ヨッフムとSKDによるブルックナー交響曲全集のSACDハイブリッド盤は2017年にタワーレコード企画の「Definition SACD Series」から復刻したが、すぐに廃盤になってしまったのとその人気によって中々市場にも出回ることはなかった。それが昨年12月10日に再プレス盤として復刻されたというのは非常に大きい。値段は割と高めの設定だったが、またすぐに廃盤になる可能性を考慮して早いうちに購入して今回演奏を聴いている。
・ブルックナー:交響曲第1番
録音:1978年12月11〜15日
・・・第1楽章からして中々の推進力と機動性を備えた躍動感を味わえる演奏だったと聴き始めた瞬間に驚かされた。各楽章ごとにテンポの緩急が備わった名演であることは間違い。何よりそれを感じさせるように第1楽章の終わりは畳み掛けるような怒涛の終わり方を迎えるのに加えて、第4楽章に入った瞬間の流れるような豪快感は聴くもの全てを圧倒すること間違いない。ヨッフムのブルックナーは晩年となると特にライヴ録音でよくわかるが、テンポが重々しく重厚的ではあるが分厚いサウンドを聴くことができる。今回のSKD(シュターツカペレ・ドレスデン)との演奏では、筋肉質で固いサウンドでいて芯のある音によって演奏されている。緩徐楽章となる第2楽章ではそのまま演奏するわけではなく、伸びやかで甘く各楽器の音色が非常に美しい形で演奏がされるような響きをたっぷりに聴くことができるようになっている。2017年マスタリングが使用されていることもあるのだろうが、ダイナミック・レンジの幅広さが増していて非常に聴きやすい第1番だ。
・交響曲第2番
録音:1980年3月4〜7日
・・・今回の演奏は非常にテンポの緩急が明確に演奏され分けてある。第1番と同様に躍動的でエネルギーを全身から感じることができるような推進力のある演奏を聴くことができる場面もあれば、柔軟性で落ち着きのある美しい音色をのびのびと演奏している美しい面も兼ね備えている。何よりもSKDの金管楽器による歯切れの良い圧倒的な音圧は聴いていて清々しさすら感じる。特にホルンやトロンボーンの音色は中々に素晴らしい。また、弦楽器を筆頭としてオーケストラ全体がやや筋肉質で引き締まったイメージを受けるのに加えて、ドイツのオーケストラらしい骨太でやや固めなサウンドがこの曲に対してぴたりと当てはまっているのを聴いていてよくわかる。いつもブルックナーの交響曲といえば後期三大交響曲などや第4番、第5番などに目がいきがちだが、第1番をはじめとして第2番の交響曲の凄みを改めて体感できるようになっている。
・交響曲第3番「ワーグナー」
録音:1977年1月22〜27日
・・・第1番、第2番と非常に筋肉質かつ躍動的な演奏を聴くことができたわけだが、今回はそれが多少柔らかくなって濃厚さと深みがプラスされている。それとしてもテンポの緩急は明確に変化するようになっており、細かいダイナミクス変化や各楽器の音色など細かいアプローチが行われている。その中でも金管楽器の存在は非常に大きいもので、「緩→急」に変わった瞬間の勢いとダイナミクス変化、群としての塊は凄まじく、圧倒的な音圧が生み出されている。
ヨッフムとSKDによるブルックナーの交響曲全集を聴いたのはいつぶりだったか覚えていないが、間違いなくこれは名盤たる大きな存在感を演奏から通して聴くことができるので、今でもなお人気のある理由がよくわかる。本日は第1番、第2番、第3番をみてきたので、明日は第4番「ロマンティック」、第5番、第6番の3曲を取り上げていきたいと思う。
https://tower.jp/item/5593554/ブルックナー:-交響曲全集(第1-9番)-(2022年シリアルナンバー無再発盤)<タワーレコード限定>