第837回「ジョージ・セルとクリーヴランド管が残した知られざる音源集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日7月30日はジョージ・セルの命日です。今年で没後51年となります。手兵であるクリーヴランド管弦楽団やロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団など多くのオーケストラと共演し残してきた名盤の数々は多くのクラシックマニアに愛されています。そんな本日は1954,1955年にアメリカの「Book-of-the-Month Club」のために録音されたCDをみていきます。モノラルで録音されたのはバッハの管弦楽組曲第3番、スメタナの連作交響詩「我が祖国」からモルダウ、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」。ステレオで録音されたのはモーツァルトの交響曲第39番、ブラームスの「大学祝典序曲」、「ハイドンの主題による変奏曲」、シューマンの交響曲第4番、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」1919年版です。このうち「ハイドン変奏曲」以外の曲は初CD化という超貴重な音源です。


「忘れられた録音集」


「ジョージ・セル指揮/クリーヴランド管弦楽団」

[Disc 1]
J.S.バッハ作曲:
管弦楽組曲第3番

スメタナ作曲:
連作交響詩「我が祖国」より「モルダウ」

リヒャルト・シュトラウス作曲:
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」

モーツァルト作曲:
交響曲第39番


[Disc 2]
ブラームス作曲:
大学祝典序曲

ハイドンの主題による変奏曲

シューマン作曲:
交響曲第4番

ストラヴィンスキー作曲:
バレエ組曲「火の鳥」1919年版



 セルとクリーヴランド管が残した演奏の中にこんなレア音源が残されていたとは非常に驚きである。1960年代にかけてベートーヴェン、モーツァルト、ブラームス、シューマン、メンデルスゾーン、マーラー、リヒャルト・シュトラウスなど多くの名盤を残したが、今回のCDは貴重なものばかり。全ての曲ではないがモノラルとステレオそれぞれ分けてみていきたいと思う。

 モノラル録音されているのはバッハ、スメタナ、リヒャルト・シュトラウスの作品。まずバッハの管弦楽組曲第3番だが、現在ではオリジナル楽器を用いたものなど奏法は確立されているがこの時代の演奏はまだ古典的な演奏が確立はされていなかった印象を受ける。その中でセルがその扉を開いた形に至るのは聴いていただくとよくわかると思う。モノラル録音ながら各楽器の歯切れ良さや美しい音色が非常に良い。厳格な指揮者として知られるセルらしい演奏と言えるだろう。スメタナの「モルダウ」、1954年の演奏のため多少の時代を感じる気もするがモノラルながら音質の良い演奏には驚かされる。特に弦楽器のサウンドが非常に良い煌びやかで身体に「スッ」と流れ込んでくる。リヒャルト・シュトラウスの「ティル」はモノラルとは思えないほどの明るさと輝きに包まれている。金管楽器のハツラツとしたサウンド、弦楽器のキレ味の良さ、そして木管楽器の軽快なリズムなど聴きどころは多い。

 ステレオ録音はモーツァルト、ブラームス、シューマン、ストラヴィンスキーの作品。モーツァルトの交響曲第39番は少々ノイズや「プツプツ」と言った音が入ってしまっているのと音割れが入ってしまっているが、ステレオになったことによる音質の変化によって古典的な演奏スタイルをより明確に聴くことができるようになった。ブラームスの「大学祝典序曲」も若干の音割れがあるものの、細かいテンポチェンジによる変化がよくわかるようにつけられていてサウンドも豊かなものに仕上がっている。「ハイドン変奏曲」は牧歌的で豊かかつ安らぎのあるサウンドとなっている。ステレオ録音ということもあり音質が良い点が功を奏しているといった印象だろう。シューマンの交響曲第4番は希薄に満ち溢れた演奏でど迫力のサウンドを味わえる。ちょうど最近サヴァリッシュによる同曲を聴き終えたばかりだが、音質ではこちらが劣るものの1959年という年にここまで素晴らしい録音が残されていたことは驚きである。そして個人的に本命としていたストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」、1961年に録音されたものが一般的に有名だがこの1959年に録音された演奏は1961盤に引けを取らない素晴らしい仕上がりだ。ここまで音割れやノイズがある演奏がほとんどだったがこの演奏ではあまりそれが見受けられない。その分良質なセルとクリーヴランド管による「火の鳥」を楽しむことができるといったところでオーケストラのバランスも非常に良い。

 今回発売されたCDはセルのファンにはたまらない代物であることは間違いない。私自身まだセルの録音作品は全部聴いたわけではないがその一つ一つの演奏のクオリティは近代のオーケストラにないものを持っている。特にベートーヴェンやモーツァルトは非常に素晴らしい。再度聴きたくなったのでまた時間があったら聴き直したいと思う。