第632回「スクリャービン生誕祭、スヴェトラーノフによる圧巻の交響曲、管弦楽曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日1月6日はアレクサンドル・スクリャービンの誕生日、今年で生誕149年となります。来年2022年は生誕150年ですね。本日はスクリャービンの代表的な名作を揃えた交響曲、管弦楽曲全集を取り上げていきたいと思います。指揮はエフゲニー・スヴェトラーノフ、オーケストラは名盤の数々を残してきたロシア国立交響楽団の名コンビです。レーベルも力が入っており「オクタヴィア・レコード」からの発売です。SACD仕様ではないところが残念ではありますが、そうでなかったとしても高音質で楽しめるロシアン・サウンドは興奮で震え上がること間違いなしの仕上がりとなっています。


「エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮/ロシア国立交響楽団」


スクリャービン交響曲、管弦楽曲全集



 思えば当盤を初めて聴いたのは大学時代のこと。交響曲第5番「プロメテウス」を授業で習い興味を持ったため、そのまま図書館にCDを借りに行ったことを覚えている。今回取り上げる全集はその時に借りた物である。(ただパソコンから削除してしまっていたため、改めて購入し直した経緯がある。)スクリャービンの代表作の多くはピアノ曲が多いが、交響曲も素晴らしい物を残している。今回は交響曲に視点を置き、再発見に繋がればと思う。

 前期に部類される交響曲は第1番、2番、3番である。(ここに部類される作品として、後の神秘和音時代に繋がる作品が一部見受けられる。)まず交響曲第1番は6楽章形式で第6楽章の最後に合唱が追加される。いわゆるベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」を雛形とした作品だ。初演当時は第6楽章だけ省かれ演奏されたりと、中々全曲演奏はされなかった模様。今回は待望の全曲録音で、時より映画音楽やオペラのように思える点もありつつ、作品を楽しむことができる。ロシアならではの金管楽器の特徴的な音色も注目すべき点であると勧めておく。交響曲第2番は合唱なしの純粋な管弦楽のみの作品、構成としては5楽章形式なのだが、「第1楽章→第2楽章」、「第3楽章」、「第4楽章→第5楽章」という形に分けられる。それぞれ第3楽章以外は基本アタッカで演奏されている点に加えて「緩急→緩→急緩」という曲の構成となるためシンメトリーな3楽章の交響曲とも取れる。壮大なる交響曲で非常に劇的な印象、スヴェトラーノフとロシア国立響による名コンビによって、この演奏が再び傑作としてこの世に戻ってきたと言っても良いだろう。まとまりある弦楽器のしなやかさと活気のある金管楽器群は聴き手を心地良い世界へ導いてくれる。交響曲第3番「神聖な詩」と題されることが多いこの曲は、3つの楽章からなる作品で、まず序奏がトロンボーン及びトランペットによって演奏される。各楽章には名前があり「闘争」、「悦楽」、「神聖なる遊戯」と付けられている。演奏時間も劇的で壮大だ。

 後期にあたる神秘和音時代に入る。まず交響曲第4番、「法悦の詩」という名前で親しみがあると思う。スクリャービンを代表とする名作の一つである。単一楽章のこの曲はこれまで作られてきたスクリャービン作品と異なり決まった調性がない。いわゆる無調となっている。編成は4管編成の大オーケストラ作品と拡大化、後の「プロメテウス」もそうだが、この曲としてトランペット、フルートが重要な位置にあると考える。今回の演奏として、ダイナミック・レンジの幅が広い。作品としては複雑ではあるものの、非常に聴きやすい印象を受ける。トランペットの音色も聴き慣れたもので好みであるし、強弱の差も十分に付けられている。「急→緩」や「緩→急」の切り替えも上手い。そして最後の交響曲となった交響曲第5番「プロメテウス」、色光ピアノという特殊楽器を使用する。その特徴は、さまざまな色彩と照明を和音によって鍵盤で演奏しながら操作するという楽器である。実際に何の和音が何色とスコアに記載があるので、ぜひ見ていただきたい。編成は4管編成の大オーケストラに加えてオルガンやハープ、混声四部合唱そして色光ピアノという最大級の編成となっている。そのためほとんど演奏される機会がない。仮にこの曲の演奏会が披露されたのであればその空間は別世界となることは間違いないだろう。「法悦の詩」と同じ神秘和音を使用している交響曲だが、事実上ピアノ協奏曲でもある。メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」もそれなりの衝撃を与えた作品だったが、今回の「プロメテウス」も同様の衝撃を与えたことは間違いない。録音数もそこまで多くないのだが、スヴェトラーノフによる演奏はブーレーズ盤と双璧を成す素晴らしい演奏だと個人的に感じている。ブーレーズ盤は冷酷さが残る。今回の演奏は儚いが、壮大なるスケールがあり、さらには強大なエネルギーを秘めている。まさにその名前の通りの演奏だろう。ダイナミック・レンジの広さも注目すべき点で、ピアノとオーケストラのバランスも非常に良い。

 スクリャービンの交響曲は今日において全てが評価されているわけではない。しかし、実際に一曲ずつ聴いてみるとその時代の影響であったり、現代音楽の痕跡が感じられたりする。スクリャービンを現代音楽作曲家の一人として扱うことはしないが、間違いなくその扉を開くきっかけを作った人物の一人であることは間違いない。来年はスクリャービン生誕150年となるが、その時までにスクリャービンの他の作品を聴き予習しておきたいと思う。