自体ほとんどない代物となってしまったが、こうしたBOXにて手に入れることができるようになっているのは非常に嬉しいことである。
・モーツァルト:交響曲第39番
録音:1955年9月
・・・モノラル音源であったとしてもベームによるモーツァルト演奏の解釈を、明瞭かつ明るさのあるサウンドを奏でることのできるコンセルトヘボウ管が演奏していることもあって、ウィーン・フィルやベルリン・フィルによるモーツァルトとはまた違う素晴らしいモーツァルトを聴くことができるようになっている。濃厚であり、まとまりがあるコンセルトヘボウ管の演奏で、この時代における良さが全楽章共通して楽しむことができるようになっているのは非常に大きなポイントと言える。重々しさは一切なく、軽快かつ牧歌的な音色とスッキリとした後味と響きを体感することができるようになっているので、聴いていて面白い演奏であると言える。
・交響曲第40番
録音:1955年9月
・・・キレ味の鋭さが明確となった非常に素晴らしい交響曲第40番。弦楽器群のまとまりある分厚いサウンドは非常に素晴らしく、押し寄せる音の波が聴いていて清々しさを感じさせてくれるかのような演奏となっている。圧倒的な統一感の取れた演奏となっているため、短調であることを生かしたダイナミクス変化も効果的に描かれている。
・交響曲第41番「ジュピター」
録音:1955年9月
・・・研ぎ澄まされた感覚と清々しさすら感じることのできる明瞭さのある明るい演奏。後のウィーン・フィルの演奏にも通じるような演奏を聴くことができる部分も隠されているため、最初から最後まで聴いていてこれほどまでに楽しい演奏であったことは間違いない。弦楽器の木管楽器による一体感のあるサウンドからなるテンポの緩急は非常に素晴らしい。この時代だからこそ味わえる音色と響きもあるので、繰り返し聴いてじっくりとベーム&コンセルトヘボウ管による「ジュピター」をたっぷりと堪能することができる。
ベームによるモーツァルトの交響曲録音の中でも比較的に古い録音の部類に入る今回の後期三大交響曲。「ベーム/デッカ&フィリップス録音全集」では他にも何種類かベームのモーツァルト作品が収録されているので、また取り上げたいところである。後のウィーン・フィルやベルリン・フィルとの録音含めて非常に素晴らしい演奏を楽しむことができるのはどのマニアにとってもうってつけであることは間違いない。