岬の兄妹 <Siblings of the Cape> | 韓国映画ひくほどLOVE ~時々ぴょんて

<ヒューマン・大人>

  監督:片山慎三

  出演:松浦祐也、和田光沙

 

 

なんだか韓国映画っぽいなぁと思っていたら。片山監督はポン・ジュノ監督の元で助監督をしていたんだって。

 

気になる作品が韓国と関わりがあったって。妙に納得。

最近も、気になる(日本人)俳優さんを見つけた!って騒いでいたら、みんなに「韓国人っぽい」と言われた。

杉野ようすけ君。。。B1A4ジニョン君に似てるもんなぁ~。嗜好ってのは変わらないのかなぁ~。

あ。このままKPOPとか語り始めたら困るので。この辺で止めますが(笑。

 

で。

日本映画で、監督も日本人。まさに番外なんですけども。ポン・ジュノ監督つながりで。書きました。

なぜなら。

アングラ系韓国映画好きな方にぜひ観て頂きたいし。和田光沙さんの演技、凄かったよって。お伝えしたいし。

 

取り敢えず。強烈です。

性描写やその他の場面もかなり過激なので。(R15ですが)完全に大人向け。

 

悪い男』的なのと、『オアシス』的なテイストも混ざっている感じなんだけど。。。「男女」ではなく、「兄妹」ってところが。異様な切なさをプラスしているんだよね。

男女はあくまで、選んでいる、訳だけど。兄妹は無条件のつながりで。無償の愛情だから。

だからこその切なさが。満ち満ちているんですよ。

 

内容を見ると、貧困と無知の中であえぐ。懸命に生きる・・・とか言いたくなっちゃうとこだけど。

あえぐ、と言うより、生きる。

懸命に、もちょっと違う。

 

障がいを持つ妹を世話するお兄ちゃんが、とんでもない事をする。。。でも、お兄ちゃんはずっと優しい。妹を守っている。悪魔に変わる訳じゃない。

とんでもない事をさせられているはずの妹は、あくまで可愛いらしい。

「分かっていない」のはそうなんだろうけど。それを超えた、人間としての「何か」を感じてしまっている。

そんな二人の描き方が絶妙で。「あえぐ」とか「懸命に」とかを排除して、ただ「生きている」と表現したくなるんだよね。

それがこの作品の、一番良いところだと私は思うわ。

 

あと。

観終わった後、誰かが「福祉を・・・」とか言ってるのを耳にして、あぁ、そっかと。気付いたのだが。

なぜ助けをかりず、2人だけでそうなっちゃうの?って事よね。

 

福祉に頼らずに(貧困による)一家心中とか。子供を餓死させた母親も実際にいたけど。

様々な理由があるにしても、意地とか無知も、その一因だと思うの。

我が母は、「貧乏だけど絶対に生活保護は受けない」が口癖だった。これは意地。

子供を餓死させた母親が、なぜ助けを求めなかったかと聞かれ、「思い付かなかった」と。これは無知。

おとなしくて、他人と交流せず殻にに閉じ籠る性格の場合、当然誰もが知っていると思われる事さえ、全く知らずに生きている人もいるからね。

 

この作品の唯一の失敗と思われるのがそこだわ。

お兄ちゃんは無知なんだと、納得出来るタイプではあるけれど。周りがマトモ過ぎた。気にかけてくれる上司や、近しい仲の警官までいるんだもの。彼らが行政の介入を求めないとは考え難い。だからより強い違和感を持ってしまう人がいるんだと思うな。

 

あの二人のキャラは、この矛盾を無視するにはちょっと邪魔な存在なのよ。そこが勿体なかったかな。。。ってまぁ、韓国映画で矛盾に慣れ切っている私は、華麗にスルーしましたけども。

韓国映画って、エンターテイメントの為なら小さい矛盾は気にしない。必要であれば、かなり大きい矛盾も気にしない。

 

そうね。あとは。やっぱり女優さん。

『オアシス』のムン・ソリさんの演技を見た時にも驚いたけど。和田光沙さんはムン・ソリさんの演技に独特な可愛らしさが加わっている感じなの。

障がいの違いは勿論あるけれど、光沙さんの風貌や、そのしぐさによるところが大きいんじゃないかと思う。

 

こういう作品を観たらきっと、胸がキリキリ痛くなるんじゃないかと覚悟しておりましたが。。。観終わってみると全くそんな感じはなく。

かと言って、泣くとか笑うという事も無かったんだけど。

 

底辺で生きる兄妹と、彼等を囲む人々。。。誰が良い人で悪い人なのか。何が良い事で何が悪い事なのか。

常識や自分の価値観では簡単に答えの出ない世界感が、じんわりと胸に染みた事だけは間違いないです。

 

韓国映画ブログを書いてはいても、総体的にはアメリカ映画や邦画を観ている数の方が明らかに多い私ですが。

それぞれ個性があって。違う面白さがあると思うのよ。

そんな中でこの作品は、悲壮感漂いそうな内容を(邦画にありがちな)お涙頂戴に持っていかず、過激なのに、良い意味で明るく。あっけらかんとした雰囲気に包まれている。

私が韓国映画を楽しんでいる要素がちょっと垣間見える、何とも気になる作品なのでございますよ。