第1209回「フリッツ・ライナー&シカゴ響によるベートーヴェン交響曲のSACDハイブリッド盤」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは2018年6月27日に「Sony Classical」から発売された「タワーレコード × Sony Classical 究極のSA-CDハイブリッド・コレクション第5回」からフリッツ・ライナーがシカゴ交響楽団と録音したベートーヴェンの交響曲第1番、第5番、第6番、第7番、第9番、「フィデリオ」序曲、「コリオラン」序曲をみていきます。発売当初から存在は知っており、タワーレコードの試聴コーナーで「第九」を聴いた時の衝撃を今でも覚えています。今回はその時の感情が蘇るようなライナーによる熱いベートーヴェンをみていきたいと思います。


「フリッツ・ライナー指揮/シカゴ交響楽団」

ベートーヴェン作曲:
交響曲第1番 ハ長調作品21

交響曲第5番 ハ短調作品67

交響曲第6番 ヘ長調作品68「田園」

交響曲第7番 イ長調作品92

交響曲第9番 ニ短調作品125「合唱付き」

歌劇「フィデリオ」作品72より序曲

「コリオラン」序曲 作品62



 私自身フリッツ・ライナーによる録音はあまり数を重ねるほど聴けていない。そういう意味では今回のベートーヴェンが大きな鍵になるのではないか?と少なからず考えている。当盤が発売された2018年は私がちょうど社会人になったばかりの年でマーラーの交響曲CDを中心にタワーレコードやディスクユニオンでCDを休日に買い漁っていた時期にあたる。発売当初から当盤の存在をしていたし、タワーレコードの試聴コーナーにて「第九」を聴いた時思わず鳥肌が立ったのは今でも覚えている。しかし、その時なぜか購入することなく2021年にようやく購入したわけだが、今回改めて一曲ずつ演奏を聴いてみて当時の時点で購入しておけばよかったという後悔を感じた。


 ベートーヴェン:交響曲第1番、1961年5月8日録音

・・・しつこさのないすっきりとしたサウンド、曇りない弦楽器、木管楽器の音色を筆頭としてスマートでいてインパクトのある第1番が演奏されている。ライナーのベートーヴェンはどの演奏も好みになるものばかりだが、特にこの第1番はテンポの緩急も含みつつ、いらないものを削ぎ落とした筋肉質なやや尖りがかったピリオド楽器や室内楽編成を感じさせるような演奏とはまた違う良さがある。シカゴ響の特徴が曲全体から溢れんばかりに感じ取ることができるようになっているので聴きごたえは充分にあると言えるだろう。その点においては他の第5番や第7番に引けを取らない名演となっている。


 交響曲第5番、1959年4月4日録音

・・・研ぎ澄まされたサウンド、ダイナミック・レンジの幅広さが充分に生かされた機動力、推進力にはまさに感慨無量という言葉がぴたりと当てはまる。弦楽器群を土台とし、活気ある金管楽器によるインパクトある咆哮はいつ聴いてもカッコいいと思えるだろう。弦楽器群による統一感のある状態から繰り出される柔軟性を兼ね備えた壮大なスケールは同時期に録音された同曲録音を凌ぐ勢いがあると感じることができる。この後の第7番でも驚かされたわけだが、第5番でも想像していた以上に驚かされたことは言うまでもない。


 交響曲第6番「田園」、1961年4月8,10日録音

・・・今回収録されている交響曲の中で一番「緩→急」、「急→緩」の切り替えやインパクトがあった演奏だったと言えるだろう。特に第4楽章での弦楽器によるトレモロやティンパニの音はまさに嵐、雷そのものである。新たなリマスターによる効果もあると思うのだが、シカゴ響全体のサウンドが一つの方向性を持って演奏されているということもあって素晴らしい情景の再現であったり、美しい音色を奏でながら演奏が進行していく。弦楽器を中心に金管楽器、木管楽器と豊かな音色と奥深い響きを感じながら展開していくのを聴いていると心の底から感動できる。ここまでに美しい「田園」を聴いたのは本当に久しぶりのことだ。


 交響曲第7番、1955年10月24日録音

・・・第1楽章冒頭のインパクトあるサウンドから思わず心を掴まれてしまうこと間違いなしと言ったところだろうか。CD紹介文にあるようにトスカニーニやカルロス・クライバーと似た解釈があるというのは聴いていて確かに感じる。また、新しいリマスターが施されているということもあってダイナミック・レンジの幅広さも増し、より一層豪快さや推進力などの活発なエネルギーを体感できるようになっている。これによって正直なところ1955年の録音ということすら思わず忘れてしまうくらいである。統一された全体のサウンド、柔軟でやや筋肉質にすら感じる弦楽器のスケールなど聴いているだけでさまざまな発見が出てくる素晴らしい演奏だ。


 交響曲第9番「合唱付き」、1961年5月1,2日録音

・・・最初から最後まで衰えることのないエネルギーの流れを体感することができる壮絶な「第九」である。リマスターが施されているということもあるのだろうが、ダイナミック・レンジの幅広さによってシカゴ響のパワー、テンポの緩急や合唱とオーケストラとのバランスなど素晴らしい点が多数存在している。私が一番好きな「第九」の録音はバッティストーニ&東フィルによるものだが、一番ではないにしてもライナー&シカゴ響による「第九」もそれなりの地位を確立する素晴らしさに満ち溢れた名演であることには変わりない。音の広がり、豊かな響きなど1961年に残されたステレオ録音ならではのインパクトある「第九」を余すことなく堪能することができる素晴らしい演奏と言えるだろう。


 歌劇「フィデリオ」序曲、1955年12月12日録音

・・・引き締められた弦楽器の音色、キレ味と歯切れ良さを合わせ持つ金管楽器や木管楽器のサウンドには思わずしびれてしまうようなかっこよさを余すことなく聴くことができるようになっている。この後このままオペラ本編が始まるようなワクワク感が聴いていて心の底から湧き上がっているのを感じた。推進力からなるエネルギーも申し分なく、このあとの「コリオラン」序曲とセットで聴くことによってより一層楽しめるベートーヴェンの序曲であることには変わらないだろう。


 「コリオラン」序曲、1959年4月5日録音

・・・フルトヴェングラーの「ドイツ帝国放送局アーカイヴ1939〜1945」に収録されていたフルトヴェングラーとベルリン・フィルによる演奏の次に好きな演奏であるこのライナーとシカゴ響による「コリオラン」序曲。演奏として推進力を常に感じることができる仕様になっており、ぐんぐん前に前に進んでいく印象が強いダイナミックで勢いに満ち溢れた演奏となっている。まとまりある弦楽器を中心に金管楽器、木管楽器や打楽器によるきっちりとした合わせ技の数々は聴いていて爽快感を味わうことができる。


 フリッツ・ライナーとシカゴ交響楽団によるベートーヴェンの交響曲をみてきた。どの曲も聴きごたえのあるものばかりで、大変強い魅力を感じる演奏が多数収録されていたと思う。今回はベートーヴェンだったが、このコンビによる他の録音もぜひ聴いてみたいと感じるいいきっかけとなったことには間違いない。


https://tower.jp/item/4721061/ベートーヴェン:交響曲第1・5・6・7・9番、「フィデリオ」序曲、「コリオラン」序曲(2018年-DSDリマスター)<完全生産限定盤>