ギャランティーソーク:放射温度計の不感域をスマートに処理 | 技術日誌

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ここでは,電子工作,木工などの趣味での記録を書いています。
なお当初はKMK研究所のメインテーマであるSPSのノウハウを書いてきましたが,順次SPSノウハウのページに複製を作っていきます。

 放射温度計では,600℃以下(私どもの所では578℃でした。以下,この温度を用いて説明します)は測れません。したがって,SPSでは,578℃になるまでは暗闇を歩くような温度コントロールとなります。放射温度計の出力は幸いにも,不感温度域では,この温度(に相当する電圧)を出力しています。もし,不感温度域で0℃を出力していたとすると,SV(セット値)はどんどん上がっていくので,SPS電流がとんでもなく大きくなり,装置が壊れてしまう恐れがあります。幸いなことに,不感温度域では,578℃(に相当する電圧)を出力しています。したがって,一定時間SV値を600℃にしておくと,温調器は,「現在578℃で,設定温度は600℃なので,少しだけSPS電流を流しておく」と判断します。この“少しだけ”の電流がほぼ100℃/minの温度上昇をもたらします(あるサイズのダイに対する私の経験では,570℃から5分かけ600℃に上げるようにプログラムするとほぼ100℃/minになりました)。
 さて,ここで多くのSPSユーザーが悩まされている問題があります。それは,上のような設定(600℃まで5分)で,5分経過しても600℃に達しなかった場合です。5分経過すると,温調器は次のステップに移り,100℃/min(これは,実験により異なりますが,標準的な値を例にして話をしています)でSV値がどんどんと上昇して行ってしまいます。しかし,放射温度計の出力は570℃のままですから,温調器は大きな出力を出してしまいます(下図,赤矢印)。それにより急激にダイの温度が上がります。放射温度計は有感温度域に入り,温調器は慌てて出力を下げます。それも下げすぎで,結果として下の図のように実際の温度が急激に上下振動をします。

 この対策は,温調器のギャランティーソークの機能を利用することです。ギャランティーソークは,実際の温度(PV)と設定温度(SV)との差が許容範囲以下になるまで,次のステップに進むのを待つ機能です。たとえばステップ1の最終温度を600℃に設定してあり,許容値を2℃としておくと,PVが598℃になるまで次のステップになるのを待ちます。そうすればそこから100℃/minで昇温が始まっても実際の昇温が間に合うわけです。

 その設定法を説明します。MODE 2で昇温プログラムの設定が終わった後,SELボタンを押していくとGUARAN SOAKと表示されるところがあります。そして,たとえばSTEP 1からSTEP 2に移る際にPVとSVの差が許容範囲以下になるのを待つには,STEPの番号を01にし,許容値の番号を指定します。ここではNo.7を指定しています。許容値の設定はMODE 6で行います。MODE 6でSELボタンを押してGUARANTY SOAKの表示されるところにします。そして,No.を選びます。上で7を指定していますので,ここでは,No.7の値を設定します。ここで0002となっているのは,許容値が2℃ということです。