来る2024年のブルックナー生誕200年に向けて多くの指揮者とオーケストラが交響曲チクルスを進めている。尾高さんは2018年に大阪フィルの第3代音楽監督に就任し、今回の交響曲第5番でCD化されたブルックナーとしては第4弾となる。このまま他の交響曲も録音されるかはわからないが「fontec」から発売されたCDは通常CD盤ながら音質は非常に良いので今後どのような形になるかわからないが期待をしている。
・ブルックナー:交響曲第5番
録音:2022年2月14日(ライヴ)
第1楽章・・・慎重な始まりとなるが、一度スイッチが入った瞬間の爆発力は凄まじいもので、テンポの緩急に加えてダイナミクス変化がわかりやすく明確に演奏されている。弦楽器のスマートながら重厚的なサウンド、ホルンを筆頭とした伸びやかな音色を奏でる金管楽器などどこを取っても素晴らしさが随所に盛り込まれている。演奏時間もそこそこあるが、重々しい雰囲気はなく活発なエネルギーが柔軟な流れによって演奏されていくのでそれほど長いと感じることはないだろう。
第2楽章・・・基本一定のテンポではあるが、落ち着きのある雰囲気を残しながら演奏が進められていく。木管楽器やホルン、弦楽器によって奏でられる音色が非常に美しく、聴いていて浄化されるような演奏である。残響はそれほど多くなく、やや固めに近い印象を受けるサウンドだがダイナミック・レンジの幅広さが功を奏していることもあって細部を細かく聴き込むことができる。そのため緩徐楽章としても複雑な部分をより聴き込むことができるようになっている。
第3楽章・・・スケルツォ楽章に入る。シンプルな構成ではあるが、推進力からなるエネルギーは素晴らしいものとなっており、弦楽器と金管楽器の力は大きなものと言えるだろう。また、木管楽器の軽快で美しい音色もこの楽章にぴたりと当てはまるのを感じる。細かいテンポチェンジに加えてダイナミクス変化も明確になっているため、聴きごたえは十二分にある第3楽章となっているのは間違いない。
第4楽章・・・金管楽器による膨大なエネルギー量はライヴだからこそであることは間違いないだろう。それに合わせて弦楽器の壮大なスケールがある。ダイナミック・レンジの幅広さが増しているから聴くことができると言ってもいい圧倒的な音圧は聴いていて身体の内側から響き渡るようである。それに加えて頻繁に変わるテンポの緩急も功を奏しており、より推進力などのエネルギーを底上げしている。金管楽器の咆哮が随所によって演奏されるのも良いが6:00あたりにあるコラールが終結部の盛り上がりと対比されているように美しい音色と響きを生み出しているので心の底から感動することができるのは間違いない。
聴き終えて、全体としては非常にスッキリとした印象を受けた今回のブルックナー交響曲第5番。朝比奈隆の時代とはまた違う尾高忠明が作り上げる新時代のブルックナーを聴いた気がする。改めてここまでに録音された3曲を聴き返したくなったのでまた後日それらを聴き直したいと思うと同時に残る5曲の交響曲が聴けるのを楽しみにしたいところだ。
https://tower.jp/item/5546856/ブルックナー:交響曲-第5番