鎌倉散策 杉本寺 | 鎌倉歳時記

鎌倉歳時記

定年後、大好きな鎌倉での生活に憧れ、移住計画や、その後の鎌倉での生活の日々を語ろうと思います。家族を大阪に置き、一人生活を鎌倉の歳時記を通し、趣味の歴史や寺社仏閣等を綴っていきす。

 鎌倉で人気の高い寺院である。休日にもなると金沢街道沿いの浄妙寺、報国寺、杉本寺の参拝者が一気に増え、帰りの鎌倉駅へのバスは小町通り以上になる。本来、浄妙寺、報国寺、杉本寺をブログに連続して載せようと思っていたが、住所ごとに分けると浄明寺、報国寺は浄明寺、杉本寺は二階堂で、今回二階堂の寺院の続きで記載させていただいた。

鎌倉で最も古いとされる寺院であり、鎌倉幕府が開かれる五百年前に建てられた。杉本寺の建立は天平六年(734)で、長谷寺は天平八年創建であるため杉本寺の建立が二年早い。鎌倉では珍しい宝戒寺と同じ天台宗の宗派の寺院である。

 杉木立の中、両脇に「十一面杉本観音」と書かれた白旗が続く石段を登ると左右に仁王(運慶作)を配した茅葺の仁王門がある。仁王門をくぐると、杉本寺の写真の撮られる有名な、苔むした階段があるが、通行禁止になっている。仁王門右手に弁天堂がある。苔の階段の左わきの階段を登れば本堂にたどり着く。茅葺の本堂は珍しく、杉本寺の古さを物語っている。従来茅葺は二十年ごとに吹き替えをされていたが、今では異常気象もあり、十年ごとに吹き替えが行われているとの事である。本堂右手に鐘楼堂、五輪塔、地蔵堂観音堂が奥へと配置されている。

 季節ごとの花も美しい。春は寒緋桜、桜、シャガ、五寸菖蒲、椿、ツツジ、藤。夏はイワタバコ、ホタルブクロ、紫陽花、大山蓮華、ねむの木、百日康。秋は酔芙蓉、水引草、彼岸花、紅葉、銀杏。冬は山茶花、千両、梅、蝋梅、水仙が咲く。

宗派:天台宗。山号寺号:大蔵山杉本寺。創建:天平六年(734)。開山:行基菩薩。開基:孔明皇后本尊:十一面観音

天平六年(734)聖武天皇の后である光明皇后の夢の中で「東国の治安を正し、財宝を寄付し、人々を救いなさい」と観音菩薩のお告げを受け、御願により、藤原房前(ふじわらのふささき)、行期菩薩によって建立された。光明皇后が御本尊は天平六年(734)、行儀菩薩御作(市文)。仁寿元年(851)、慈覚大師円仁御作(国重文)。寛和二年(985)恵心僧都源信(えしんそうずげんしん)御作の三体の十一面観音(国重文)である。著名な三僧がそれぞれ十一面観音を造像しているだけでも珍しく、驚くところである。

 「吾妻鏡」によると文治五年(1189)に火災が起こった際に御本尊三体が自ら邸内の大杉の下に火を避けられたので、その力に感心した人々が「杉の本の観音」と呼ぶようになったと伝えている。また、礼を欠き、心信無くして馬で寺の前を通り過ぎる者は落馬するので、下馬観音ともいわれた。建長寺開山大覚禅師が祈願し自らの袈裟で行儀菩薩が彫られた十一面観音願を覆ったところ落馬するものがいなくなったと言われ「覆面観音」ともいわれ通称の多い寺院である。本堂向かって正面には源頼朝公寄進の前立本尊十一面観音(運慶作)が安置されている。他に、運慶作の地蔵菩薩、宅間法眼作の毘沙門天王各木造がある。

 坂東三十三所観音霊場の第一番目の札所で、鎌倉三十三観音でも一番札所になっている。ここで、御朱印帳を求め、御朱印を受けることが流行しているようだ。年中行事として、四月八日:灌仏会(かんぶつえ)、花でお釈迦様の誕生を祝う。八月八日:四萬六千日大祭、この日にお参りすると四萬六千日分の高徳があると伝えられている。十二月三十一日:新年大護摩供:諸願成就塔願い事を期した護摩木を焚き願い事が叶えられるよう祈念される。

 十数年前に来たときは、まだ御朱印帳等流行していなかったと思う。巡礼者の方々が、薄暗い本堂で、数珠を手に合わせ、経を唱えられていた。一緒に拝ませていただいたことは自分にとって良い経験だったと思う。本堂脇から上る道があり、天気の良い日は富士山が見えた。今は、私有地の為通行禁止になっている。なぜか悲しい気持ちになった。