森永卓郎さんの本を購入したので紹介します。

 

「ザイム真理教」

  森永卓郎(もりなが・たくろう)著。2023年6月1日発行。発行所:(株)三五館(さんごかん)シンシャ。発売:フォレスト出版。1,400円+税。

  先ずは、「ザイム真理教」について。東京新聞Web 2023年7月16日、<書評=中野剛志氏>から。

  「”ザイム真理”という表現は、著者の森永卓郎氏はネット・スラングだとしているが、私の知る限り、最初にこの言葉を使ったのは、西田昌司・参議院議員である。西田議員は、国会において、経済学者顔負けの理論や知識によって、日本の財政破綻はあり得ないと論じ、積極財政を説いている。だが、マスメディアは、西田議員の主張に一切耳を貸さず、積極財政を”バラマキ”と呼んで嘲笑い、財務省に言われるがまま、緊縮財政や増税を唱えるばかりだ。そこで西田議員は、ネット動画を通じて直接国民に発信するようになり、均衡財政主義をカルトの様に妄信する風潮を”ザイム真理教”と呼んだ。それがネットで人気を博し、流行したのだ。」

 

  次に、本の紹介について。

  「まえがき」から。

  「国全体の財政、特に自国通貨を持つ国の財政にとって、財政均衡主義は誤っているどころか、大きな弊害をもたらす政策だ。・・・財政均衡主義は、長期的にも間違っているということだ。じつは財政の穴埋めのために発行した国債を日銀が買ったときには、その時点で事実上政府の借金は消えるのだ。 まず、元本に関しては、10年ごとに日銀に借り換えてもらい、永久に所有し続けてもらう。そうすれば、政府は返済の必要がなくなる。政府は日銀に国債の利払いをしなければならないが、政府が日銀に支払った利息はごくわずかの日銀の経費を差し引いて、全額国庫納付金として戻ってくるから、実質的な利子負担はない。」(p4、p5)

 

  どういうことか?

  最初に、財務省のHPから。

  「(国債は)2023年度末には 1,068兆円に上ると見込まれています。・・・日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中で最も高い水準にあります。」(国民1人あたりの借金は1,000万円を超えるという言い方が、マスコミを通じて流されました。)「借金返済の負担が先送りになっています。」

  これには私も、国の借金がこれ以上増やすことはできない。ツケを子供・孫の世代に負わせることはできない、と思っていました。MMT(Modern Monetary Theory)=経済学の現代貨幣理論(現代金融理論)がおかしいと思っていました。日本経済は破綻すると思っていました。

  これが、「ZAI ON LINE」2022年8月1日付けの太田忠さんの論文を読んで納得しました。私も「ザイム真理教」の信者の一人だったのです。

  「この財務省から発表される”国の借金”はプロパガンダ的な要素が強く、事実の一部分だけを取り出して極端な偏向報道がなされている。”日本は財政破綻するかも・・・””将来のツケがますます巨額に・・・”という印象を読み手に与え、洗脳しているかのようだ。」

  「まず大前提として”国の借金”は”国民の借金”ではない。”国の借金”とは、正しくは”日本政府の借金”である。」

  「国の借金と呼ばれる政府債務は大変でもなんでもなく、日本の財政破綻の可能性もゼロである。なぜなら、政府には貨幣発行という能力があるからだ。日本政府の借金は主に銀行など金融機関から日本円を借りている形となっているが、政府・日銀には日本円の通貨発行権があるため、借金を期限に必ず返済することができる。政府の債務はほぼすべて円建てのため、債務不履行に陥ることはない。海外で起こるデフォルトの話は、デフォルトした国が別の国に対して自国以外の通貨で支払いができない場合である。」

  これも一定の制限があります。「(国債発行のプロセスの中で)実質的には何もないところから貨幣が生み出されるという信用創造がなされている。もちろん無限には行えない。その上限は需要と供給のバランスで決まる。すなわち今話題のインフレ率の値が具体的な目安となる。インフレは信用創造の点でも重要な指標である。」

 

  森永卓郎さんも、同じ事を言っています。

  「財政も同じで、自国通貨を持っている国は、財政均衡に縛られずに、より柔軟な財政政策をとることができる。財政赤字は、ある程度拡大させ続けて大丈夫なのだ。」(p27)

 

  森永さんは、日本経済停滞の最大の理由は「急激な増税と社会保険料アップで手取り収入が減ってまったから」と述べています。(p135)

  「私は、賃金が上がらない大きな理由は、消費税率の引き上げであることは実質賃金をみれば明らかだと思います。1997年に税率を 3%から 5%に引き上げ、そのあとも2回引き上げた結果、すべてそれが実質賃金に反映されているというわけです。消費税率を上げて、実質賃金が減るので企業の売り上げも減るか伸びなくなって、結局賃上げできないという悪循環をずっと続けてきたというのがこの四半世紀の日本です。」(p100)

  「1995年には世界の 18%を占めていた日本のGDP(国内総生産・Gross Domestic Product)が、いまや 6%を切る始末だ。先進主要国のなかで最高に近かった日本の賃金は、いまや主要国中最下位になっている。・・・財務省の掲げる緊縮財政の恐ろしさを、政治家が誰一人理解していないから、こんなことが起きるのだ。残念ながら、日本は世界最初の”衰退途上国”になっていく。」(p119)

 

  著者は、「ザイム真理教の脅し」の中でこう述べています。

  「ザイム真理教は、財政破綻をすれば、ハイパーインフレや国債や為替の暴落が起きるぞと脅したうえで、必要のない増税を繰り返して、国民生活を破壊してしまうのだ。・・・2010年度の国民(税)負担率は、37.2%だった。それがどんどん上がっていって、2022年度には 47.5%と、ほぼ5割に達している。働いても半分が税金と社会保険料でもっていかれる計算だ。」(p122)

  これでは増税を許すことにはならない。むしろ、消費税率を引き下げるべきだ。

 

  ここで、政府の財政状況がどうなっているかを見てみましょう。財務省が公表する2020年度末「連結貸借対照表」(BS=バランスシート)によれば・・・。

  「日本政府は、負債(国債・借入金等)も多いが、その借金の3分の2ほどは資産としてキープしているのだ。負債の1,661兆円から保有資産の1,121兆円を差し引くと、資産負債差額は540兆円となる。これが本当の日本政府が抱える借金なのだ。」(p58) 流動資産の中には「政府が持つ有価証券の中で最大のものは、米国債だ。」 固定資産も、道路も庁舎も(1等地にあるから)売れるのだ。」(p59)

 

  「あとがき」の中で、著者はこう述べています。

  「今の政府の戦略は”死ぬまで働いて、税金と社会保険料を払い続けろ。働けなくなったら死んでしまえ”というものだ。この政策から逃れる方法は一つしかない。それは、高い生活費をまかなうために、必死で働いて増税地獄のなかに身を置く都市生活を捨て、田舎に逃避し、そこで自給自足に近い生活を送ることだ。」(p188)

  森永卓郎さんも、本拠地を埼玉県所沢市の「トカイナカ」に移し、家の近所の農地を借りて、野菜を中心とした「自産自消」を一人社会実験として続けてきた、と述べています。その結論は、月額十数万円もあれば、十分暮らしていけるということだそうです。

  漫画でも出版される予定(2月末)です。