クーベリックといえばマーラー、ドヴォルザーク、ベートーヴェンの交響曲を中心にチェコ出身の作曲家などを得意とした20世紀後半を代表する指揮者の一人。名盤を数多く残した1960〜70年代の演奏は今でも多くのファンに愛されている。今回の演奏は、1965年の日本に来日した際の貴重な録音となっており、手兵であるバイエルン放送交響楽団を引き連れての演奏となっている。
個人的にクーベリックにはブルックナーの印象を強く受けていないのだが、今回の演奏を聴き「これはこれでアリだな」と思った。
ブルックナー交響曲第8番、鋭めの音色と統一されたサウンド、そして快速に進む演奏になっているため、これまでの重厚的なブルックナーとはまた違うものとなっている。ヴァイオリンを両翼配置にすることにより、これまでの演奏とはまた違う一面を引き出している。オーケストラサウンドとしても同時期に数多くの名盤を残したバイエルン放送響のものとなっており、最初から最後まで聴き入ってしまう演奏だった。ニコニコ動画風にいうならば「忙しい人のためのブルックナー」となるだろう。ただ勘違いしてほしくないのはニコニコ動画の「忙しい人シリーズ」はカットによる面白編集と成り果てているが、今回の演奏は一切カットされていないということをあらかじめ言っておきたい。
ベートーヴェン交響曲第6番「田園」、やや固めの音色となっている。それに加えて、ブルックナーと同じようにテンポに関しては速めに進んでいく。そのため、通常40分以上の演奏時間となるこの曲で40分切る状態となっている。その分躍動的かつ自然なサウンドが楽しめるようになっているため個人的には新鮮味を感じた。木管楽器と弦楽器が中心になる分美しさと軽やかさが幾分か増した印象を受ける。
「Altus」から発売されたCDに関してはものによっては当たり外れが存在するような気がしているのだが、比較的最近のものは当たりが多い印象を受ける。新マスタリングの効果によって若干音が固くなる傾向にあり、響きが少々失われた気がするが、今回含めて過去にライヴ録音された名演をこうして聴くことができるようになっているのは非常に嬉しいことと私は考えている。特に先日ご紹介したコンドラシンの1967年来日公演集成は出来栄えも良くなっていて聴きごたえがあった。今後も「Altus」から目が離せない。
https://tower.jp/item/5178876/ブルックナー:-交響曲第8番、べートーヴェン:-交響曲第6番