第696回「フェドセーエフとモスクワ放送響によるチャイコフスキー交響曲第6番《悲愴》」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃ロシアの巨匠ウラディーミル・フェドセーエフが2019年末に手兵であるチャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(旧モスクワ放送交響楽団)と録音したチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」がついに今回発売されました。1974年から音楽監督を務め、これまでに数多くの名演を生んできたこのコンビ、チャイコフスキーの作品は特に重要なレパートリーの一つということは間違いないでしょう。


「ウラディーミル・フェドセーエフ指揮/チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ」


チャイコフスキー作曲:
交響曲第6番「悲愴」



 フェドセーエフはチャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラとロシア人作曲家の作品を長年多く演奏してきた。「爆演」、「爆走」、「爆音」という印象が個人的に強く、今ではムラヴィンスキー亡き後のレニングラード・フィルの位置を継いだコンビと個人的に考えている。ちょうど最近、両者によるグラズノフ交響曲全集を購入したばかりなので、こちらはまた後日ご紹介できればと考えている。

 第1楽章、冒頭はわりと慎重に進んでいく印象を受ける。そんな中でもフェドセーエフの唸り声や往年の金管楽器の咆哮などが楽しめる。故にテンポは以前のようなガンガンいくというわけではない。重心が低くなったという印象があり、オーケストラ全体的にまとまりと深みがより一層増している。特にそれを感じられるのは木管楽器で、この楽章ではソロ及び目立つ箇所が多い中不動の精神が感じられる芯のある音をクラリネット、ファゴットで感じることができる。また、トロンボーンとチューバの音圧も凄まじいものとなっている。

 第2楽章、先ほどとは打って変わり、優美かつ優雅なサウンドへと変化する。その中でも冒頭のチェロの音色がたまらなく良い。木管楽器の統一感も素晴らしく、第1楽章の時とは違う音色を楽しむことができるようになっている。全体的にサウンドが伸びやかになった印象を受けた第2楽章だった。

 第3楽章、こちらも第1楽章と同じようにやや重めのテンポで進行していく。とはいえ、以前取り上げた外山雄三&大阪響ほど遅くはないので安心していただきたい。やや重めとはいえちょうど良いテンポ感と言えるもので、オーケストラが非常に良い音で演奏している。以前ではこういう曲の場合では攻撃的なサウンドが光っていたこのオーケストラだが、音色が変化し始めたのか攻撃的なサウンドではなく、まとまりのあるハイレベルなオーケストラ・サウンドへと変化している。フェドセーエフと長年演奏し続け進化していった結果が今回の演奏に詰め込まれているということを再認識した。

 第4楽章、冒頭からフェドセーエフの深い息と共に弦楽器が美しくも哀しみにくれる旋律を奏でる。今まで幾度もこの曲を聴いていたわけだが、今回の演奏は特に心に対してダイレクトに伝わってくる。東日本大震災が本日で10年となる。私は当時、中学3年生で午前中に合唱コンクールを体育館で行い、地震があった際は教室で大掃除していた。今でも覚えているのは、校庭にあった時計が激しく揺れていたことである。東京ではそれだけ強かったのに対し、東北ではそれ以上に強い地震が来たとなると言葉も出なくなる。今回のチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」は今聴くからこそ感じられるエネルギーがある。私はそう考えた。

 本日元々は別の名盤を取り上げる予定だったが、不意にチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を聴きたくなったので今回ちょうど先日発売されたばかりのフェドセーエフ&チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラによる演奏を取り上げている。これがどういう意味を持っているのかはわからないが、10年前の出来事を忘れてはならないということに違いないだろう。また、今後もこの名コンビによるCDは発売されるのだろうか?そこも気になるところである。