アルヘンタはスペインの指揮者で、指揮法をカール・シューリヒトに学んでいる。フルトヴェングラーとも親交があり、ジャンルは様々な曲を多く指揮しているが、特にファリャ作品が大きな注目を集めていると言えるかもしれない。そんなアルヘンタは11月19日に生誕110年を迎えた。当盤はその記念企画である。
・ベルリオーズ:「幻想交響曲」
録音:1957年11月11〜13日
・・・演奏として、第1楽章〜第3楽章、第4楽章〜第5楽章という区分けができるような世界観となっているアルヘンタの「幻想交響曲」。第1楽章〜第3楽章ではややテンポの重さを感じながらも優美さや自由度の高い演奏を聴くことができるようになっている。各楽器における音色に関しても変幻自在といったところで、柔軟性を感じることができるのは間違いない。第4楽章〜第5楽章で共通しているのはパリ音楽院管特有の金管楽器による特徴的な音色を楽しめるようになっている。それに合わせて弦楽器や木管楽器の音色にもどこか荒々しさが加わるため、物語の終わりへと畳み掛けるように曲が進行していく。そして、第4楽章はこの時代としては珍しくリピートありで演奏されているのでその点としても聴く価値は大いにあると言える。
・ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」1919年版
録音:1956年10月29,30日、11月10日
・・・アルヘンタの「幻想交響曲」がメインとはいえ、モントゥー&パリ音楽院管によるストラヴィンスキーの「火の鳥」がおまけというわけではない。この時代でいえば「火の鳥」の録音はまだまだ数少ないわけだが、モントゥーによる「火の鳥」はストラヴィンスキーの三大バレエ完成の大きな礎となった。演奏を聴いてみると、まだまだ不完全的な部分は要所要所隠されているのだがオーケストラ全体が崩れるほどになっているわけではない。荒々しい野生的な金管楽器とぐんぐんと進んでいくエネルギッシュさと幻想的な音色の弦楽器による柔軟性のある演奏は聴いていて素晴らしい。ノイズも含めて2023年最新マスタリングが施されたこのダイナミック・レンジの幅広い世界観は、聴いていてうっとりとさせられる面が多い。
ここ最近ベルリオーズの「幻想交響曲」を聴く頻度が一気に増えた気もするがアルヘンタによる「幻想交響曲」はまた違う世界を見ることができたので、非常に楽しむことができた演奏だった。2023年最新マスタリングが施されたSACDハイブリッド盤であることもあって、その恩恵は非常に大きいと言える。アルヘンタによる録音は今回初めて聴いたが、モントゥー含めてまだまだ聴いたことがない録音ばかりなので、引き続き2人のCDは集めていきたいと思う。
https://tower.jp/item/5872625/ベルリオーズ:-幻想交響曲、ストラヴィンスキー:-バレエ《火の鳥》組曲<タワーレコード限定>