鎌倉散策 立秋 蒙霧升降す | 鎌倉歳時記

鎌倉歳時記

定年後、大好きな鎌倉での生活に憧れ、移住計画や、その後の鎌倉での生活の日々を語ろうと思います。家族を大阪に置き、一人生活を鎌倉の歳時記を通し、趣味の歴史や寺社仏閣等を綴っていきす。

  立秋の末候は蒙霧升降す(のうむしょうこうす)。深い霧が立ち込めるころ。春は霞たち、秋は霧けぶる空模様を表す。今年は八月十八日から八月二十三日のあいだである。旧暦がほぼ一月後で、ずれているので興味を持たれない人が多いが、二十四節気を知ることで、ほぼ一月の間にゆっくりと季節感を楽しむ事が出来る。

 お盆が過ぎ鎌倉も夏の終わりと思いしや、新暦ではまだまだ残暑が厳しい。鎌倉に来て初めての夏、暑いが、今までの大阪に比べると、まだ過ごしやすい。緑がそうさせるのかもしれない。夜はまだクーラーをつけていない。住居の構造にもよるのだろう。大阪は本当に緑が少なく、アスファルトの照り返しがきつい。梅雨明けから秋の彼岸まで暑さが続く。しかしこの数年の関東地方の酷暑日は経験したことがないが、四十度にはかなわない。

残暑が続くこの時期、どうしても食欲が落ちる。鎌倉に来て、週一程度で市内の和食店、居酒屋に行くが、「今が旬です」と言う魚に出会う事が少ない。先日、腰越のしらすやさんに行き、スズキの刺身定食をいただいた。さすが腰越で取れた旬の魚、歯ごたえがあり、スズキ独特の臭さはない。その日に獲れる魚の為、日によってお刺身が違ってくる。三年前ほど前に訪れた時は、ちょうど九月の末でオニカサゴの刺身をいただいた。この時は歯ごたえと言い、もちもち感と言い、最高のお魚を食べさせていただいたことに感激した。

関西人、特に京都、大阪の人間は決まった時期、日に決まったものを食べないと気が収まらず、落ち着かない(特に京都人)。夏の魚としては、鮎から始まり、かんぱち、こち、鰻、ウニ、アナゴ、太刀魚、真蛸、カサゴ、ぐち、イワシ、シマアジ、そして子持ちになった落ち鮎(これは高価である)で終わる。その後、秋、冬の旬の魚に移る。

忘れていけないのは鱧である。一寸(三センチメートル)を二十四回から二十六回を骨切包丁で骨切りをする。この骨切りで鱧のおいしさが違ってくるので、骨切りの上手な店の鱧の味が違ってくる。湯引きしてから氷水で締め、基本的に梅肉で食べるが、酢味噌でも食べる。また、夏の暑い時期でも鱧鍋をする。今では白昆布汁が売っているため、簡単にできる。カツをだしでは鱧の味が消えるので薄口しょうゆと昆布汁、鱧の頭と骨でだし汁を作る。それに泉州産か淡路島産の玉ねぎを入れ、骨切りした鱧を入れて食べる。各家庭により、少し水菜を入れたり、三つ葉を入れたりする事もある。スーパーに行くと、何処でも、何時でも、鱧はこの時期売っている。割烹に行くと、この時期、ハタ科のアコウ(キジハタ)と言う魚のしゃぶしゃぶが美々であり、たまに百貨店の魚売り場や鮮魚専門店に出る。

正直、鎌倉に来てよかったが、恋しくなる。家族にではなく、食べ物に。

 

写真は京都花見小路と石塀小路