ペレットを2枚同時にSPSする方法を紹介します。中央にグラファイトの約5 mm厚のペレットを配し,上下に試料粉体を充填する方法です。5 mm厚のグラファイトペレットはエス・エス・アロイ株式会社が“均熱板”として販売しています。下の図の1,2とも粉体は上下にグラファイトで押される構造になっています。通常グラファイトと粉体との間にはカーボンペーパーを入れます。それぞれの粉体にとっては通常の1枚焼成の場合と同じ条件になっています。
次にこのような構造になる様に粉体をセットする方法を紹介します。
スペーサーを重ねその上にシリンダー(ダイ)を載せます(下はベークライトの台です)。手前に均熱板を載せたパンチを置きます。均熱板の中央がシリンダーの中央に一致する様にスペーサーの組み合わせを変えて調整します(この写真では熱電対用の穴が中央となっているので調整しやすいです。穴がない場合は鉛筆でシリンダーの中央位置に印をしておきましょう)。この調整とこの後の操作により,均熱板は最終的にも必ずシリンダーの中央位置になります。
上の写真で手前に置いてあったパンチと均熱板をシリンダーの中に入れ,カーボンペーパーを入れます。スペーサーはそのままです。
粉体を入れます。ここでは,先のブログで紹介した様に,薬包紙の漏斗を使っています。
デルリン棒で粉体を均します。このデルリン棒の話も先のブログで紹介しています。
カーボンペーパーを入れ上側パンチを差し込みます。
そして,仮プレスします。ここでは手動プレス機を使っていますが,先に紹介した木工用万力を用いてもかまいません。もちろん油圧プレス機でもかまいません。仮プレスは数MPa程度が良いでしょう。
逆さにします。
このとき,シリンダーと台との隙間は先ほどとは異なります。この隙間に合う様にいくつかのスペーサーを組み合わせます。仮プレスにより,粉体がシリンダーの壁を押しているのでパンチの位置はずれにくいのでやりやすいと思います。そしてパンチを引き抜き,カーボンペーパーを入れます。
こちら側にも粉体を充填します。
反対側と同様,デルリン棒で粉体を均します。
カーボンペーパーを入れパンチを差し込みます。
仮プレスします。反対側を仮プレスしたのと同じ圧力でプレスすれば上下対称にセットされます。
これをSPSすれば同質のSPS焼結体が得られます。下の写真はこのようにして焼結された2つの試料のうちの1つです(鏡面研磨が簡易的です。また撮影条件が適切ではなく,手前の紙面が映り込んでいます。SPSの文字が映り込んでいることがわかります)。このような試料を同時に2つ作ることで,一方を破壊検査にあて,もう一方を光学的評価や誘電的評価にあてることができるので理想的です。2枚はほぼ同条件での焼結体とみなすことができます。
次回,4枚以上を同時SPSする方法を掲載したいと思います。