フェドセーエフの生誕90年を記念して「Victor」で録音されたシリーズの第2弾となる今回のSACDハイブリッド盤での復刻。個人的には「1812年」が収録されているのは非常に嬉しいように思えたので即購入したわけだが、それ以外にも素晴らしい曲目となっているのでそれらを高音質盤で聴くことができるのは誰もが満足のいく形となっているのではないだろうか?
・チャイコフスキー:祝典序曲「1812年」
録音:1989年6月6〜9日
・・・ロシアのこともあって今中々演奏しづらい状態となってしまっている曲だが、ロシアの特徴的な金管楽器が非常に素晴らしく、鋭く攻撃的なサウンドはオーケストラ全体としても一貫性がある演奏である。テンポの緩急も明確なものとなっており、いつも聴き慣れた演奏とは違う快速的な面も合わせ持っていれば伸びやかでたっぷりとした演奏を聴くことができる面もある。それを演奏し分けている弦楽器群は中々に素晴らしい。また、終盤に登場する大砲の威力も中々なもので深みのある音となっている。
・ハチャトゥリアン:バレエ「ガイーヌ」より剣の舞
録音:1989年6月6〜9日
・・・シロフォンと弦楽器、木管楽器よりもティンパニとトロンボーンの音が強すぎる印象を受けなくもないなんとも強烈なインパクトを受ける「剣の舞」となっている。サックスの色気とどこか癖の強い音色が聴いていて非常にグッとくる演奏だった。SACDハイブリッド盤となったことによるダイナミック・レンジの幅広さが功を奏していることもあって、インパクトに加えて疾走感と俊敏さなど全てを味わえる演奏と言えるだろう。
・ボロディン:歌劇「イーゴリ公」よりダッタン人の踊りと合唱
録音:1989年6月6〜9日
・・・木管楽器による美しい音色、合唱の力強さと美しくも伸びやかな歌声が功を奏している。中でもトロンボーンなどの中低音の分厚い音圧とキレ味のあるサウンドは格別のものとなっており、聴いていて鳥肌が立つほどのカッコ良さを感じる上に驚かされる点が非常に多い。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることもあってオーケストラ全体のボルテージはさらに頂点へと向かっているので、ただ美しいだけでは終わらない素晴らしい演奏となっている。
・チャイコフスキー:弦楽セレナード
録音:1989年6月6〜9日
・・・チャイコフスキー作品の中でも比較的有名な曲の一つとなっている「弦楽セレナード」。一度スイッチが入った瞬間のテンポチェンジは中々に素晴らしいが、それ以外の時には伸びやかで柔軟性のある美しい音色とまとまったサウンドを聴くことができる。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることもプラスの点で、その壮大なスケールは聴いていて惚れ惚れするものとなっている。
フェドセーエフの生誕90年記念企画として復刻された名盤はまだまだ聴いていないものが存在している。「Victor」もそうだが、「キャニオンクラシックス」のSACDハイブリッド盤もタワーレコードから復刻されているので近いうちにそれらも少しずつ聴いていきたいところだ。
https://tower.jp/item/5576703/チャイコフスキー:-1812年-ロシア管弦楽名曲集-(2022年K2HDマスタリング)<タワーレコード限定>