<ヒューマン>
監督:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング、ムン・ソリ
ずっと観たいと思っていたこの作品。『タクシー運転手』と2本立てでリバイバル上映していたので。喜び勇んで観て参りました。
両方、光州事件が題材なんだよね。全く逆側からの視点で。『タクシー運転手』が事件に巻き込まれた中年男性の2日間の話なのに対し、こちらは事件により人生が狂ってしまった、ある青年の一生。
光州事件を題材にした作品はいくつか観ているけれど、国家や兵士側からの視点で描かれたものは一つも観た事がないわ。
あったとしても、それほど少ないって事だよね。その辺の事情は想像に難くないけれど。
この作品もがっつり光州事件が絡んでいる訳ではなく。実際の事件部分はほんの少し。
けどその、彼の人生にとってほんの一部であるはずの出来事が、彼の心を崩壊してしまう。そう考えたら一つの事件と言うのは、直接的に巻き込まれて亡くなったり傷付いたりした人の何十、何百倍の人々の人生に影響を与えている。
事件概要を分かりやすく扱っている作品は勿論の事、このようなアプローチもまた貴重で。勉強になるし。心の糧になるし。本当に良い作品だと思います。
そして何より、この作品を観るとソル・ギョングさんの凄さが良く分かるよ。
20代から40代までを演じているんだけど、全く違和感がないんだもん。ピュアーな青年から汚れた中年まで。本当に見事。
違う年代で、ベッドシーンがそれぞれ出てきますが。彼の人となりを上手く表現していて、非常にチョアです。
個人的に『美しい私の花嫁』の部長さん。又は『ナイショの恋していいですか?』のチーム長でお馴染みチョ・ハンチョルさんが、セリフの無いチョイ役で出ていて驚いた。若い!
今では、ちょいと面白キャラの、有名な脇役俳優さんですから。
最後に。
ソルギョングさんの演技力の凄さは、彼のどの作品を観ても明らかなのですが。特に、この作品同様、ムン・ソリさんと共演したイ・チャンドン監督作品、『オアシス』をおススメしておきます。
ちょっとマニアックな作品ではございますが。彼らの演技力の素晴らしさを、十二分に堪能出来ますわ。