鎌倉散策 長谷寺歳の市とライトアップ | 鎌倉歳時記

鎌倉歳時記

定年後、大好きな鎌倉での生活に憧れ、移住計画や、その後の鎌倉での生活の日々を語ろうと思います。家族を大阪に置き、一人生活を鎌倉の歳時記を通し、趣味の歴史や寺社仏閣等を綴っていきす。

 

 長谷寺の歳の市は一年の最後に観音様を納める縁日を行う日で、長谷寺では「納め観音」法要が十時から行われ、「御足参り」が十一時から始まる。「御足参り」は普段は観音堂の中敷きから拝観するが、この日は中に入り観音様の足に直接触れる事が出来、御慈悲をいただくのだ。本尊の十一面観音は開山の徳道上人が養老五年(721)に一体の楠の霊木から二体の十一面観音を作り、二体の内の一体は奈良の長谷寺に祀り、もう一帯は縁のある地にたどり着くことを祈り海に流したと言う。十六年後の天平八年(736)相模国三浦の長井に流れ着いたと言い、その際、尊像は光明を放っていたと言われ、鎌倉に移され、新長谷寺として建立し、本尊として祀られた。

 

 長谷寺は観音堂に安置されている十一面観音を本尊とする浄土宗(単位)の寺院である。木造では日本最大級の九・一八メートルの本尊の十一面観音(国宝)は長谷観音として庶民に親しまれている。漆箔張りの寄木造りで金色に輝き、他の十一面観音と異なり、左手に蓮華を差した花瓶を持ち、右手に錫杖を持つ独特な容姿は長谷寺系と言われ、現世利益の観音菩薩と、入滅後の来世を救済する地蔵菩薩の二つの慈悲を併せ持つ仏像である。

 

 昨年、暖冬で日中に来たため、汗ばむくらいであり、歳の市は、さほど盛り上がりに欠けていいた。今年は寒冬で、この週半ばから今年一番の冷えこみが襲っている。十二月十八日、夕方から長谷寺が拝観無料になりライトアップされることを知り、今年は夕方の五時過ぎに着くように長谷寺の歳の市に向かった。長谷寺参道に着くと露店が開かれ、熊手、神棚、達磨を売る店や昔ながらの露店が並んでいたが、コロナウイルス感染症により出店も昨年より少なくなっていた。何やら今は、長谷寺のライトアップを見に来る人の方が多く、縁起物を買い求める歳の市の風景も変わりつつあるとの事だ。

 

 長谷寺の山門の赤い提灯をくぐると、結構、人の多さが目立ち、境内に入るとライトアップされた紅葉が見事に映えており、人々が景色を写真におさめていた。また、山の斜面に立つ長谷寺は観音堂に上がるまでの要所に見事な紅葉を色付かせた木々に照明が当てられ、その美しさは鎌倉でも群を抜いている。池の周りには青の照明も趣きがあり、それぞれの照明が役割に応じて演じているようだ。また、観音堂に上がると西の空に三日月の細い光が観音堂の廂を通し見る事が出来き、稲村ケ崎から逗子に至る海岸線の夜景を見る事できる。

 

 この様な歳の市は鎌倉の各寺院で行われていたと言われるが、今では長谷寺だけが残る行事になってしまったと言う。この様な歳事はいつまでも残してもらいたい物だ。大晦日には万燈籠が行われるとの事で、志納を納め、その燈籠に願いを書き込み大晦日の十一時に観音堂前で灯されるとの事である。