鎌倉散策 北条泰時伝 五十五、御成敗式目二十一から三十二条 | 鎌倉歳時記

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定年後、大好きな鎌倉での生活に憧れ、移住計画や、その後の鎌倉での生活の日々を語ろうと思います。家族を大阪に置き、一人生活を鎌倉の歳時記を通し、趣味の歴史や寺社仏閣等を綴っていきす。

 御成敗式目第二十一条、妻妾得夫讓、被離別後,領知彼所領否事:妻妾、夫の譲りを得て離別せらるる後は、彼の所領を領知するや否かの事(妻や妾に相続した土地の、離別後の扱いについて(離別した妻や妾に落ち度があった場合は、与えた土地を取り返してよい。しかし、新しい妻や妾をかわいがり、何の落ち度もない前妻や妾を離別した時にはその前妻や妾に与えた土地を取り返すことはできない。※事例としては以下の件があった。市川見西と申す者の妻、藤原氏の女は離別されたため、かねての契約通り、見西が自分に所領を与えるよう訴え出た。ところが見西は、妻が落合泰宗と密通していたという罪科があるから応じられないと反論した。そのため、荏柄社に参籠して無実だという起請文を書かなければならなくなった。参籠には実地検分役が二名立ち会った。その結果、無実が認められて、約束の所領と屋敷は藤原氏の女(妻)のものとなった。見西は、密通罪を利用して契約の所領を与えまいとしたが、見事に失敗した。

 第二十二条、父母所領配分時、雖非義絶、不讓與成人子息事:父母の所領分配の時、義絶に非ずと雖(いえど)も成人の子息に譲り与ええざる事(離別した先妻の子供に与える財産の事について)。家のためによく働いた子供であるにも関わらず、後妻や、その子等に後継ぎの座を奪われてしまった者には、相続の際に嫡子相続分の五分の一をその子供に分け与える事。しかし、離縁前に多少なりともその子に財産が分け与えられていた場合その分を差し引いても良い。しかし、その子供が怠け者であったり、不幸者であった場合はその必要がない。

 

 第二十三条、女人養子事:女人の養子の事。夫婦に子供が無く夫が「頼朝行の時から」認められている事であり、何ら問題はない。「頼朝公の時から」認められている事であり、何ら問題はない。

 第二十四条、讓得夫所領後家、令改嫁事:夫の所領を譲り受けたる後家、改嫁(かいか:再婚)せしむる事(再婚後の所領について)。夫の死後、妻はその菩提を弔い、式目の定めたとおりに働かなくてはならない。にもかかわらず新しい夫と結婚するというのは良くない行いである。後家が再婚する時には、亡き夫から遺産相続された領地を、亡き夫の子供に与えなければならない。子供がいない時には別の方法を考えて処分する。

第二十五条、關東御家人以月卿雲客爲婿君、依譲所領、公事足減少:関東の御家人、公卿を以って婿君と為し、所領を讓に依って公事の足減少する事(御家人の婿となった公家は、武士としての働きを行う事)。公家といえども御家人としての働きを行う事。父親が罪名中の代行は許されていても、父親の死後はその者が御家人として働かなくてはならないからである。それでもなお、公家としての実家の権威を利用して怠る場合は、所領を相続することを辞退させる。また、武家の娘が幕府内で働くときに公家のしきたりを入れてはならなず、そのような者は所領を治めてはならない。

 

 第二十六条、讓所領於子息、給安堵御下文之後、悔還其領、譲與他子息事:所領を子息に譲り、安堵(法的確認)の御下文を給わるも、後、その領を悔い還し、他の子息に譲り与うる事(相続した土地を別の子供に相続しなおす事)。御家人が所領を子供に相続し、将軍から証明書をもらっても、父母の気持ちによって他の子供に相続を替える事ができる。※『死後の譲り状』が有効とした条文であり、現代の法と同じである。

 第二十七条、未處分跡事:未処分の跡、父母が譲り状を書き渡さぬうちに死んでしまった所領の事(未処分の財産の配分)。御家人が相続のことを決める前に死亡した場合は残された財産を働きや能力に応じて妻子に分配すること。

第二十八条、搆虚言致讒訴事:虚言を構えて讒訴を致す事(偽りの訴えをしてはならない)。言葉巧みに人をだますことは大変に重い。所領を望んで虚偽の訴えを起こした者は、その者の領地を没収する。領地が無い場合は遠流(おんる)とする。また、役職が欲しいために人を陥れるような嘘をついた者は、その職に就く事は出来ない。

第二十九条、閣本奉行人、付別人企訴訟事:本奉行人を閣(さしお)きて、別人について訴訟を企つる事(本来の裁判官を差し置いて、別の裁判官に頼む事の禁止について)。裁判を有利に進めるために、相当の裁判官に頼むことがわかった場合は、調査の間しばらく裁判を休む。そのような事があってはならないからである。係りの者はそのような二重の取次をしてはならない。また、裁判が長引き、二十日以上かかった場合は門注所において苦情を延べることができる。

 

 第三十条、遂門註輩、不相待御成敗、執進權門書状;門注をツ遂ぐる輩、御成敗を相待たず、検問の書状を執り進むる事(門注所の判決を待たずに有力者の書状を手出しし、裁判を有利に進める事の禁止)。有力者を知る者は得をし、そうでない者は損をするという不公平な裁判を行うと門注所そのものが信頼を失ってしまうので禁止する。それぞれの言い分は裁判中で述べること。

 第三十一条、無道理不蒙後裁許輩、爲奉行人偏頗由訴申事:道理無きに依って御成敗を蒙(こうむ)らざる輩、奉行人の偏頗(へんぱ:えこひいき)たる由、訴え申す事(裁判官を訴える事の禁止と、誤った裁判の防止)。偏った裁決だと裁判官を訴えた場合は領地の三分の一を没収し、領地が無い場合は追放する。但し、誤った裁決を行った場合に緒はその裁判官をやめさせる。※該当する様な裁判官が現実に存在しなかったからこそこの条項があるのだが、現代でも『裁判官の弾劾裁判』として存在する。

 第三十二条、隱置盗賊悪黨於所領内事:盗賊・悪黨を所領内に隠し置く事(盗賊や悪党を領内に匿う事の禁止)。地頭は領内に盗賊がいることがわかったら、速やかに逮捕する事。また、地頭が賊徒を匿った場合は同罪とする。もし、その疑いがあった場合鎌倉で取り調べを行うのでその期間中に地頭額に基に変える事を禁止する。また、守護所の役人が入れないところ(地頭の支配外の場合)に賊徒がいたと分かった場合、家来を遣わして速やかに逮捕すること。これを行わない地頭は辞めさせて、代行の者を置くこと。 ―続く―