第1208回「アンセルメ&スイスロマンド管によるストラヴィンスキー三大バレエのSACD」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは
5月18日にタワーレコード企画の「ヴィンテージSACDコレクション」にて復刻したエルネスト・アンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団によるストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」、「ペトルーシュカ」、「春の祭典」、組曲「プルチネルラ」、ロシア風スケルツォをみていきます。アンセルメが「DECCA」に残した多くの録音の中でも特にストラヴィンスキー作品は高い人気を誇っている名演と言えるでしょう。今回は世界初SACD化にして、SACDハイブリッド仕様となって蘇ったアンセルメによるストラヴィンスキーの三大バレエを堪能していきたいと思います。


「エルネスト・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団」

ストラヴィンスキー作曲:
バレエ音楽「火の鳥」

バレエ音楽「ペトルーシュカ」1911年版

バレエ音楽「春の祭典」


組曲「プルチネルラ」


ロシア風スケルツォ



 アンセルメとストラヴィンスキーは切っても離すことができない関係性で結ばれていると言ってもいいだろう。ストラヴィンスキーがいなければアンセルメはバレエ・リュスへ推薦されることもなかったし、ファリャの「三角帽子」や今回収録されている「プルチネルラ」などが初演時にアンセルメが指揮をしていなかったかもしれない。


 もちろんアンセルメと数多くの録音を残してきたスイス・ロマンド管弦楽団の存在も忘れてはならない。ロシア音楽、フランス音楽など代表的な録音が大変多い中、今回収録されているストラヴィンスキーの三大バレエはその中の筆頭に立つ名盤と言ってもいいだろう。個人的には「春の祭典」よりも「ペトルーシュカ」よりもスイス・ロマンド管弦楽団との「火の鳥」を聴くことができることが一番嬉しい。ぜひ同シリーズで発売されているニュー・フィルハーモニア管弦楽団との同曲録音と聴きたいところである。


 ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」、1955年5月録音

・・・アンセルメといえば「火の鳥」というイメージが強く残るほどに何種類か録音を残している。同シリーズのSACDハイブリッド盤ではニュー・フィルハーモニア管弦楽団との「火の鳥」も随分前に復刻されている。今回の録音は「DECCA」最初期のステレオ音源であり、なおかつ2022年最新マスタリングが施されたSACDハイブリッド盤である。そのため、聴いていてアンセルメの手兵であるスイス・ロマンド管のみずみずしく透明度の高い音色を奏でながら色彩豊かに演奏が行われている。テンポはゆったりとしたやや遅めのテンポながら細部まではっきりと明瞭さがあり、個々の主張も強すぎることなくバランスのとれた演奏を最初から最後まで聴くことができる。ノイズも多少はあるものの、これがあることによってこの録音の価値を体感することができるといえるだろう。


 バレエ音楽「ペトルーシュカ」、1957年10月、11月録音

・・・以前当ブログでも取り上げた「ステレオ・サウンド」から発売されたSACD、CDと同じ録音である。ステレオ・サウンド盤のSACDシングルレイヤーは2016年に発売されているので当盤が世界初SACD化というのは少々間違っていたりする。今回のタワーレコード盤はステレオ・サウンド盤と違って2022年最新マスタリングが施されているということもあり、演奏がやや暴れ気味かつ攻撃で活発だったとしてもダイレクトに音が流れてくるという感覚はそれほどない。少なからずや余裕を感じることができるようになったため、聴きやすくなった「ペトルーシュカ」と言えるかもしれない。勢いをより求める「ペトルーシュカ」を探している方にとっては今回の演奏は非常に聴きやすい印象を受けるのではないだろうか?


 バレエ音楽「春の祭典」、1957年4月、5月録音

・・・演奏として現在における名だたる名盤と比べると確かには完全に思える部分が非常に多い。しかし、この曲に限っては繰り返し使われる変拍子、不協和音、独特なリズムなど現代音楽としての側面が強いので多少の不完全さがあっても違和感がない。むしろより難曲であるということを感じさせることができるように演奏を通して理解することができるようになっていると言えるだろう。サウンドとして、一つ一つの楽器が全身全霊をかけて演奏しているということもあってそれほどまとまりのある演奏かと言われればそうではない。むしろバラつきがあるようにすら感じられる。しかし、それがいい。先ほども話したような不完全さが功を奏しており、クルレンツィスとムジカエテルナとは違う野生的なインパクトのある「ハルサイ」を聴くことができるようになっている。2022年最新マスタリングが施されたことによってそれが聴きやすくなったということで間違いないだろう。


 組曲「プルチネルラ」、1956年5月録音

・・・1920年5月15日パリ・オペラ座でのバレエ・リュスの公演で初演された。その際指揮をしているのはアンセルメである。衣装舞台セットのデザインを手掛けたのはパブロ・ピカソ。バレエ・リュスが解散するまで何度も再演されるほどの人気曲として扱われた。バレエ全曲版と組曲版が存在し、今回演奏されているのは組曲版である。ストラヴィンスキーにおける新古典主義時代の代表作として今日に知られており、先ほどまでの原始主義時代におけるバレエ音楽時代と線が引かれている。初演時にアンセルメが指揮をしたということもあって今回の演奏は個人的に一番気に入った演奏の一つとしておきたい。2022年最新マスタリングが施されたということもあるのだろうが、ダイナミック・レンジの幅広さも増しているが何よりスイス・ロマンド管の音が生き生きしていてアンセルメがこの曲における表現をぴたりと当てはまる形で見事なまでに演奏していることを体感することができるようになっている。現代の録音に負けていないような美しい音色や響きなど目が離せない点が非常に多い。ある意味「三大バレエ」よりも注目的な演奏となっている気がする。


 ロシア風スケルツォ、1964年5月録音

・・・元々はジャズ・バンドのために作曲され、のちにオーケストラ版が誕生した。今回演奏されているのはオーケストラ版である。構成もシンプルで親しみやすい形となっており、ストラヴィンスキーの小品ながらその情報量の多さは十二分な聴きごたえがある。ダリウス・ミヨーが「ペトルーシュカ1944」と評しただけあって「ペトルーシュカ」を聴いた後に聴くとなおその世界観に一貫性を感じることができるようになっている。演奏は他が1950年代後半なのに対して1964年録音ということもあってかダイナミック・レンジの幅広さも増しておりそれなりに聴きやすさがある。演奏しているスイス・ロマンド管全体のまとまりも明確になっており、何回も聴きたくなるような面白さがこの演奏には込められていると言えるだろう。


 アンセルメによるストラヴィンスキー作品の録音は今回収録されている曲以外にも大変多く存在している。いずれそれらを取り上げたいと考えているが、今回こうしてストラヴィンスキーの三大バレエ、「プルチネルラ」、「ロシア風スケルツォ」のSACDハイブリッド盤を聴くことができて非常に満足した気持ちでいっぱいである。同日に発売されたモントゥーとパリ音楽院管弦楽団による「春の祭典」、「ペトルーシュカ」とあわせてぜひ一度はご試聴いただければと思う。


https://tower.jp/item/5408633/ストラヴィンスキー:バレエ「火の鳥」、「春の祭典」、「ペトルーシュカ」(1911年版)、組曲「プルチネルラ」、ロシア風スケルツォ<タワーレコード限定>