チェリビダッケのブラームスといえば、シュトゥットガルト放送響との交響曲全集を多くの方々は思い出されると思う。今回はそれよりも前の1959年にミラノ・イタリア放送(RAI)交響楽団と演奏をしたブラームス・チクルスである。過去にこの全集は「Memories」から発売されていたが、今回は原盤を持つ「Movimento Musica」の残党提供という記載があり、それに基づく復刻とされている。UHQCD盤となり音質もそれなりによくなった。
ブラームス:交響曲第1番 1959年3月20日ライヴ録音
・・・冒頭のティンパニの足取りが若干ズレるのはテープの問題か演奏の問題かは正直どちらでもいいと思ってしまうくらいのスタイリッシュさやテンポの緩急およびダイナミクスの細かい変化を味わうことができる。パワー不足な面も一部分では感じられる場面もあるが、それ以上に緩やかで重厚的なスケールと言ってもいいくらいのダイナミック・レンジとなっているので貴重なチェリビダッケのブラームス交響曲第1番のライヴを余すことなく楽しめる穏やかな演奏だ。
交響曲第2番 1959年3月24日ライヴ録音
・・・第1番と比べてより一層自由度が増した演奏となっている今回の第2番。それによって「緩→急」や「急→緩」と言ったようなテンポ変化に伴うダイナミクス変化も細かくアプローチされている。オーケストラ全体のバランスもよく、各楽器がベストなサウンドを奏でているというのも素晴らしい部分と言えるだろう。また、分厚い弦楽器のスケールは今回ではさらにその凄みを増していることもあってその重厚さは他のオーケストラに引けを取らないインパクトのある代物となっている。また、第4楽章終結部におけるたたみかけるような追い込みも臨場感あふれるものとなっているため非常に聴きごたえがあると言えるだろう。
交響曲第3番 1959年3月20日ライヴ録音
・・・演奏としては慎重に進んでいく演奏と言ってもいいくらいのアプローチとなっている。それとは関係ないと思うのだが、今回の曲の中でも特に重要な役割を持つ弦楽器と木管楽器の音色は非常に美しく、まとまりのあるサウンドとなっている。それに加えて軽快かつ神秘的に近い美しさとなっている木管楽器も聴いているだけで心が踊るような面白さを味わうことができる。それに合わせる形で金管楽器は演奏されており、研ぎ澄まされた感覚やキレ味はないにしてもオーケストラ全体のバランスをうまく保つ役割を充分に担っているという印象を受ける演奏だった。
交響曲第4番 1959年3月24日ライヴ録音
・・・美しい面も兼ね備えつつ、今回の演奏では機動力及び推進力に伴う爆発力がメインとなっている印象を強く受ける。それが中々に聴きやすく、オーケストラ全体のサウンドに統一感が生まれているため個々の楽器が飛び抜けて聴こえるということはない。弦楽器の鋭く研ぎ澄まされた音色も非常に素晴らしく、それに合わせて変化するダイナミクスやアーティキレーションなどUHQCD盤の高音質盤となったことによって細部まで聴き込めるようになったのは素晴らしい。
チェリビダッケのライヴ録音は今回のブラームス交響曲全集を含めて先日取り上げた「リスボン・ライヴ」含めて大変多く存在している。先日もロンドン交響楽団とのライヴが復刻されているが、以前はフランス国立管弦楽団とのライヴも「Altus」から復刻されている。いずれもチェリビダッケにおける重要な演奏であることには変わりないので今後も少しずつ聴いていき、チェリビダッケの理解を深められたらと考えた。
https://tower.jp/item/5321965/ブラームス:-交響曲全集