コンヴィチュニーによる名盤はシューマン、ベートーヴェンそれぞれの交響曲全集だけではないということをこのブルックナーやドヴォルザークを通して感じることができる。ゲヴァントハウス管とはまた違う音色や響きをウィーン交響楽団やバンベルク交響楽団の演奏から通して聴くことができることはもちろんのことながら、これが本当に1960年に録音された演奏なのか?と思わず聴いていて感じてしまうことは間違いないだろう。いずれの録音もオリジナル・アナログ・マスターテープからのリマスタリングによる効果は絶大なものとなっている。
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」、1960年録音
・・・このブルックナーだけは他の録音とは違う凄みがある。楽章が変わってもなお衰えることのない機動力と推進力はコンヴィチュニーによる録音の中ではあまりみられなかった演奏のようにも思える。しかし、リマスタリングが施されダイナミック・レンジが増した状態で聴いてみると奥深い音色と研ぎ澄まされたサウンドが混ざり合って非常に素晴らしい音楽を奏でている。以前ノリントンによるブルックナーを聴いて衝撃を受けていたが、コンヴィチュニーによるブルックナーも素晴らしい衝撃を与えてくれるような名演となっている。骨太な金管楽器のサウンドはもちろんのこと、落ち着きもありつつ綺麗な音色を奏でる弦楽器と木管楽器の音色は非常に良い。オーケストラ全体の流れもうまく掴まれているので最初から最後で聴きやすい「ロマンティック」となっている。
ワーグナー:ジークフリート牧歌、1960年録音
・・・近年は室内オーケストラによる演奏も増えているが、以前はオーケストラによる演奏も存在していた。コンヴィチュニーによるワーグナー・オペラは以前「さまよえるオランダ人」を聴いたことがあるが、今回の「ジークフリート牧歌」は美しさが極まったと言ってもいいくらいの素晴らしさに満ちた名演と言えるだろう。素晴らしいアンサンブルはもちろんのこと、オーケストラ全体のバランスも非常に良くリマスタリングによってダイナミック・レンジはより聴きやすくなった。落ち着きのあるコンヴィチュニーのアプローチにぴたりと当てはまる安定感のあるサウンドにはベストな選曲であると聴いていて感じた。
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」、1960年録音
・・・まず、演奏として危機迫る緊張感というよりも壮大かつ広々としたスケールのもと演奏されているためかリマスタリングの効果を強く受けているようにも思える。非常に深みのある豊かなサウンドは、オーケストラ全体の統一感となっている。これは今までのどの「新世界」でも聴いたことがない名演と言えるだろう。何より第1楽章のリピートがあるのも驚きだが、全体として快調に飛ばしていくテンポというよりはやや重心低めで安定感のある骨太なドヴォルザークとなっている。最初から最後まで一貫性があるため聴きやすいのも素晴らしい点といえるだろう。
ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第2番、1960年録音
・・・この曲に関しても今日においては第3番が演奏されるようになっているが、コンヴィチュニーによる指揮になるとどこか懐かしさを感じさせるような演奏となっている。落ち着きのあるという言葉が一番高いのだろうが、ダイナミクスの振り幅も激しすぎることなくテンポの緩急も目まぐるしく変わるというわけではない。少なくともリマスタリングによる効果によってダイナミック・
レンジの幅広さはある程度確保されていると言った抜群の安定感を発揮している「レオノーレ」序曲第2番となっている。
リスト:交響詩「前奏曲」、1960年録音
・・・リストが作曲した交響詩の中でも特に知られている曲である「レ・プレリュード」。構成もシンプルであり、落ち着きのあるアプローチで演奏されている。力が強すぎるという場面も基本的にはなく、しなやかでスケールのある弦楽器や楽器のあるトランペットを筆頭とした金管楽器、統一感のある木管楽器など聴きどころ満載の演奏と言えるだろう。終盤にあるファンファーレはより歴史ある演奏を聴いているかのような堂々たる演奏となっているので、より一層迫力がある仕上がりとなっている。
コンヴィチュニーによる録音は久しぶりに聴いたかもしれないが、今回収録されていたどの曲に関しても非常に素晴らしい演奏ばかりだったことは間違いない。「オイロディスク・レーベル」に残された素晴らしい録音たちをSACDハイブリッド仕様の高音質盤で聴くことができるのだからこれほどの感動は中々ないと思われる。近いうちにまだ聴いていないコンヴィチュニーとゲヴァントハウス管によるベートーヴェン交響曲全集を聴きたいと思えるような素晴らしい名盤だった。