クナによるオペラ録音といえばワーグナー・オペラを連想することが多いと思うが、今回のようにベートーヴェンのオペラなども演奏している。クナによる「ウエストミンスター」に残された録音はこの「フィデリオ」から始まっており、後にブルックナーの交響曲第8番やワーグナー管弦楽曲集など今でもなお愛されている名盤が録音された。
・ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」
録音:1961年12月
・・・クナによる複数のオーケストラと演奏したベートーヴェンの交響曲や管弦楽曲録音に関してはこれまで何度か聴いてきたが、クナの「フィデリオ」オペラ本編は今回初めて聴くこととなる。歌手や合唱は以下の通り。
・レオノーレ:セーナ・ユリナッチ(ソプラノ)
・フロレスタン:ジャン・ピアース(テノール)
・マルツェリーネ:マリア・シュターダー(ソプラノ)
・ヤキーノ:マレイ・ディッキー(テノール)
・ドン・ピツァロ:グスタフ・ナイトリンガー(バス)
・ロッコ:デジュー・エルンスター(バス)
・ドン・フェルナンド:フレデリック・ギュトリー(バス)
・囚人1:ゲオルグ・パスクダ(テノール)
・囚人2:パウル・ノイナー(バス)
バイエルン国立歌劇場合唱団
演奏として、多少のノイズや音質上での不安定さは多少あるものの重厚的で重々しい雰囲気ながら聴きごたえのある壮大な世界観が広がっている。ダイナミック・レンジの幅広さも多少多く感じられるため、往年の時代を感じさせるようなものではない。バイエルン国立管の安定感のある音色と荘厳的な音色、響きはクナとの相性も非常に良いように聴くことができるようになっており、豪華な歌手陣の圧倒的な歌声がより一層引き立っているように感じられる。芯のある歌声でいて伸びやかなその歌声は聴いていてただただ圧倒される。また、第二幕にはマーラーが「フィデリオ」を演奏する際に加えた「レオノーレ」第3番も演奏がされているのでより一層重厚的でやや暗めなサウンドながら聴き手に活気ある演奏を聴かせることができるようになっている。
クナの演奏は久しぶりに聴いたような気もしているが、以前聴いた「旧EMI」に残されたフルトヴェングラーによる同曲録音と同じように懐かしいサウンドに加えて力強さが備わっている。クナによる名盤、名演はまだまだ聴いていないものがあるので少しずつではあるがそれらも聴いていった上で取り上げられればと考えている。
https://tower.jp/item/4703063/ベートーヴェン:-歌劇<フィデリオ>(全曲)<タワーレコード限定>