ラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」は、ラヴェル作品の中でも代表格として多くの人々に知られている名曲中の名曲である。バレエ音楽の他に第1組曲、第2組曲があり、特に第2組曲は頻繁に演奏される回数が多い。日本でもオーケストラのみならず、吹奏楽編曲され毎年吹奏楽コンクールや演奏会で学生や楽団問わず演奏を行なっている。私も高校時代に吹奏楽コンクールの自由曲として候補の一つにあがったので、一時期練習したこともあった。その際最終的にはレスピーギの「シバの女王ベルキス」が自由曲となった。ちなみに他の候補曲には、ドビュッシーの交響詩「海」も含まれていた。
・ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」
録音:2022年12月7〜9日
・・・2020年におけるパンデミックの際、多くの人々や音楽家たちはロックダウンによって不要普及の外出は控えることとなった。ジョン・ウィルソンはその際、「ダフニスとクロエ」の改訂作業を行なっており、フルスコア、パート譜、ピアノ編曲版、合唱スコア、手書き譜など多くの資料を集めた。パート譜を見ていくと、作曲当時にリハーサルでの変更がパート譜がスコアへと引き継がれていない点などがあった。それらを徹底的に研究して完成したのが今回の新校訂版である。
ジョン・ウィルソンとSOLによるラヴェルの管弦楽曲集が発売された時点で、「ダフニスとクロエ」を演奏してくれないものかと多くの人々が考えたことだろう。そしてそれは実現されたわけだが、SACDハイブリッド盤の高音質フォーマットとなっていることもあって、細部まで細かく聴き込むことができる。加えて各楽器や合唱などを透き通るくらいの美しい音色と歌声で聴くことができるようになっている。幻想的かつロマンティックなサウンドと細かいダイナミクス変化によって、これまでに聴いたことがない部類の「ダフニスとクロエ」と言えるかもしれない。後味がスッキリとしていることによる恩恵が非常に大きいだろうか。また、オーケストラ全体としても輪郭がハッキリとしたサウンドとなっていることも明確さを生み出しているので、多くの人々が楽しめる演奏であることは間違いない。
個人的には、第1組曲や第2組曲で「ダフニスとクロエ」を聴くのも良いが、やはりこの物語を堪能するのであれば、バレエ音楽による全曲版で最初から最後までたっぷりと堪能するのが良いと考える。これまでクリュイタンスやミュンシュ、ジョルダン、ロトなど多くの指揮者たちによる「ダフニスとクロエ」を聴いてきた。どの演奏も非常に理想的であり、美しい世界観と物語を楽しむことができたが、ジョン・ウィルソンによる「ダフニスとクロエ」もその中に加わることは間違いないだろう。ラヴェル好きな人にもぜひ当盤は聴いてほしいと私は考えている。
https://tower.jp/item/6187028/ラヴェル:-バレエ音楽《ダフニスとクロエ》全曲-(ジョン・ウィルソンによる新校訂版)
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