第645回「ラトル生誕祭!ベルリンフィルとの完璧なる演奏、マーラー交響曲第10番クック補筆版」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日1月19日は最近話題のサー・サイモン・ラトルの誕生日です!今年で66歳になられました。おめでとうございます🎉そんな本日はラトルがベルリン・フィルと取り上げたマーラーの交響曲から交響曲第10番(クック補筆版第3稿第2版)を取り上げていきます。クック補筆版を最も演奏したラトルだからこそなせる演奏、今回の演奏は私個人の決定盤でもあります。


「サー・サイモン・ラトル指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」


マーラー作曲:
交響曲第10番(クック補筆版第3稿第2版)



 ちょうど最近、ラトルがバイエルン放送交響楽団の首席指揮者に就任するニュースが流れてきた。2023年から5年間ということだそうで、今後の活躍がますます期待される。そんなラトルはこれまで現代音楽作品の指揮なども行い、幅広いレパートリーを様々なオーケストラと演奏してきた。今回取り上げるマーラーもバーミンガム市交響楽団、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルにて指揮しており、演奏はどれも定評のあるものとなっている。

 マーラーの交響曲第10番は未完の交響曲で、第1楽章のみ演奏されることがほとんどなのだが、今回のように全5楽章までを補筆した版がいくつか存在する。一番古いもので言うとクルシェネク版(ジョージ・セル盤)が当てはまる。ただクルシェネク版は第1楽章と第3楽章のみとなっているため、初の全楽章補筆版はカーペンター版となる。(デイヴィッド・ジンマン盤)他にも補筆版は多くの種類が存在しているものの、その中でも筆頭格のものはクック版となっている。クック版は1960年にラジオ放送にて第1稿(欠落あり)が初演されたが、アルマ・マーラーが出版を差し止めている。その後アルマ・マーラーの協力を得て欠落した部分を修正した第2稿が誕生、第3稿第1版を完成させてクックは亡くなった。今回のものはクックが亡くなってからゴルトシュミットとマシューズ兄弟が手を加え、完成させた第3稿第2版である。ちなみにラトルは第3稿第1版もボーンマス交響楽団と録音を残している。

 第1楽章、冒頭からヴィオラのみで演奏される不気味な序奏主題には少なくとも「死」のイメージが感じられる。これまでの交響曲で感じられた緩急は一切なく、一定のテンポで演奏されたこの楽章は、最終局面になったところで不協和音をオーケストラ全体が奏でる。その中でトランペットが演奏するAの音が強調される。この意味はアルマ・マーラーのイニシャルから来るということは言うまでない。ベルリン・フィルがマーラーの交響曲を、しかも10番の補筆版を演奏している時点で価値があると言える。演奏は全体的にバランスが良く、まさに完璧と言える演奏となっている。弦楽器のまとまりも素晴らしく、重厚感も凄まじい。先ほど触れた不協和音の箇所にあるトランペットのAもどこか悲観的で苦しみすら感じられる。

 第2楽章、前作である交響曲第9番の第2楽章に似たスケルツォ楽章。終始荒々しく、息をつく間すら与えてくれない。金管楽器のパワーが光る中、弦楽器によって先導されるこの楽章のやけになっている感じときたらどこか面白さを感じる。

 第3楽章、「プルガトリオ」と書かれたこの楽章、自身の歌曲である「少年の魔法の角笛」からの引用やリヒャルト・シュトラウスの歌劇「サロメ」の関連性が強いとされている。約4分と短いながらインパクトをしっかりと残してくれる楽章。穏やかに進んでいた音楽が突如として豹変し、破壊の限りを尽くしたのはなんなのか?この荒々しい楽章を忠実に再現できている演奏と言えるだろう。

 第4楽章、再びスケルツォ楽章に戻る。スコアには「悪魔が私と踊る。狂気が私にとりつく。」と書き込みがある。全体的に力強さが象徴されている。大地の歌や交響曲第5番など一部も引用されており、一種の振り返りがされる。最後は静かに終わるが、突如としてバスドラムの連打が始まり、第5楽章へアタッカする。第5楽章は地獄を見ているかのように苦しみが伝わってくる。不協和音がこだまし、これはマーラーの作品か?とも考えてしまう。普段この曲を聴き終えた後、何とも言えない気持ちになるので普段から積極的には聴かないこととしている。ベルリン・フィルは最後にして最高の難曲を最高峰の完成度で演奏してみせた。クック版を繰り返し指揮しているラトルだからこそなせたものが今回の演奏にはあるはずだ。

 現在までに数多くの名盤を残してきたラトル、2023年に就任するバイエルン放送響ともすでにいくつか録音を残しているが、個人的にはぜひともワーグナーの「ニーベルングの指環」の続きを録音していただきたいところだ。「ラインの黄金」、「ワルキューレ」まではすでにCDが発売されているので、その続きを聴きたいというのが個人的な願望である。