第1544回「マーラー生誕163年、マーラー編曲によるベートーヴェンの交響曲3曲」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日7月7日は七夕ですが、グスタフ・マーラーの誕生日でもあります。今年で生誕163年となります。そんな本日ご紹介していくのはマーラーによる編曲版聴くベートーヴェンの交響曲第5番、第7番、第9番「合唱付き」です。マーラーは自身の交響曲や歌曲だけでなく、ベートーヴェン、シューマン、シューベルトの交響曲なども編曲しています。今回はその中からベートーヴェンの代表的な交響曲を3曲新しい姿となった演奏をみていきます。


「ペーター・ティボリス指揮/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲、マーラー編曲:
交響曲第5番 ハ短調作品67

交響曲第7番 イ長調作品92




「クリスチャン・ヤルヴィ指揮/ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲、マーラー編曲:
交響曲第9番 ニ短調作品125



 いわゆるマーラー編曲による交響曲録音は多いわけでもなく、稀少価値の高い名盤というのが正しい。CDとしては今回取り上げるベートーヴェンの交響曲第5番、第7番、第9番「合唱付き」だけではなく、シューマンの交響曲全集、シューベルトの交響曲第8番「ザ・グレイト」などが残されている。「ザ・グレイト」に関してはまだ手に入れられていないのでまた探したいところだが、シューマンの交響曲全集はそのうち取り上げようと思っている。


 作曲家だけでなく指揮者でもあったマーラーは、生前「第九」を10回ほど指揮したとされている。それ以外にも有名なのは歌劇「フィデリオ」における第2幕第2場の前に「レオノーレ」序曲第3番を加えて演奏するということも行なっている。この流れに関しては最近は減りつつあるが、フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュによる録音では採用されている流れである。楽器の技術的な進化もあるのだろうが、その時代に合わせた音楽のあり方というものをマーラーは編曲を行なって体現していたのかもしれない。しかし、現在に聴くことができるような未完成作品の補筆版が賛否分かれているように、マーラー編曲版によるベートーヴェンも全てが好評だったわけではない。第7番に関しては比較的に好評だったが、第5番や第9番は大きく賛否両論が分かれたという。


・ベートーヴェン:交響曲第5番(マーラー編曲版)

録音:1993年6月

・・・ベートーヴェンにおける代表的な作品の一つだが、今回マーラーによって編曲されたことによってより一層分厚さと大きな重厚感溢れる演奏へと変化している。オーケストラ全体の編成としても近年演奏されているピリオド楽器や室内楽編成と比べても倍以上の大オーケストラとしての姿を見ることができるくらいになっている。それもあってか機動力や推進力が全面的に押し出されているような感覚はなく、ややテンポは遅めであり幅広く伸びた音色と

余裕すら感じるような響きを演奏から通して聴くことができる。アタックやアーティキレーションなどは比較的に緩やかなものとなっており、筋肉質や攻撃な印象は基本的に受けることはない。楽章によるが、ピッコロのオクターヴをあげてフルートで補強したりファゴット4本に対してチェロを加えたりと自由にしている印象。しかし、それによって今日におけるベートーヴェンとは違うさらに太さを増しつつも壮大さからなるスケールを全面的に味わえるように大きな変化がもたらされていると言えるだろう。


・ベートーヴェン:交響曲第7番(マーラー編曲版)

録音:1993年6月

・・・軽快かつ煌びやかで優雅な音色や響きを奏でているこの曲。マーラーの手によってベートーヴェンの意図を含めながらも、一味違う面白い演奏を聴くことができるようになっている。例えば第1楽章におけるホルンが演奏する第1主題がトランペットに置き換えられている。この時ホルンは伴奏を演奏している。それ以外には第5番同様にオクターヴを上げたりしているものの、楽章によっては弦楽器奏者を減らして演奏したりしている。それによって生み出される効果が素晴らしい。第2楽章では弦楽器による分厚い土台を作り出されているのもそうだが、木管楽器がより引き立つようにも手が加えられており、倍管にしている。また、第4楽章における木管楽器とホルンによる旋律がこれまで違っていたのに対して、ホルンも木管楽器と同じ旋律を演奏することが現在としてできるようになっているのでその点の違和感をなくしているというのも大きな驚きとなった点である。演奏としてテンポの緩急が第5番よりも明確になっている印象で、第1楽章から第2楽章までは比較的に穏やかかつ緩やかな音楽の流れを感じ取ることができ、第3楽章から第4楽章ではやや引き締められたような鋭さも多少ありつつオーケストラ全体が前向きに進められている。それに加えてマーラーによる変化がこの曲の新しい世界観を楽しむことができるようになっている。


・ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(マーラー編曲版)

録音:2006年9月29日、10月1日(ライヴ)

・・・クリスチャン・ヤルヴィ絡みでいえば、同じ時期にパーヴォ・ヤルヴィがドイツ・カンマー・フィルハーモニーブレーメンとベートーヴェンの交響曲全集を完成させている。その中でマーラー編曲版を演奏しているというのは、対照的な面を持つ演奏とも取れる。演奏として、第1楽章と第2楽章は比較的に前向きかつ、推進力溢れるエネルギッシュな早いテンポで演奏が行われている。その中で細かいオーケストレーションの変更が行われており、オクターヴ増強などがあるが、特にわかりやすいのは第2楽章における演奏をトランペットも木管楽器などに加わって演奏を行なっているのは非常にカッコよく聴こえる。また、オーケストレーションによる増強ばかりではなく、楽章によっては数を減らして新しい音響効果をもたらしている瞬間もあるのでこれは中々に面白い演奏というように聴き取ることができる。第3楽章も比較的に早めのテンポで進められていくが、美しい音色と響きを奏でているダイナミクスや演奏であること変わりない。後味もスッキリとしていて、より研ぎ澄まされつつも色鮮やかな演奏と聴こえるだろう。そして合唱が加わる第4楽章はより一層自由に、かつ壮大なスケールを持って演奏が行われている。細部まで細かく聴き込むことができると同時に、SACDハイブリッド盤であることによるダイナミック・レンジの幅広さが生かされた素晴らしい世界観が広がっている。合唱とオーケストラによる一体感の素晴らしさは非常に素晴らしいため、鳥肌が立つくらいに圧倒されてしまうことは間違いない。


 今回の録音に関しては、交響曲第5番、第7番ともに世界初録音となっており、第9番「合唱付き」に関しては「新クリティカル・マーラー・エディション」として国際グスタフ・マーラー協会の公認を得たものによる世界初録音となっている。「第九」のマーラー編曲版に関しては古い録音でいえばスタインバーグによるベートーヴェン交響曲全集に収録されている「第九」がマーラー編曲版だったりするので気になる方はぜひ。


 マーラーの交響曲だけでなく、マーラーによる編曲されたベートーヴェンやシューベルト、シューマンの交響曲などを聴くことによってより新しい世界観を体感することができると同時に、歴史おけるその時代ごとの音楽を楽しむことができるようにも感じた。マーラー編曲版によるCDに関しては今後もマーラーの交響曲CDと並行して集めていきたいと思っているので、仮に見かけることがあればぜひ一度ご視聴していただければと思う。


https://tower.jp/item/208147/ベートーヴェン(マーラー版)


https://tower.jp/item/2828999?kid=gs2828999