第1220回「ラフマニノフ自作自演によるピアノ協奏曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃ふとラフマニノフのピアノ協奏曲が聴きたくなり、手元でまだ取り上げていないものを探していた時ラフマニノフの自作自演による演奏で過去にピアノ協奏曲第2番、第3番を取り上げていましたが、その後にピアノ協奏曲全集を購入してからまだ取り上げていないことに気づいたので今回は第1番〜第4番、「パガニーニの主題による狂詩曲」をみていきます。ピアノはセルゲイ・ラフマニノフ、ユージン・オーマンディとレオポルド・ストコフスキー、フィラデルフィア管弦楽団という素晴らしい布陣での演奏となります。


「セルゲイ・ラフマニノフ(ピアノ)、ユージン・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団」

ラフマニノフ作曲:
ピアノ協奏曲第1番 嬰へ短調作品1

ピアノ協奏曲第3番 ニ短調作品30

ピアノ協奏曲第4番 ト短調作品40


「セルゲイ・ラフマニノフ(ピアノ)、レオポルド・ストコフスキー指揮/フィラデルフィア管弦楽団」

ピアノ協奏曲第2番 ハ短調作品18

パガニーニの主題による狂詩曲 作品43



 ラフマニノフの貴重な自作自演によるピアノ協奏曲を聴くことができる今回の全集。モノラル音源ながら音質はそれなりに良く、歴史的価値のある録音として楽しむことができる。また、指揮者とオーケストラも豪華なものでオーマンディ、ストコフスキーとフィラデルフィア管という素晴らしいコンビをバックに演奏が行われている。有名な第2番や第3番だけは1枚のCDでも発売されているが、その他の曲も重要であることは間違いない。値段もそこまで高くないし、比較的手に取りやすい名盤となっている。


 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番、1939年12月4日、1940年2月24日録音

・・・ラフマニノフの作品番号1として出版された記念すべき作品である。初稿版と改訂版の2種類が存在しているが、今日までに演奏されるものは改訂版が多い。シューマンのピアノ協奏曲を思わせるような第1楽章は非常に印象的かもしれない。演奏として、第2番と第3番は今日における演奏とは違いテンポが比較的速めのアプローチとなっているが、この第1番に関しては比較的現在のアプローチと同じように感じなくもない。すでにロマンティックで美しい和音や響きが展開されているということもあって美しく、華麗なサウンドを聴くことができる。また、常に「プツプツ」というノイズが聴こえるがそれ以外はそれほど気にならないくらいなのでスピーカーを通して聴く分には良いと思う。


 ピアノ協奏曲第2番、1929年4月10,13日録音

・・・今回の全集の中で最も古い録音にしてラフマニノフのピアノ協奏曲の中でも特に人気の高い名曲である。ラフマニノフがピアノを弾き、オーマンディとフィラデルフィア管が演奏するというまさに完璧な状態で演奏される第2番は意外にも今日に演奏される際のようなロマンティックで濃厚かつたっぷりと演奏されているものとは違うアプローチがとられている。テンポの緩急もありつつ、全楽章共通して比較的テンポは速めで進行されていく。とはいえそれを演奏しているラフマニノフの技巧はもちろんのこと、親交のあったオーマンディ率いるフィラデルフィア管との相性も非常に良いのか交響曲を演奏しているかのような落ち着きと安定感があり、テンポが速くなったとしても焦ったり急いでしまったりということは基本的にみられない。また、1929年録音のモノラル音源だが比較的音質も悪くない印象となっており、貴重なラフマニノフによる自作自演の名曲を楽しむことができるようになっている。まさにこの全集一番最初に聴きたい演奏と言えるだろう。


 ピアノ協奏曲第3番、1939年12月4日、1940年2月24日録音

・・・ラフマニノフにおけるピアノ協奏曲第2番と双璧をなす名曲である第3番。その難易度は第2番よりも上がっており、ホロヴィッツやアルゲリッチ、アシュケナージや反田恭平さんなど名だたるピアニストたちが演奏してきた。今回はそれがラフマニノフ自身のピアノによる自作自演で演奏されている。音質は第2番と比べると若干くもった印象で、オーケストラ側の輪郭をとらえるのに少々難しいと感じてしまうかもしれないが、ラフマニノフによるピアノは比較的聴きやすくなっている。第2番同様にこの演奏でも比較的テンポは速いアプローチでとられている。その方がより技巧を伴うこの曲にはぴたりと当てはまるのかもしれない。ダイナミック・レンジの幅広さがそれほどないため、全体のボルテージが頂点に達すると音割れを起こしてしまう場面もあるが、聴いているだけでテンションが上がる名演である。また、前回取り上げた際にこの曲の終盤が切れてしまっていた問題があったが、今回のCDに関しては問題なく最後まで聴き終えることができたのでその点に関しても安心して聴くことができた。


 ピアノ協奏曲第4番、1941年12月20日録音

・・・初演がラフマニノフ、ストコフスキーとフィラデルフィア管によって行われたこの曲。この曲も初稿版と改訂版が存在しているが、今日において演奏されているのは改訂版である。スクリャービンの影響を受けている今回の第4番は第2番や第3番とはまた違い、現代的な要素も含まれながらラフマニノフ独自の個性的かつロマンティックな響きを随所から感じることができる。そして今回ラフマニノフによる自作自演ということによっていつもの録音よりもより一層意味のある録音という風に感じた。フィラデルフィア管との息もぴったりで、テンポの緩急ありつつピアノとオーケストラの掛け合いもうまい。安定感のある演奏には理想的な演奏という風にも思えてくる世界観だ。


 パガニーニの主題による狂詩曲、1934年12月24日録音

・・・この曲の初演が1934年11月7日。そのわずか1ヶ月後に初演時と同じピアノ独奏、指揮者、オーケストラという布陣で演奏された今回の全集でおそらく最も貴重な録音といえるだろう。ノイズは多少あるものの、演奏を聴く分にはそれほど気になることなく聴くことができるようになっており、ラフマニノフのピアノが前面的に押し出された状態でオーケストラ側のサウンドが少々くもり気味ではあるが、全体的にバランスとテンポの緩急が明確にわかりやすく演奏されている。ピアノの音色とタッチ、響きは今回の全集で一番美しさとはかなさを合わせ持つ演奏で、キレ味もそれなりにあるが美しさが冴え渡っているため聴き終えた時は自然と拍手をしてしまうくらいの感動をすることができる。


 ラフマニノフによる自作自演の録音は今回のピアノ協奏曲全集以外にもピアノ曲などで残されている。すでに廃盤となっているため手に入れるのは少々難しい部分があるかもしれないが、いずれはそれらの貴重な録音を聴いてみたいと思っていたりする。今回は久しぶりにラフマニノフのピアノ協奏曲全集を聴くことができ、大変満足している。


https://tower.jp/item/2638840/ラフマニノフ自作自演~ピアノ協奏曲全集