「ベームといえばモーツァルト」というイメージがついてしまっているくらいにベームによるモーツァルト演奏は格別なものであり、近年演奏されるピリオド楽器や室内楽編成での演奏とはまた形の違う美しさを聴くことができる。代表的なウィーン・フィルとの交響曲集やベルリン・フィルとの交響曲全集に始まり、オペラや協奏曲録音は今でもなお多くのクラシックファンに愛される名盤、名演となっている。
・モーツァルト:レクイエム
録音:1971年4月13〜14日
・・・ベームとウィーン・フィルによるモーツァルトの「レクイエム」はこれまでSACDシングルレイヤーをはじめとして、複数復刻されている。特にSACDハイブリッド盤に関しては今回のエソテリック盤に始まり、タワーレコード企画の「ヴィンテージSACDコレクション」、「ドイツ・グラモフォン」から発売されたSACDハイブリッド盤とSACDだけでも現在4種類存在している。私はSACD対応プレイヤーを持ち合わせていないのでSACDシングルレイヤーは持っていないが、それ以外の当盤含める3種類のSACDハイブリッド盤は所有している。
今回の演奏に参加している歌手や合唱に触れる。
エディット・マティス(ソプラノ)
ユリア・ハマリ(アルト)
ヴィエスワフ・オフマン(テノール)
カール・リッダーブッシュ(バス)
ウィーン国立歌劇場合唱団
合唱指揮:ノルベルト・バラッチュ
ハンス・ハーゼルベック(オルガン)
が演奏に参加している。エソテリック盤の演奏としてはやや固めのサウンドと残響ではあるが、芯のある音や歌声、太さなどがDSDマスタリングによって展開されていることもあってダイナミック・レンジの幅広さが増している。その中で骨太なサウンドと美しい音色からなる響きなどがある。ダイナミック・レンジの幅広さが増したことによる情報量の多さを明確に見極められるかは聴き手によって変わるかもしれないが、今回エソテリック盤を聴くにあたりタワーレコード企画の「ヴィンテージSACDコレクション」から発売されたSACDハイブリッド盤も合わせて聴いている。わかりやすくするためにタワーレコード盤とするが、骨太なサウンドとなっていたエソテリック盤に対して音の広がりからなる壮大なスケールと美しい音色の重なりがタワーレコード盤には備わっている。透き通るような美しい響きもそうだが、エソテリック盤を聴いていた際には聴き手を圧倒するような響きに満ちていた。これを踏まえると作品としての芯のある力強さを聴くことができたのはエソテリック盤で、透明度の高い美しさと安らぎを聴くことができたのはタワーレコード盤となっていることがよくわかる。
今回はエソテリック盤で復刻したベームとウィーン・フィルによるモーツァルトの「レクイエム」をみてきたが、久しぶりにこうして聴き比べをして胸が躍るようなワクワク感を味わうことができたので、個人的には非常に楽しかった。また何かしら聴き比べをしたいという気持ちにもなったと同時に、ベームによるモーツァルトを余すことなく聴くことができたと聴き終えた今は感じている。ベームによるモーツァルト録音でいえばまだ聴くことができていない演奏が多数存在しているので、今後そういった演奏に関しても手を出せたらと考えることができた。
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