鎌倉散策 大暑 大雨時行る | 鎌倉歳時記

鎌倉歳時記

定年後、大好きな鎌倉での生活に憧れ、移住計画や、その後の鎌倉での生活の日々を語ろうと思います。家族を大阪に置き、一人生活を鎌倉の歳時記を通し、趣味の歴史や寺社仏閣等を綴っていきす。

大暑、末候、大雨時行る(たいうときどきふる)

夏の雨が時に激しく降るころを指し、むくむくと青空に広がる入道雲が夕立になる。

梅雨明け前に比べ、日中はさすがに暑い。梅雨明けと同時に蝉時雨が襲ってくる。七十二候のように大雨時行る、のように夕立でも降ってくれれば少しは涼しくなるのではと考えるが、一切降らない。しかし、夜になると今でもクーラーはもちろん、扇風機も付けずに、網戸だけで十分眠る事が出来る。大阪にいたころは毎年七月一日から九月二十日まで、各自の部屋のクーラーはフル稼働であった。急冷期に消費電力が多くかかるため、つけっぱなしの方がコスト的に安いらしい。

 昼間はもうどこにも行きたくない状況だが、夕方になると鎌倉市内に出たくなる。酒につられ、美味しい魚につられ、小袋谷のバス停まで汗だらけになりながら十分かけて降りる。梅雨明けしてからは、観光客もずっと減り、バスで鎌倉駅まで二十分はかからなくなった。今日の目的の店はおでんの「野分」さん。以前から一度訪れたい店であった。夕方の五時から店は開いているようで、本を買った後、五時過ぎに店に入った。カウンターは6席ほど奥に3から4人の部屋のような畳敷きになっている。お通しが日替わりの三品盛になっている。老年の着物姿のおかみさんが昭和を物語っている。すでに、二人組と一人で来られている常連さんがおられた。ビールをまず頼み、三品盛りの冷ややっこ、大根おろしの白洲合え、小松菜のお浸しをいただく。ヒラメのお刺身と山芋短冊をいただき、またしてもビール。トマトおでんを楽しみにしていたが、美味しいヒロウス(こちらではガンモドキ)が有ったので、それと大根とちくわを頼み日本酒に切り替える。常連さんと何気なくお酒の話になり、京都、奈良の酒の旨口の酒を語る。常連さんが、年のせいか最近辛口のお酒より、甘口のお酒を好むようになったと言われ同感、同感と話を弾ませた。辛口で、精米歩合四十パーセント、仕込みも手間いらずで、値段だけあまりにも高い酒にうんざりして、酒のみがこだわる酒を追い求めている。私の日本酒観を変えたのは石川県の菊姫山廃寺込み、黄金色に染まる酒の旨さは格別である。奥に一人で来られている常連さんは奈良によく行かれるということで、今井酒造の春鹿を好まれているとの事だ。吉野や宇陀市にも小さな良い酒蔵があり、芳村酒造さんの清酒千代の松等を試していただきたくお願いした。常連さん達と何気ない会話からアメリカンフットボールの話し等もし、楽しいお店を見つける事が出来た。もつ煮も食べてみたい一品だが、涼しくなってからにしようと店を出た。おかみさん、常連さんありがとうございました。

 そしていつものBarに行く六時四十五分扉を開けようとすると、水着の女性が横を通る。聞いてはいたが、由比ヶ浜ならではの風景である。マスターと挨拶をし、今見た水着の女性の話をすると、話したことのない、いつも顔は合わせる常連さんに、「一緒に入ってきたらよかったのに」と楽しそうに話す。私もできればそうしたいのだが、もうそのような勇気はどこかで亡くしてきてしまっていた。カウンターに座ると、マスターが「頂いたお酒すごかったです。驚きました。あんなに甘口で旨口で、飲んだ後はさっぱりして、どの食材にも合うので、まだ少し残しているんです」と矢継ぎ早に言われた。七月に義父の一周忌に大阪に帰った際、奈良の知人に挨拶に行った帰りに買って、お土産に持って来た日本酒である。好みもあるが、そう言って貰って嬉しかった。醸造所が小さいため、奈良でも取り扱っている店は一、二件ぐらいと聞いている。郵送販売はしていないようで、販売店がわかれば、簡単に購入ができます。また少しずつ、種明かしをしていきます。いつものジンソニックとアードベック十年の水割りを飲んで、マスターから、この暑さですから由比ヶ浜に海水浴でも行かれたらどうですかと言われ、目の保養に良いなと考えながら、店を後にした。