第633回「ヴァント生誕祭、大好評となった北ドイツ放送響とのブラームス交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日1月7日はギュンター・ヴァントの誕生日です。今年で生誕109年となります。ヴァントとといえばブルックナーやベートーヴェンを思い浮かべる方がほとんどかと思いますが、ブラームスも忘れ難い名盤です。今回取り上げる1995〜1997年にかけて北ドイツ放送交響楽団とライヴ録音した交響曲全集は廃盤となった今でもなお人気の高い演奏として語り継がれています。今回その大好評となったブラームス交響曲全集が手に入ったのでそちらをご紹介したいと思います。


「ギュンター・ヴァント指揮/北ドイツ放送交響楽団」


ブラームス交響曲全集


ブラームス作曲:

交響曲第1番

交響曲第2番

交響曲第3番

交響曲第4番



 ヴァントの演奏でブルックナー、ベートーヴェンは比較的早い段階で聴いてきたが、ブラームスは初めてだったかもしれない。実際その演奏を聴いてみるとこれは非常に素晴らしい出来栄えで、廃盤となった今でも多くの人々が欲する点がどことなくわかった気がする。今回の演奏はいつものような「渋く、重厚的なブラームス」ではなく、「硬派なブラームス」という風に語られることが多い。これに対して好みははっきりと分かれるのだが、聴いたことがない人にとっては新鮮に感じると思う。

 交響曲第1番、第1楽章冒頭の一歩一歩しっかりと踏みしめて進んでいく気配はなく、どんどんと進んでいく例えるならやや早歩きと言ったところだろうか?当盤のレビューで多く書かれている「硬派なブラームス」を印象付ける演奏であると聴き終えた後に述べておく。これまでそれなりの数を聴いてきたが、ここまでキビキビとしたブラームスは久石譲の演奏以来だったような気がする。往年の巨匠たちとは正反対の演奏だろう。細かなテンポ変化も面白いところで、基本一定ではない。ゆっくりかと思ったら加速することが多い。弦楽器の鋭さも特徴的で、それに対して合いの手を出すように活気のある金管楽器が鳴らされたり、緩徐楽章等では安らぎを持って木管楽器が演奏する。今回の全集はぜひともこのブラ1(交響曲第1番)を最初に聴いていただきたい。

 交響曲第2番、第1楽章を聴いていて「意外と硬派ではない?」と思っていたら徐々にその形が形成されていき、ブラ1と同じスタイルが曲の中で完成していくのがわかった。しかし、先ほどよりも歌う場面が増えるこの曲では硬すぎるというわけではなく、やや硬めといった印象だろうか?キレの良さは第3楽章及び第4楽章で姿を現し始める。それまでは割と伸びやかに演奏されている気がする。ブラ1の王道感とはまた違い、親しみやすい交響曲の姿がここにあると言える。

 交響曲第3番、ブラームスの交響曲の中でも比較的演奏時間も短く、親しみやすい作品。最初に述べたように「硬派なブラームス」という面が押し出されている当盤だが、それが最も効果的に発揮されている気がするのがこのブラ3(交響曲第3番)だと私は思う。それはおそらく実際に演奏したことがあるからということもあるのだろう。硬めでやや鋭さもある弦楽器の音色が非常にこの曲とマッチしている。全体のバランスも良く、特に第2楽章の牧歌的な木管楽器、第3楽章の悲観的なチェロの旋律など音色もぴったりだ。第4楽章ではキレのある演奏で度肝を抜かれること間違いなしである。

 交響曲第4番、「美しいものには毒がある」。まさにこの言葉がふさわしいとも言えるような交響曲がブラ4(交響曲第4番)だと私は考えている。近年第1楽章冒頭に削除された何小節を加えたものも見受けられるようになってきたが、やはりいつものヴァイオリンの美しい音色から始まるのが一番だと思う。ヴァントにおける「硬派なブラームス」最後の交響曲となった今回の演奏、この演奏では正直硬派な印象はあまりない気がする。全体的にまとまりがあり、非の打ち所がない。ヴァントにおけるブルックナーは聴きどころ満載でいつ聴いても飽きないが、このブラームスも同様だなと聴き終えた後に感じている。弦楽器に自由性が増しており、解放感に満ちた演奏といえるだろう。

 昨年よりヴァントの名演がSACDで復刻されているのは一部の方はご存知だと思う。その中にはブルックナーやベートーヴェンはもちろん、ブラームスの演奏も収録されている。こちらは現状発売されるたびに購入している。後日一つずつ取り上げたいと思っているが、ヴァントの演奏は正直ハズレがないと言えるような気がする。悔やまれることはベルリン・フィルとのブルックナーの交響曲録音が全曲に至らなかった点だろうか?とはいえ、他のオーケストラとは交響曲全集を残していたりするのでそちらも注目したいところ。本日はそのうちの一つとして北ドイツ放送響とのブラームス交響曲全集を取り上げたが今回の仕様はSACDハイブリッド仕様、通常CD盤もあるが音質的な面では今回の盤が勝る。それに故に人気なため廃盤となった今でも人気があるわけなのだが。仮に、店頭に並んでいるのを見た場合即購入していただくことをオススメしたい。みなさんの期待を裏切らない演奏であると断言できる。