第1364回「スウィトナー&SKBによるベートーヴェン交響曲全集がタワレコでSACD化」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

こちらはクラシック音楽のCDの名盤をレビューするブログです!
年間500枚以上クラシック音楽のCDを購入します。
好きな作曲家はマーラー、ストラヴィンスキー、ブルックナー、三善晃、ショスタコーヴィチなど
吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。



 みなさんこんにちは😃本日1月8日はオトマール・スウィトナーの命日です。今年で没後13年となります。そんな本日ご紹介していくのは昨年2022年に生誕100年記念企画としてタワーレコードから復刻されたスウィトナーとシュターツカペレ・ベルリンによるベートーヴェン交響曲全集です。世界初SACD化に加えてORTマスタリングによってこの全集を余すことなく楽しむことができるようになりました。今回は交響曲以外にも序曲がいくつか収録されています。


〜ベートーヴェン交響曲全集、序曲集〜


「オトマール・スウィトナー指揮/シュターツカペレ・ベルリン」

ベートーヴェン作曲:
交響曲第1番 ハ長調作品21

交響曲第2番 ニ長調作品36

交響曲第3番 変ホ長調作品55「英雄」

交響曲第4番 変ロ長調作品60

交響曲第5番 ハ短調作品67

交響曲第6番 ヘ長調作品68「田園」

交響曲第7番 イ長調作品92

交響曲第8番 ヘ長調作品93

交響曲第9番 ニ短調作品125「合唱付き」

「プロメテウスの創造物」序曲 作品43

劇音楽「エグモント」序曲 作品84

序曲「コリオラン」作品62

「レオノーレ」序曲第3番 作品72a

「フィデリオ」序曲 作品72b



 スウィトナーとシュターツカペレ・ベルリンによるベートーヴェン交響曲全集である。元々通常CD盤による交響曲全集の存在を知っていたこともあって、シューベルト交響曲全集と合わせて購入しようとしていたが今回のSACDハイブリッド盤の発売を知ったので今回の全集をタワーレコードで購入した。以前取り上げたシューマン交響曲全集も非常に素晴らしい演奏となっていたが、今回のベートーヴェンも素晴らしい演奏ばかりとなっている。交響曲に加えて序曲も収録されているのは大きなポイントと言えるだろう。


・ベートーヴェン:交響曲第1番

録音:1983年8月30日〜9月6日

・・・テンポの緩急も明確にあるが、何よりSKB(シュターツカペレ・ベルリン)の音色は明るく、非常に軽やかで軽快な演奏であると聴いていて感じた。もちろんこれには推進力が加わっているということにも繋がるわけだが、弦楽器には滑らかさや透き通るような透明感のある美しい音色が鳴り響いている。加えて2022年最新マスタリングであるORTマスタリングが施されたことによるダイナミック・レンジの幅広さが功を奏しており、細部まで細かく明確に聴き込むことができるようになっているのが非常に大きな部分であると聴いていて感じる。全集の一番最初から度肝を抜かされた瞬間であった。


・交響曲第2番

録音:1982年6月12〜19日

・・・曇りのない美麗なサウンドが功を奏していると言える今回の第2番。透明度の高さや全体の統一感など非常に素晴らしい推進力を感じることができる。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることもあってダイナミクス変化は全体的にわかりやすくなっており、良い意味で前向きな姿勢を貫いている演奏ということもあって大分聴きごたえがあると言えるだろう。個人的に好きな演奏の一つだったということもあって繰り返し聴きたくなるような名演だったことは間違いない。


・交響曲第3番「英雄」

録音:1980年6月23〜25日

・・・重々しさが一切ないかわりに鮮明な音色と推進力のある演奏が一貫して演奏される。同時に各楽章ごとにテンポの緩急を明確にアプローチしていることもあって聴いていて飽きることのない工夫などもされている。重厚的で機動力に満ち溢れた弦楽器や透き通るような美しい音色と軽やかさをあわせ持った木管楽器が非常に印象的と言えるだろう。どちらかと言えば近年演奏されているようなピリオド楽器や室内楽編成による演奏に近い解釈であるが、往年の時代におけるオーケストラの響きをしているという面もある非常に面白い「英雄」だ。


・交響曲第4番

録音:1983年8月30日〜9月6日

・・・今回の全集の中で一番といっていいくらいに2022年最新マスタリングを味方につけた演奏という風に感じた。第1楽章冒頭のティンパニが加わった瞬間の音の広がりや加速した後の快活な足運びであったり、「英雄」でも感じることができた透明度の高さが功を奏している音色と響きが非常に素晴らしい。また、ピリオド楽器や室内楽編成ほどではないがオーケストラ全体のサウンドとしては引き締まっている印象が非常に強いこともあってダイナミクス変化も明確でいてわかりやすく作り込まれている。この後に出てくる有名な交響曲に匹敵するスケールも兼ね備えた名演となっている。


・交響曲第5番

録音:1981年8月26〜31日

・・・ベートーヴェンの交響曲の中でも筆頭の人気を誇る名曲である第5番。今回の演奏ではダイナミック・レンジの幅広さによって細部まで細かく聴き込むことができるようになった俊敏な演奏に加えて、勢いの良さからなるエネルギーを存分に味わえるようになっている。また、細かいテンポの緩急ももり明確さが増しており、第3楽章から第4楽章へと向かっていくダイナミクスの盛り上がりもそうだが、一部楽章においてやや固めなサウンドのアプローチもされているので前向きな演奏という形でとらえることができるようになっている。


・交響曲第6番「田園」

録音:1980年7月7〜9日

・・・私が一番最初にベートーヴェンの交響曲を全部聴いた際に好きになった交響曲は第6番「田園」だった。それが故か中々個人的な決定盤にたどり着くことができていない。そして今回、スウィトナーとSKBによる演奏で非常に美しく、激しさを増した姿をみることができて個人的には非常に満足している。第1楽章から第3楽章までの伸びやかで広大なスケールと共に弦楽器と木管楽器が息ぴったりの状態で自然の美しさをたっぷり味わえるようになっている。そして第4楽章での嵐が来る瞬間の激しさは全てを破壊するかのような破壊力のエネルギーという圧にただただ圧倒された。そして何よりもテンポの緩急に沿った形で見事な演奏を残している。ここまで聴いてきた交響曲と同じような透明度の高い美しい音色もそのままとなっているので何度聴いても飽きることのない素晴らしい「田園」だ。


・交響曲第7番

録音:1981年8月26〜31日

・・・推進力に満ち溢れたぐんぐんと進んでいくエネルギーの塊を演奏から聴き取ることができる。その音からは重々しさはなく、柔軟性のある流れの良い美しいスケールで展開されている。響きとしては透き通るような透明度の高い美しいものとなっているため、音色には曇りがない。また、テンポの緩急も明確なものとなっているため各楽章ごとに変化をわかりやすく聴くことができるというのも素晴らしい部分と言える。


・交響曲第8番

録音:1983年8月30日〜9月6日

・・・俊敏であり、オーケストラ全体としても引き締まったサウンドをしている第8番。引き締まったことによって筋肉質で強靭な演奏となっているのかと言われるとそうではなく、透き通るような音色や柔軟性などはそのままとなっているので厳格な印象を受ける場面はあったとしても推進力などがあるのでエネルギッシュな演奏を聴くことができる。また、ダイナミック・レンジの幅広さが増したことも素晴らしい点で、細部まで各楽器を聴き込むことができるのも非常に良い点である。


・交響曲第9番「合唱付き」

録音:1982年6月12〜19日

・・・全体的にやや重心の低い状態で演奏がされているが、重々しいというわけではなく悠然的であり壮大なスケールが伴われている印象である。ダイナミック・レンジの幅広さが凄まじく、若干ボリューム負けしているようにも感じられなくはないが合唱が加わった瞬間の美しい響きはこの「第九」において高い位置にある演奏と言っても差し支えないだろう。後味はスッキリとしていてブレもなく演奏されているのでより明瞭なサウンドを聴くことができる演奏となっている。


・「プロメテウスの創造物」序曲

録音:1984年9月17〜20日

・・・短い曲ながら爆発的なエネルギーは非常に素晴らしく、統制の取れた弦楽器の波は中々聴くことができないような素晴らしい演奏となっている。木管楽器に関しては軽快で重々しさがない。SKB全体のサウンドとしてもみずみずしく、透明感のある美しさが極まった音色と響きをしているので聴いていてスッと聴くことができるようになっているのは間違いないだろう。


・劇音楽「エグモント」序曲

録音:1984年9月17〜20日

・・・「暗→明」へと向かうベートーヴェンの序曲集の中でも代表的な曲の一つである。終盤における怒涛の連続はORTマスタリングが施されたSACDハイブリッド盤の高音質盤だからこそ味わえると言ってもいい豪快な演奏を楽しむことができる。まとまりと壮大なスケールを兼ね備えた弦楽器に加えて決めどころを逃さない金管楽器の圧倒的なサウンドもこの曲における魅力の一つであると聴いていて感じた。


・序曲「コリオラン」

録音:1984年9月17〜20日

・・・フルトヴェングラーとベルリン・フィルによる演奏を聴いてからこの曲はどの演奏でも聴くのが楽しみとなっている「コリオラン」序曲。今回の演奏は推進力がある形で、テンポの比較的速い。ダイナミック・レンジが幅広いということもあって推進力に加えて聴きごたえは十二分にある演奏となっている。フルトヴェングラーによる演奏が個人的には一番好きなのだが、今回のスウィトナーとSKBによる「コリオラン」序曲はそれに匹敵するエネルギーを持っていたことは間違いないだろう。


・「レオノーレ」序曲第3番

録音:1984年9月17〜20日

・・・交響曲に引けを取らないくらいの優美さと壮大さをあわせ持った演奏である。弦楽器を中心として金管楽器や木管楽器による演奏が非常に美しいサウンドをきかせている。テンポの緩急も明確なものとなっているのと同時にやや残響強めとなっていることもあって演奏にはある程度の余裕や幅広さが備えられていることもあってか個人的に今まで聴いてきた同曲録音の中でも一番聴きやすかった印象を受けた。


・「フィデリオ」序曲

録音:1984年9月17〜20日

・・・短い曲ながらもその強靭的で引き締まったサウンドはピリオド楽器や室内楽編成での演奏に引けを取らないくらいのインパクトからなるダイナミクス変化となっていると言えるだろう。また弦楽器や木管楽器、金管楽器など各楽器群での統一感も抜群に素晴らしい印象となっている。透き通る美しい音色や響きと共に聴くことができるので素晴らしい始まりとなっているのでこのままオペラ本編を聴きたくなるくらいの気持ちとなった。


 今回世界初SACD化となったスウィトナーとSKBによるベートーヴェン交響曲全集をみてきたが、共通的なサウンドとなっている曲もあれば特質的な演奏もある多彩なベートーヴェンだった気がする。タワーレコード企画で復刻されたスウィトナーの名盤はまだまだ存在しているので今後も少しずつ聴いていきそれらを取り上げられればと考えている。


https://tower.jp/item/5369704/ベートーヴェン:-交響曲全集・序曲集(2022年ORTマスタリング)<タワーレコード限定>