第1543回「クレンペラー没後50年、旧EMIに残されたブルックナー交響曲選集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

こちらはクラシック音楽のCDの名盤をレビューするブログです!
年間500枚以上クラシック音楽のCDを購入します。
好きな作曲家はマーラー、ストラヴィンスキー、ブルックナー、三善晃、ショスタコーヴィチなど
吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。



 みなさんこんにちは😃本日7月6日はオットー・クレンペラーの命日です。今年で没後50年となります。そんな本日ご紹介していくのは、クレンペラーが「旧EMI」に残したブルックナーの交響曲選集です。フィルハーモニア管弦楽団、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団と録音された演奏で、交響曲第4番〜第9番までの計6曲を収録しています。2019年12月にタワーレコードから復刻されたもので現在では廃盤となっていますが、非常に価値のある代物と言えるでしょう。以前当ブログでも取り上げたことがありますが、一曲ずつ取り上げられていなかったので今回は一曲ずつみていきたいと思います。


「オットー・クレンペラー指揮/フィルハーモニア管弦楽団」

ブルックナー作曲:
交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」(1878/80年ノヴァーク版)

交響曲第7番 ホ長調(1885年ノヴァーク版)


「オットー・クレンペラー指揮/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団」

交響曲第5番 変ロ長調(1878年ノヴァーク版)

交響曲第6番 イ長調(1881年ハース版)

交響曲第8番 ハ短調(ノヴァーク版)

交響曲第9番 ニ短調(1884年ノヴァーク版)



 クレンペラーは「旧EMI」に数多くの録音を残した。ベートーヴェン、モーツァルト、そしてマーラーの録音などが特に知られているが、ブルックナーの交響曲に関しても1960〜1970年にかけて録音が残されてる。今回取り上げる交響曲選集は交響曲6曲を収録している。クレンペラーによるブルックナーはあまり知られていないかもしれないが、今回収録されてる交響曲はどれも重量級であり最高のブルックナーを楽しめる名盤となっているのは間違いないだろう。2019年にタワーレコード企画の「Definition SACD Series」にて1000セット限定復刻となった代物である。現在では廃盤となっているため手に入れづらいのだが、第6番以外世界初SACD化となっているので目が離せないブルックナーとなっている。


・ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

録音:1963年9月18〜20、24〜26日

・・・比較的に前向きで推進力のある演奏で、金管楽器の存在の大きさが目立つ。特に第1楽章、第3楽章や第4楽章での頂点における決め所を逃さない演奏は、非常に大きなスケールと圧倒的な音圧を展開している。2019年最新マスタリングが施されたSACDハイブリッド盤ということもあってダイナミック・レンジの幅広さが功を奏する形となっている。オーケストラ全体としても伸びやかなスケールよりも、やや引き締められた固いサウンドが展開されている印象が強く、細部まで細かく作り込まれている。映画音楽を聴いているような爽快感と感動が味わえる演奏と言えるかもしれない。今回の交響曲選集の1曲目としてふさわしい演奏である。


・交響曲第5番

録音:1967年3月9,11,14,15日

・・・テンポの緩急におけるメリハリが明確化されており、その差が非常に大きくひらいている印象を受ける今回の第5番。それによって金管楽器や弦楽器によるサウンドがやや固めの筋肉質で引き締まった演奏を聴くことができるようになっている。特に「緩→急」へと変化した際のダイナミクス変化や加速が凄まじく、巻き返しとしても非常に驚かされる演奏となる。「急→緩」になった際には木管楽器と弦楽器によって優雅ながらに研ぎ澄まされた美しい音色を奏でながらややキレを残した状態で演奏を行うようになっているので、聴いていて非常に面白い。難解に近い対位法が駆使されてる交響曲だからこそこのアプローチが適しているのかもしれない。


・交響曲第6番

録音:1964年10月6,10〜12日、11月16〜19日

・・・やや重心が低くなり、重々しい重厚的なサウンドが特徴的な演奏という印象を持つことができる今回の演奏。もちろん加速によるテンポの変化もあるが、オーケストラ全体が芯のある骨太な演奏を展開しているためテンポの緩急を大きく感じ取ることはあまりできないかもしれない。低弦及び弦楽器の存在感は非常に凄まじく、各楽章ごとに演奏スタイルを変えているが、基本として引き締めらた固い音色がこの美しい交響曲第6番をより新しい世界観へと導いてくれる。


・交響曲第7番

録音:1960年1〜5日

・・・各楽章においてたっぷりと幅広くとられたスケールを味わえるような世界観が作り込まれている今回の第7番。テンポに関しては細かい溜めが頻繁にあるため、それがある度に重厚感たっぷりとなる。他の交響曲録音同様に活気と固いサウンドで演奏される金管楽器の存在は変わらずあるのだが、統一された弦楽器による変幻自在の音色と透明度のある軽快さが目立つ木管楽器が非常に素晴らしい。金管楽器に関しては中低音が分厚く演奏が行われているため、ダイナミック・レンジの幅広さが増した際に非常に太く分厚いサウンドを聴くことができるようになっているのは間違いない。


・交響曲第8番

録音:1970年10月29,30日、11月2〜4,10,11,14日

・・・今までブルックナーの交響曲に関してはマーラーの交響曲ほどではないがそれなりの数を聴いてきた。その中でも今回の交響曲第8番はトップになるくらいの重量感と分厚いスケールによる演奏と言えるだろう。というのも、今回の演奏に関しては第1楽章から第4楽章まで比較的にテンポは遅めで重心も低い状態で演奏が進められていく。それによってこの長大な交響曲が、さらに大きなスケールを持つ形となる。これは2019年最新マスタリングが施されたことによるダイナミック・レンジの幅広さによる影響も少なからずあるのではないだろうか?また、テンポが遅い演奏ということによって若干ほころびも生じているが、重々しさを常に感じるかと言われるとそうではない。特に弱奏部分に関しては軽快であり、美しい音色を各楽器ごとに奏でているのがよくわかる。もちろん第4楽章冒頭の金管楽器による演奏は圧倒的なまでの音圧によるインパクトを体感できるのは言うまでもないだろう。


・交響曲第9番

録音:1970年6,7,18,21日

・・・今回の演奏に関してはたっぷりとした幅広さではなく、芯のあるサウンドからなる明確な演奏という印象を受けるかもしれない。ダイナミック・レンジに関しては2019年最新マスタリングが施されたことによってより一層臨場感を増した姿を見ることができるわけだが、大きな音圧に繋がったかというとそうではない。第2楽章におけるトゥッティは引き締められており固いサウンドで攻め込んでくる。それがいつも聴きなれた第9番とは違い、一味違う面白さを実感することができる演奏と言えるだろう。


 クレンペラーといえば6月に「ワーナークラシックスリマスターエディション」(シンフォニック&協奏曲作品録音全集)が発売されたばかり。95枚のCDが収録されていることもあって値段は高めだが、「旧EMI」に残されたクレンペラーの貴重な録音を余すことなく楽しむことができる。このBOXにはもちろん今回取り上げたブルックナーも収録されているので、タワーレコード限定のSACDハイブリッド盤が手に入りづらければこちらを購入しても良いかもしれない。またいずれ当盤に関してもタワーレコードから再発売してほしいところである。


https://tower.jp/item/4991070/ブルックナー:-交響曲第4-9番<タワーレコード限定>