当盤は、1954年5月23日におけるライヴとなっており、これまでに「ターラ」や「アウディーテ」など様々なレーベルより発売されている。加えてSACDシングルレイヤーも発売されていることもあって音質も様々な現状となっている。今回は日本フルトヴェングラー協会創立20周年記念頒布された通常CD盤となっている。しかし、その人気は凄まじく、現在では10000円を超える値段でディスクユニオン等で購入することができる。加えて中々手に入りづらい盤となっているため、稀少価値は非常に高い代物として知られている。
・ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
録音:1954年5月23日(ライヴ)
・・・他の盤で聴くことができる重厚感を足したマスタリングとは違い、それよりもオーケストラ全体のサウンドを豊かに、かつクリア感のある美しさ溢れる「田園」を聴くことができる。各楽器ごとによるダイナミクスのバランスも非常に良く、テンポ自体もそれほど遅いわけではない。弦楽器と木管楽器を筆頭として美しい豊かな音色と響きを合わせて聴くことができるので、どの演奏の中でも特に素晴らしい名演として楽しめる。他の盤と比べると明らかにノイズの量は少なくはないかもしれないが、それによって純粋な音をそのままダイレクトに聴くことができるので、非常に質の良い演奏であることがよくわかるはずだ。
・交響曲第5番
録音:1954年5月23日(ライヴ)
・・・「田園」ではノイズもあったが、第5番に関してはほとんど気になることのないくらいの鮮明感となっており、非常に優れた演奏を聴くことができた印象である。テンポに関してはやや遅くなっているものの、重みのある演奏となっているわけではない。細部まで細かくこだわり抜かれた非常に安定感のある第5番であるといったところだろうか。第3楽章から第4楽章へと向かっていく際のダイナミクスはいつ聴いても鳥肌が立つし、ガツンとした重厚感をベルリン・フィルで味わうことができるのは非常に嬉しいかもしれない。個人的にはこの第5番は大分好みな演奏だ。
以前から何種類かの盤を聴いているわけだが、今回のベートーヴェンの交響曲録音は非常に楽しめる演奏だったことに間違いはない。後日他の盤も含めて聴き比べてみたいところである。また、来年2024年はフルトヴェングラーの没後70年という年になる。今年も残すところ1ヶ月ほどとなったが、2023年を最後まで楽しんで2024年を迎えたいと思う。本日タワーレコードにて発売となる「King International」との共同による「フルトヴェングラーライヴ録音大集成」に関しても購入するかはまた検討をしていきたいところだ。